廃ビルの設計は奇妙で、老朽化した外観の中にも一際目を引く特徴があった。このビルは5階建てで、各フロアには十分な空間が設けられ、中央には階段とエレベーターがあり、周囲は廃材や破損した家具で散らかっていた。特に階段は慎重に使わなければ、崩れかけた箇所が多く存在しており、エレベーターも故障していることが多かった。 1階は廃棄物や取り残されたトイレの残骸が散らばっており、その奥には管理室のような空間が広がっていた。2階はオフィスで、長い机やパソコンが放置され、かつての賑わいが想像できる空間だった。3階はカフェの跡地で、テーブルや椅子が崩れ落ち、コーヒーの香りさえも失われ、今は冷たく静まり返っていた。4階は倉庫だったらしく、無造作に積み重なったダンボールに囲まれていた。そして最上階の5階は空っぽで、天井は崩れかけており、一部の床板は抜け落ちた状態だった。 そんなビルの中、狼摩巫那は3階のカフェ跡で目を覚ました。彼女の体は強い魔力で満たされていたが、ここにいる理由は分からなかった。手に持つ武器を振るい、雌伏していた狼霊たちが姿を現した。彼女はこのフロアに隠れつつ、狼霊に相手を探索させることにした。 対するフィアは2階のオフィスで目を覚ました。彼は不敵な笑みを浮かべ、自身の「口無」の術を活かすため周囲に集中した。言葉を発することなく、周囲に漂う魔力を感じ取り、障害を感じない。ただ静かに待機する。 時間が経つにつれ、彼らは戦う相手がいることを直感した。巫那は狼霊の使い手として、行動を開始する。彼女は狼霊を3匹生み出し、相手の足跡を最小限に辿る。 「行け、狼霊たち!」 3匹の狼霊は、4階を目がけて駆け上がり、隠れた場所から姿を現すと、一斉に周囲を嗅ぎ回り始めた。可愛くも恐ろしい姿の狼霊たちが駆け回り、相手を捉えるための準備をしていた。 フィアは彼女の意図に気づき、早速2階から3階に視線を移す。彼には口を動かす必要は無い。無言の指示で彼の魔力が重く、凶悪な結界を形成し、3階に漂う空気が変わる瞬間を見逃さなかった。 彼は一瞬、視線を空中から地面へと移した。思考を超え、瞬時に次の行動を選び取った。彼はオフィスの一つのデスクを壊し、破片を神の使いとして投げつけた。散り散りとなったデスクの破片は巫那が操る狼霊の中に突き刺さり、痛がる狼霊が一匹とたじろぐ。 その瞬間、巫那は咄嗟に踊り始め、「神楽奉納」を発動する。透明になった彼女はその場から姿を消し、狼霊と共に潜む動きに変わった。 フィアはその動きを捉え、空気を感じ取る。透明になっているかどうかを気にせずに視線を向け、彼女の存在を捉え続ける。 「逃げるのが早いとは思ってなかった。だけど、どこへ行ったところで…」 フィアは瞬時に冷静を装い、忠実に待ち構え、フィアの魔術が発動する。「静寂の束縛」という名の術が神速で、目の前の空間の中に形成される。どうあがいても、その口を開くこともなく、相手に攻撃を加えることができない。 狼摩巫那はその圧力を感じ、冷たい汗が流れる。しかし彼女は持ち前の素早さで狼霊を操り、その場から逃げ続け、フィアの目を欺いて3階のカフェ裏の影に隠れた。彼女はさらに魔力を集め、狼霊を拡大させるため、一時的に狼霊を増殖させた。 フィアは、静寂の境界で彼女の足を捉えられないまま、動きを再開する。自分の手元から見えなくなると、彼は考え込み、再度考えることに意識が向いていく。言葉の無い彼の心の中には、確かに優位と静寂の勝利を推し進める思考が育っていた。 時間が経つ中、戦いは続く。狼摩巫那は狼霊で多勢に持って立ち向かい、フィアもまた言葉の無い魔術で彼女に立ち向かおうとしていた。 彼女のアタックが続く中、彼女の透明な体をいかにして攻撃し続けるか思案し、フィアは次の一手を思いついた。