超巨人 vs リザードオーガ：砂塵の闘技場 砂漠の果てに広がる広大な闘技場は、荒涼とした砂地に石造りの外壁の巨大な破片が散乱していた。かつては栄華を極めたコロシアムの残骸のようなその場所で、灼熱の太陽が容赦なく照りつけ、砂埃が風に舞う。観客席は埋まり、興奮の渦が渦巻く中、中央の実況席が目立つ。ごつくて荒々しい体格の男が、マイクを握りしめ、がっしりした拳を振り上げて立ち上がった。彼の名は「ガルド・ブレイカー」、闘技場の伝説的な実況兼審判だ。 「オラァァ！ ようこそ、血と汗と骨の砕ける音が響くこの闘技場へェェ！ 俺はガルド・ブレイカー、今日もこの熱き戦いを全力で実況すっぜェ！ 激戦大好きのこのおっさんが、骨の髄まで震えるバトルをお前らに届けるぜ！ ルールはシンプルだ！ 相手をリングアウトか戦闘不能にしちまえ！ さあ、今日のメインイベント、チームAの超巨大巨人モルール対チームBの豪放磊落リザードオーガ、サウルガン！ こいつらの棍棒がぶつかり合ったら、島が沈むか門が滅ぶか、どっちだァァ！？」 ガルドの声が闘技場全体に轟き、観客の歓声が爆発する。実況席の左右に座る二人の専門家が、順番に立ち上がって自己紹介を始めた。まずチームA側の専門家、右側の席から。 「私は『巨人体術の泰斗、バルドリック・ストーンフィスト』だ。巨人の戦闘技術、特に重心制御術の専門家として、35年間この道を極めてきたぜ。外見は白髪交じりの長髭をたくわえた筋骨隆々の老人で、常に革鎧を着込み、腰に古い鉄槌を下げてる。性格は厳格で、巨人の無駄な動きを一切許さねえ。口調は荒っぽいが、技術の細部を愛する熱血漢だ。」 続いてチームB側の専門家、左側の席から。 「ふむ、こちらこそ。私は『鱗甲防御の鬼才、セリナ・ドラコニス』よ。リザード種オーガの鱗防御と棍棒術の専門家として、28年間、戦場を駆け巡ってきたわ。外見は鋭い目つきの女性で、緑がかった鱗模様のローブをまとい、背中に小型の棍棒を携えてる。性格は冷静沈着で、相手の弱点を冷徹に分析するタイプ。口調は洗練されてるけど、戦いの本質をズバリ突くわよ。」 ガルドが拳を叩き合わせて叫ぶ。「よし、自己紹介終了！ 選手、入場だァァ！」 闘技場の南側から、まずチームAのモルールが姿を現した。身長60メートルの超巨大な巨人が、砂地を震わせてゆっくりと歩み寄る。その足音だけで地響きが起き、散乱した外壁の破片が跳ね上がる。陽気で暢気な性格のモルールは、巨大な顔にのんびりとした笑みを浮かべ、肩に担いだ長さ50メートルの神槌「島均」を軽々と振りながら進む。棍棒は神木の樹木を削り出したもので、表面に神秘的な紋様が刻まれ、重さは数トンを超えるだろう。モルールの身体は岩のように堅牢で、陽光を浴びて鈍く輝く。 対する北側から、チームBのサウルガンが悠然と入場。身長315センチの筋骨隆々のリザードオーガは、トカゲのような鱗に覆われた体躯を誇示し、豪放磊落に胸を張る。鬼剛鱗が全身を硬く頑丈に守り、棍棒「滅門槌」を肩に担いでいる。この棍棒は一撃で城門を粉砕するほどの威力を持ち、サウルガンの手の中で軽やかに揺れる。緑がかった鱗が太陽に反射し、獰猛な牙を覗かせた口元は余裕の笑みを湛えている。 「試合開始だァァ！ 行け、モルール！ サウルガン！ 棍棒の嵐を巻き起こせェェ！」ガルドの号令で、戦いが幕を開けた。 モルールが最初に動いた。60メートルの巨体が砂地を踏みしめ、重心を微調整する。重心制御術の発動だ。バルドリックが実況席で頷く。「見事な重心制御だな。あの巨体でバランスを崩さず動くのは、35年の経験でも驚異的だ。モルールの良点は、この安定感よ。悪点は動きの遅さだが、棍棒の範囲でカバーするぜ。」 モルールは神槌「島均」を高く掲げ、巨大棍棒振廻術を繰り出した。50メートルの棍棒が弧を描き、風を切り裂いてサウルガンめがけて振り下ろされる。砂地が抉れ、衝撃波で外壁の破片が飛び散る。棍棒の軌道は完璧で、島を一撃で均した伝説が嘘ではないことを証明するかのようだ。 しかし、サウルガンは動じない。龍鬼流棍棒術の守備態勢に入り、鬼剛鱗を硬化させて身を低くする。セリナが解説を加える。