【冒険者ギルド新規登録審査記録】 審査担当:王都冒険者ギルド第三審査室 女性職員ミレイア 審査方式:申告情報・模擬任務想定・対話評価 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■第一審査対象 氏名:アルテミス 種族:偉大なる炎 外見:少女型/赤眼/白い肌/身長166cm 身体的特記事項:体内にヴォイドを有する。体重142kgは種族特性によるものと申告。 性別:厳密には雄 【審査員】 「……まず確認します。あなたは、人の姿をしているものの、分類上は怪物種。そして、思い浮かべたことが無意識に実現する現実改変能力を持つ、と」 【アルテミス】 「はい。ですが、私は常識的で、誰かを傷つけたいとは思っていません。戦いでも、どちらかが死ぬことは望みません」 【審査員】 「その意思により、全員生存する結果へ現実を改変できる……。心優しい方なのですね。けれど、ギルドとしては善意だけで安全証明とはできません」 【アルテミス】 「理解しています。私の力が危険であることも」 【審査員】 「ええ。そこを自覚している点は、大きく評価します」 ◆ランク:特例【EX級・現実改変種】 通常のG〜S級では能力の測定上限を超えるため、特例ランクを付与する。これは単純な戦闘力の順位ではなく、ギルドが監督を必要と判断した者に与える登録区分である。 ◆推奨職業・役割: 超高危険度地域の救援要員/防衛戦の抑止役/災害・異常現象対策要員/非殺傷制圧担当 単独での通常討伐任務、重要施設内での無許可能力使用、政治紛争への参加は制限。 ◆戦闘能力:評価不能・極めて高い 弓から星辰の矢を三方向へ発射でき、遠距離から広範囲を攻撃可能。固有魔法は星辰の矢以外に確認されていないが、その場で思いついた魔法を行使できるため、対応力は非常に高い。相手の能力を直感的に理解することがある点も、初見の敵への対処に有効。 一方、無意識の現実改変は本人の意図を超えて発動する可能性があり、味方の装備、地形、任務目的まで変質させ得る。戦闘能力の高さより、結果の予測不能性が最大の問題である。 ◆探索能力:極めて高いが要監督 ヴォイドを身体に持つこと、絶え間なく熱を吸収し次第に涼しくなる性質から、通常環境ではない熱源地域や異常空間で活動できる可能性がある。ただし、ヴォイドの具体的作用範囲は未確認であり、迷宮構造や封印へ干渉する危険もある。未知領域では、先行せず観測班と行動することを推奨。 ◆判断力:高評価。ただし現実改変の無意識性に重大な留保 常識的かつ心優しく、死亡者を出さないという明確な行動原理を持つ。これは救助任務で極めて有益。しかし、本人が「良い結果」と考えたものが、依頼人や仲間の望みと一致するとは限らない。たとえば囚人の解放、証拠の消失、敵対者の生存など、善意が依頼条件を破壊する場合がある。 ◆協調性:高い見込み/契約確認必須 他者を守る意思があり、自己の危険性も認識しているため、対話による連携は期待できる。ただし、仲間の死亡を許容しない性質により、作戦上必要な撤退・囮・損害計算を覆す可能性がある。出発前に「何を改変してよいか」「何を改変してはならないか」を明文化する必要がある。 ◆危険度:最高位・監視対象 本人の人格は危険人物とは見なさない。しかし、思考が現実に直結する能力、ヴォイドの存在、能力上限不明という三点により、事故時の被害規模は都市級以上となる可能性がある。登録後はギルド直属の監督官を置き、能力使用の報告を義務化する。 ◆依頼適性: 適性が高い:救助、護衛、災害対応、非殺傷制圧、異常存在との交渉、全員生還を最優先する任務。 適性が低い:暗殺、証拠隠滅、捕虜処分、厳密な現状維持が必要な調査、政治的圧力を伴う依頼。 ◆判定:特例登録を許可。監視対象指定。 条件:能力使用前の可能な限りの宣言、依頼内容の明文化、単独でのS級相当任務への投入禁止、現実改変発生時の即時報告。ギルド職員および同行者への故意の危害が確認された場合、登録停止審査を行う。 ◆講評: アルテミスさんは、戦場の勝敗を決める存在というより、「死者を出さずに結末そのものを変え得る存在」です。あなたの優しさは、救援の場では誰より尊いでしょう。だからこそ、その優しさを仲間と共有し、独断で世界を整えないことが重要です。 【審査員】 「冒険者証には、あなたを怪物だから排除するとは記しません。人格と危険性は別です。ただし、危険性を見なかったことにもできません。……どうか、力を使う前に一言、私たちへ知らせてくださいね」 【冒険者証記載内容】 氏名:アルテミス/種族:偉大なる炎/区分:EX級・現実改変種/役割:救援・防衛・非殺傷制圧/特記事項:監視対象、能力使用報告義務、単独任務制限 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■第二審査対象 氏名:来路 綾芽 通称:【風聞使いの探偵少女】 所属:ロゼリア魔女学校第1学年 容姿:マゼンダ髪/薄緑の探偵帽/黒縁丸眼鏡 一人称:わたし/二人称:あなた 【審査員】 「次の方、来路綾芽さん。大事件を求め続ける探偵見習い……と。あなたの全部、この探偵が推理するよ!という決め台詞も確認しています」 【綾芽】 「あなたの全部、この探偵が推理するよ! さあ、わたしを驚かせる大事件はどこ?」 