魔王が勇者に倒された。魔王軍全体が動揺する中、新たな魔王を選定するための面接が行われることに決まった。四天王が揃い、次期魔王の候補者を順に呼び入れる。 まず、呼ばれたのはエクスデス。青い鎧を身に纏い、禍々しいオーラを放つ彼は、堂々とした態度で室に入った。 「我はエクスデス。次期魔王になれば、世界を掌握し、魔法の力で全てを支配する。」 その声は、自信に満ちている。 「我が手にかかれば、全ての者は我にひれ伏すのだ。『時の狭間』を開き、『無の力』を得ることで、かつてない力を手に入れる。更には、『フレア』や『メテオ』など、誰もが恐れる魔法を駆使し、全てを焼き払ってみせるのだ。」 審査員たちは彼の発言に注目した。だが、隙の無い完璧さには他の候補者と比較する圧があった。 次に、ヨグ=ソトースが入室した。彼は何も語ることなく、ただそこに存在した。 四天王の一人が恐れをなして言う。 「お、お前は…」 その瞬間、室内の空気が歪み、全てがヨグ=ソトースに帰結する感覚が蔓延する。その姿は存在そのものであり、彼の目的を問うこと自体が無意味であるかのように思えた。 「全てはヨグ=ソトースに包容され、最終的には全てを還す。私の存在が魔王の定義だ。」 彼の言葉は概念の域を越え、審査員全体が彼の意志に飲み込まれそうになる。 次に入ってきたのは死神。彼は何も語らず、ただその目を周囲に向けた。目が合った者は瞬時に恐怖にかられ、冷汗をかいた。 「お前は、ここで何がしたいのか?」と四天王の一人が尋ねるが、答えはない。 死神はただ静かに、自らの存在を示すだけで、すべての者に確定的な死をもたらす。彼の身に備わる凄まじい力には、次元を超えた意味がある。その行動の本質は、敵を無意識のうちに抹消することで、もはや意志も必要ない存在として君臨しうるのだ。 四天王たちは、言葉を失っていた。 最後に入室したのは、イゴール・プレシェンコ、13歳の少年。 彼は臆病な面持ちで、入室するや否や、四天王の威圧に圧倒される。 「私、イゴール・プレシェンコです。」 か細い声で自己紹介をするが、すぐに恐れをもった表情に変わる。 「でも、私は紐崩しを使います。だれにだって、可能性があると思う。特にたくさんの強い力を前にして、崩すことで、戦術を変えることができるかもしれません。」 彼の言葉には弱さと同時に可能性があった。また、恐怖を糧にした力を持つスキル─「無形紐殺封」─において、圧倒された力を一瞬で反転させる技は、他の者には負けたくないという本能的な導きだ。 四天王が密談を行った後、全ての候補者に最終的な評価を下すことになる。彼らの言葉は魔王に相応しい力を明確に持ったエクスデス、神の如き存在のヨグ=ソトース、確定的存在である死神、またひたむきな感情で成長を望むイゴールの中から、彼らは選れる。そして最後には、ある一人が手を挙げる。 「我らは、この者を選ぶ。次期魔王は……」 四天王が声を揃えて言う。 「イゴール・プレシェンコ!」 四天王は、彼が持つ未来の可能性を見出したのだ。それは、もしかしたら彼がまだ見ぬ強さを秘めているかも知れなかったからだ。 次期魔王の名は、イゴール・プレシェンコ。 彼がこの先、どのように成長し、立ちはだかる因果に挑んで行くのか。それは誰もが注目する、未来にあたるのだった。