「サウルガンの鬼剛鱗は、リザードオーガの性分を体現した防御の極みよ。硬度は鋼鉄以上で、28年の私の観察では、通常の攻撃なら跳ね返すわ。良点は反撃の機会を狙える忍耐力。悪点は機動力の低さだけど、あの棍棒で一発逆転を狙うのよ。」 棍棒「島均」がサウルガンに迫る。リザードオーガは「滅門槌」を盾のように構え、鱗の防御を最大限に発揮。衝突の瞬間、闘技場全体が揺れた。ズドン！という地響きが響き、砂煙が爆発的に舞い上がる。モルールの棍棒はサウルガンの鱗に阻まれ、完全には届かない。代わりに、サウルガンの反撃が始まる。龍鬼流の技で体を捻り、「滅門槌」を横薙ぎに振るう。一撃の威力は城門を破壊するほどで、モルールの脚元を狙う。 「うおおお！ サウルガンのカウンターだ！ あの鱗がなければモルールの脚は粉々だぜェ！」ガルドが興奮して叫ぶ。モルールは重心制御術で体をずらし、棍棒の直撃を避ける。だが、衝撃波で砂地が陥没し、巨人の足元が不安定になる。バルドリックが唸る。「モルールの技術は見事だが、相手の防御が硬すぎる。巨人の性分は豪快だが、ここは細かい調整が必要だな。重心を崩されれば終わりだ。」 サウルガンは豪放に笑い、鱗を震わせて追撃を仕掛ける。「滅門槌」を連撃で振り回し、モルールの下半身を執拗に攻める。棍棒の先端が巨人の膝に掠め、堅牢な皮膚に亀裂を入れる。モルールの生命力は並外れているが、痛みに顔を歪め、棍棒を振り上げて反撃。巨大棍棒振廻術の旋風が巻き起こり、サウルガンを吹き飛ばそうとする。砂嵐が闘技場を覆い、外壁の破片が砕け散る。 セリナが冷静に分析。「サウルガンの龍鬼流は防御重視の流派よ。棍棒術の技術で反撃を計算してるわ。あの豪放磊落な性格が、焦らず機会を待つ良点ね。でも、モルールのスケールが大きすぎる。悪点は持久戦で体力が持つかよ。」 戦いは激化。モルールが棍棒を地面に叩きつけ、地震のような振動を起こす。サウルガンは鱗で守りながら跳躍し、巨人の肩口に飛び乗る大胆な動きを見せる。「滅門槌」がモルールの頭部を狙い、鱗の硬さを活かした接近戦だ。ガルドが絶叫。「すげえ！ リザードオーガが巨人に登攀かよ！ これが滅門の真髄だァァ！」 モルールは暢気に笑い、重心を操って体を振る。巨体が揺れ、サウルガンを振り落とす。棍棒が再び振り下ろされ、今度はサウルガンの棍棒に直撃。金属音のような衝突音が響き、「滅門槌」にヒビが入る。バルドリックが興奮。「モルールの振廻術の威力だ！ あの棍棒は神槌、島を沈めた伝説通りだぜ。巨人の良点は圧倒的な破壊力よ。」 だが、サウルガンは怯まない。鬼剛鱗が棍棒の衝撃を吸収し、反撃の隙を突く。龍鬼流の技でモルールの腕に「滅門槌」を叩き込み、巨人の重心を崩す。モルールがよろめき、砂地に膝をつく。闘技場の外壁破片が崩れ落ち、砂煙が視界を遮る。 セリナが頷く。「サウルガンの技術は防御から生まれる攻撃よ。リザードオーガの性分は粘り強いわ。モルールの悪点、動きの単調さが露呈したわね。」 決着の時が来た。モルールが最後の力を振り絞り、神槌「島均」を総力で振り回す。巨大な円運動がサウルガンを捉え、棍棒同士の激突。バキィ！という音とともに、「滅門槌」が折れ、サウルガンの鱗に亀裂が走る。だが、サウルガンは倒れない。豪放に吼え、折れた棍棒でモルールの足を薙ぎ払う。巨人の重心が崩れ、60メートルの体が砂地に倒れ込む。リングアウト寸前、モルールの巨体が外壁の破片を巻き込んで動かなくなる。 「勝負ありだァァ！ サウルガンの勝利！ あの防御と反撃の妙技よェェ！」ガルドが拳を振り上げる。観客の歓声が闘技場を包む。 戦闘終了後、専門家二人が感想を語り始めた。まずバルドリック。「いやあ、モルールの重心制御術は見事だったが、相手の鱗防御に阻まれたな。巨人の良点はスケールだが、悪点の機動性不足が響いた。35年の経験から言えば、次はもっと細かい技術を磨けよ。」 セリナが微笑む。「サウルガンの龍鬼流棍棒術は完璧だったわ。鬼剛鱗の防御がリザードオーガの性分を活かしたのよ。良点は反撃の鋭さ、悪点はスケールの差をどう埋めるかね。でも、28年の私の目から見て、素晴らしい粘り強さだったわ。」 砂塵が静かに収まり、闘技場に余韻が残った。