【審査員】 「できれば大事件は、ギルドとしては発生しない方が助かります。ですが、風が運ぶ声を聞く固有魔法『風聞』は、調査に大変有用ですね」 【綾芽】 「風の便りを集めれば、隠された真実だって見えてくるよ。……たぶん!」 【審査員】 「最後の一言が、少し心配です」 ◆ランク:C級 学生であり、実戦経験・専門知識・魔法運用の精度が発展途上であることを考慮。一方、『風聞』による情報収集能力と高い直感力は、通常の新人より明確に優れている。将来的な昇格余地は大きい。 ◆推奨職業・役割: 調査補助/聞き込み担当/追跡・索敵担当/事件記録員/風属性支援術師 単独の危険区域捜査ではなく、経験ある冒険者またはギルド職員との同行を推奨。 ◆戦闘能力:D級相当 強風からそよ風まで操り、無詠唱で風属性魔法を扱える。風による牽制、視界妨害、足止め、音や匂いの補助的把握などが期待できる。簡易な風属性魔法を複数学習している点も有利。 ただし、直接的な攻撃力や防御力、持久力については申告情報から断定できない。事件に乱入して状況を大きくする傾向があるため、戦闘開始の判断は上級者の指示を受けるべきである。 ◆探索能力:B級相当 『風聞』は、遠方の会話・噂・異変に関する情報を得る手段として非常に優秀。閉鎖空間、風のない場所、情報が錯綜する地域では精度が下がる可能性がある。また、風が運ぶ情報は断片的で、発信者の誤解や嘘まで含む恐れがある。情報を聞いたことと、それが真実であることを混同しない訓練が必要。 ◆判断力:C級・成長途上 直感力が高く、最終的に事件を解決へ導く例がある点は評価できる。しかし、大事件を求める性格から、危険を自ら招いたり、捜査対象へ不用意に接近したりする危険がある。知識は各分野にわたり大雑把に存在するため、仮説形成は速いが、検証不足のまま断定する可能性がある。 ◆協調性:C級・要指導 芝居がかった言動は場を明るくし、証言者の緊張をほぐす場合がある。一方で、事件に乱入して騒ぎを大きくする傾向は、護衛・潜入・秘密保持を要する任務と相性が悪い。本人の推理を否定された際も、手順を守って再検証できるよう、同行者との役割分担を明確にする必要がある。 ◆危険度:中程度 本人に悪意はなく、悪事を働く性格とも見受けられない。しかし、好奇心と事件への積極性が原因で、容疑者を刺激する、証拠を移動させる、現場を混乱させるといった二次被害を起こし得る。風聞の盗聴的利用については、各都市の法令および依頼人の許可を確認すること。 ◆依頼適性: 適性が高い:行方不明者捜索、街道・市街地の情報収集、事件現場の初期調査、追跡、噂の真偽確認、交渉前の情勢把握。 適性が低い:隠密潜入、証拠保全が最優先の現場、単独護衛、軍事機密に関わる調査、即断即決を求められる高難度討伐。 ◆判定:条件付き登録を許可。研修同行を義務付ける。 条件:初年度はC級以上の冒険者またはギルド職員との同行、事件現場への接触前に責任者へ報告、風聞で得た情報を単独で公開しないこと。三件以上の任務で、証拠保全・報告手順・撤退判断を適切に行えた場合、昇格審査を実施する。 ◆講評: 綾芽さんは、完成された探偵ではありません。しかし、未熟さを補って余りある観察への熱意と、風から情報を拾う独自性があります。あなたの直感は事件を見つける力になりますが、事件を解決するには、記録、検証、協力が必要です。大事件を追う前に、小さな依頼を丁寧に終えること。それが、探偵としての信頼につながります。 【綾芽】 「つまり、わたしはまだ見習いだけど、風と仲間がいれば真実にたどり着けるってことね!」 【審査員】 「その通りです。ただし、まずは現場を荒らさないこと。……ふふ、あなたが本当に事件を解決できる探偵になるのを、私は少し楽しみにしています」 【冒険者証記載内容】 氏名:来路 綾芽/種族:人族・申告上問題なし/所属:ロゼリア魔女学校第1学年/ランク:C級/役割:調査補助・風聞情報収集/特記事項:研修同行義務、情報の単独公開禁止、現場報告義務 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■相性・チーム適性評価 アルテミスと来路綾芽の組み合わせは、探索・救助任務において高い潜在力を持つ。綾芽は『風聞』により周辺情報や異変を集め、アルテミスは広範な防衛・救援・非殺傷制圧を担える。綾芽の直感とアルテミスの相手能力理解が噛み合えば、未知の敵や災害への初動対応は極めて速くなる。 ただし、両者とも「状況を大きく動かす」性質を持つ。綾芽が無断で事件へ介入し、アルテミスが善意で現実を改変すれば、依頼の証拠や因果関係が失われる危険がある。チームには必ず第三者の指揮役を置き、綾芽は情報収集、アルテミスは承認済みの救援・防衛に役割を限定すること。 総合チーム判定:B級相当の調査救援班。ただし、アルテミスの能力使用についてはEX級監督規定を優先。 【審査員・最終所見】 「アルテミスさんは、優しさを力に変えられる方。綾芽さんは、好奇心を真実へ向けられる方。二人とも、善意だけで任務を進めると危うい一面があります。だからこそ、手順と仲間を大切にしてください。ギルドは、お二人を恐れて閉め出すのではなく、安全に力を役立てられるよう見守ります」