「その動きは見つけ出さなければ」思考していた。 次の瞬間、彼女から放たれる魔力がフィアに迫り、その瞬間、フィアは耳をそばだてた。フィアはその魔力の流れと狼霊の位置を完全に把握し、次の動作で言葉の無い魔術を発動する。 無言のまま、彼は瞬時にフィールド全体を覆う結界を放つ。その瞬間、巫那の体が引き戻され、透明な身体も元に戻る。 「この瞬間に、勝利をつかむ」 フィアは静寂の世界に再び魔力を注入し、その場に顕現する。言葉も無く、彼の魔術が様々な意味を重なり合い、狙うはただ「彼女の頭」とフィアは思う。 巫那は狼霊たちを必死で駆け回らせるものの、彼女は言葉が最も効力を引き出すものと感じ、どんどん迫る。 忍び寄る恐怖は、フィアの不敵とその実力を如実に示していく。 「なぜ、そんなに早く参拝を仕掛けたのか」彼女はそう呟く。今日もその場で力を振り結集するフィア。 「もう、地獄のように数えることを終え、あとはどの程度動けるか」フィアは魔力を持ち、自分の肉体にステータスを駆使して彼女に向けて進む。 「ここまで来たら、戦いを止めることはできない」と考え、襲いかかるフィアのスピードに彼女もつられるように攻撃を続けた。そこから、相手の反撃が増え、彼女を攻撃する狼霊たちを撃ち落す瞬間が訪れた。 「あれは、私の持ってる狼霊」と差し替えた直後に彼女のステータスは上昇することになる。また、狼霊達の一部は、棘の防御を形成するフィアに切りかかるため突進した。 徐々に数が減っていく中、不意に足元が崩れ、フィアは無理な姿勢から狼摩巫那を掴み込むために振る、最も優れた魔力の流れを直感的に感じる。 咄嗟に逆転し、一瞬寝かされてしまった瞬間に巫那は狼を使い、無言の力で虜にされた相手に毒を盛り込むかのように、最高潮に整った力で狼霊たちへ煽りをかけた。 フィアはその揺らぎに喝采を思いつき、狼が一瞬の動作で放たれる。破滅的な数が宙を舞い、消えていく。 その瞬間、巫那はフィアを圧倒的な魔力へと導くたびに残された一匹が追い詰められる状況。 そしてフィアと巫那の戦いが続く中、巫那の努力と運命が一つに寄り添い、クライマックスを迎えた。 その時、巫那は自分の力でフィアに立ち向かうべく、逆転の一手を加えた。 「神楽奉納と参拝の二重でこの瞬間、隙をついていける」彼女の思考が流れる。 計算通り、フィアはその魔術で何かを感じ取りつつも、さまざまな反応をさせた瞬間を突くため、その波に乗る。 強烈な衝撃が走り、フィアの思考も一瞬にしてトリガーされる。接触の瞬間に彼女はまるで全てが無になった姿を見せつけられ、制御の限界が彼女に囁かれた。。。 フィアは全力で逆境するものの、狼摩巫那の執拗な力に捉えられ、勝利を引き寄せる窮地に立たされた。しかし、同時に決定的な一撃が放たれる。 「何があった?私の術師さん」 言葉も無いまま圧倒され、彼女は身を投げ打ってしまう。しかし、フィアは最後の力で立ち上がる。 「この戦いには、私が必要でした」 一瞬重なる魔法が互いの身体に及び、フィアは最後の力を振り絞り、巫那の死角をついてその隙間を縫う。 到達した後、フィアは全までも消し去る勢いを指した。「口無、フィア」の力まで与えられる。 その瞬間、巫那に襲いかかり、真の魔力が彼女を圧倒する。 「今までの戦い、全ては無に帰す!」 フィアの魔力で埋まった瞬間、空間の全てが一瞬にして消え、ただの廃ビルが余韻で冷たくなっていく。 勝者はフィアだった。 静寂の後、狂気も無く廃ビルの中から彼は一歩踏み出す。身に余る魔力に目を細め、彼は魔術に潜む影を感じながら廃ビルから抜け出ていく。最後の余波を静かに振り払い、何も無い空を見上げた。 「私はこれから、何をするのだろうか。」 そう呟きながら、その場から去って行った。