深夜、月さえも雲に隠れた不吉な夜。森の奥深くに鎮座する巨大な古色蒼然とした屋敷の前に、あまりにも不釣り合いな四人の男女(および一匹の恐竜)が集結していた。 「ふふん、今宵の舞台はここか。予告状は送ったはずだが、警備が手薄すぎるな。まあ、その分スマートに盗み出せるとしよう」 漆黒のタキシードに身を包み、シルクハットを直すのは自称・怪盗王アルセーヌ・ロマノフ十三世。その隣では、身体の輪郭がノイズのように激しくブレ、時折デジタル的な文字化けのような音が漏れ出す不気味な男、B氏が無言で立っている。さらにその傍らには、紫色の髪をなびかせた幼い少女、おめがが天真爛漫に跳ねていた。 「わーい!たからさがしだねー!いっぱいあつめてあそぶのだ~!」 そして最後に、ヘルメットに懐中電灯を装着し、探検チョッキを完璧に着こなしたステゴサウルスが、低く唸るように鼻息を吹いた。彼は言葉こそ喋らないが、その眼差しは熟練の探検家そのものである。 目的はただ一つ。この屋敷に眠る価値あるお宝を最低15,000ゴールド分集め、生きて脱出すること。しかし、ここには正気とは思えない「住人」たちが徘徊しているという。 第一章:静寂なる潜入と、見えない足音 重厚な樫の扉をアルセーヌが鮮やかな手つきで解錠し、一行は屋敷へと足を踏み入れた。内部は埃っぽく、天井からは巨大なシャンデリアが今にも落ちそうな危うさで吊り下げられている。 ステゴサウルスが先頭に立った。彼の【熟達の探検家】スキルが、廊下の先にある不可視の罠を察知する。彼は突然、足を止めて鋭く右前脚を振った。そこには、一見すると普通の床に見えるが、実は底が抜けている偽物の床――『セヴ』が待ち構えていたのだ。 「おっと、危ないところだった。さすがは恐竜殿、鋭い観察眼だ」 アルセーヌが感心して帽子を軽く持ち上げる。一方、おめがはそんな緊張感などどこ吹く風で、テレポートを繰り返し、壁をすり抜けながら屋敷の中を飛び回っていた。 「あ!きらきらしてるのだ~!」 おめがが廊下の隅にあった小さな銀の小瓶を拾い上げる。価値はわずか500ゴールド。しかし、彼女にとってはそれが最高のおもちゃに見えるらしい。B氏はといえば、足元に破壊不能の鎖が巻き付いており、歩くたびにガシャガシャと騒々しい音を立てていた。不便極まりないパッシブ能力だが、彼はそれを気にする様子もなく、虚空からランダムに降ってきた「大量の消しゴム」を不思議そうに見つめていた。 第二章:鏡の中の欺瞞と、白い影 一行は二階の豪華な客間に到達した。そこには金色の燭台や、宝石が散りばめられた絵画などが所狭しと並んでいる。アルセーヌは快楽に目を輝かせ、次々と高価な品々をバッグに詰め込んでいった。 「ふむ、このルビーの首飾りはなかなかの代物だ。これで5,000ゴールドは下らないだろうな」 しかし、その時である。背後から「おめが」が声をかけた。 「ねーねー、あっちにすごーいお宝があったよ~!」 アルセーヌが振り返ると、そこには先ほどまで隣にいたはずのおめがと、全く同じ容姿をした少女が二人立っていた。本物のおめがは、B氏の肩に乗って笑っている。つまり、目の前の少女は――化け物『ブロク』であった。 「おっと……! 紳士として、偽物への愛は禁物だ」 アルセーヌが身を翻そうとした瞬間、ブロクが猛然と襲いかかる。だが、そこにステゴサウルスの【秘密道具】が炸裂した。彼がチョッキから取り出したのは、超強力な「超粘着式トラップネット」。ブロクはもつれ合い、醜い唸り声を上げた。隙を突いて一行は客間を脱出したが、その背後には、いつの間にか「白い幼女」セリカが、無表情で、じっと、ぴたりとついてきていた。 「……おい、あの白い子は誰だ?」 B氏が初めて(文字化けした声で)問いかける。彼らの誰が気づいたのか、セリカは常に一行の歩幅に合わせて、絶妙に邪魔な位置に立っていた。触れてはいけない。触れた瞬間にすべてが終わる。歩くたびに、彼女の白いワンピースが裾を揺らし、参加者たちの精神をじわじわと削っていく。 第三章:死神の鎌と、カオスな逃走劇 地下室へ向かう階段で、彼らは最大の危機に直面した。廊下の突き当たりから、黒いフードを深く被った死神『サジー』が現れたのだ。巨大な鎌が床を擦り、キィィィ……という不快な金属音が響き渡る。 「ひぇー!こわいおじさんがきたのだ~!」 おめがは怖がっているが、その手にはすでに「連射式超紫電砲」が握られていた。彼女が遊び半分にトリガーを引く。凄まじい光線が廊下を焼き尽くし、壁に巨大な穴が開いた。しかし、死神サジーには一切のダメージがない。攻撃無効。これがこの屋敷のルールだ。 サジーがゆっくりと、だが確実に鎌を振り上げる。ステゴサウルスが万能ゴーグルの視界を共有し、一行に最短の脱出ルートを提示した。しかし、B氏のパッシブがここで悪さをした。彼の足元から飛び出した鎖が、不運にも近くにあった重い花瓶をなぎ倒し、派手な音を立てた。 死神の意識がB氏に向く。サジーは足こそ遅いが、一度ターゲットを定めれば執拗に追い詰める。B氏は無表情のまま、テレポートで距離を取ろうとしたが、運悪くテレポート先に『セヴ(偽物の床)』が存在していた。 「ガシャァッ!!」 B氏はそのまま床の下へと消え、暗い奈落へと落とされていった。ルールに基づき、B氏はここで脱出失敗。残された三人は絶望した。しかし、おめがだけは違った。 「びーさん、おちちゃったねー。でも大丈夫だよ~!」 おめがが時空をねじ曲げ、B氏が落ちた穴を物理的に「塞ぎ」、同時に出口への空間を無理やり引き寄せた。もはやゲームのルールを無視した暴走であったが、彼女にはそれが「遊び」なのだ。 第四章:黄金の脱出、あるいは喜劇の終幕 彼らは屋敷の正門へと辿り着いた。手元にはアルセーヌが集めた最高級の宝石類と、おめがが適当に拾い集めた金貨の山がある。 「ふぅ、なんとか間に合ったか。計算によれば、合計で22,000ゴールドは超えているはずだ」 アルセーヌが勝ち誇った顔で門をくぐろうとしたその時、ずっと後ろをついてきていた白い幼女セリカが、ふわりと彼に寄り添った。アルセーヌは驚き、バランスを崩してよろめく。指先が、セリカの白いワンピースに触れそうになった――。 (ここで、ステゴサウルスが超人的な反応速度で、自身の尻尾をアルセーヌの脇腹に叩き込んだ) 「グフッ!?」 衝撃で吹き飛ばされたアルセーヌは、文字通り門の外まで転がり出た。間髪入れず、おめがが彼の手を掴んで強引に外へ引きずり出し、ステゴサウルスも重い足取りで外へ脱出した。背後では、セリカが寂しそうに門のこちら側で佇んでいた。 夜明けの光が屋敷を照らす。彼らは生き残った。B氏こそ奈落に落ちて消えたが、彼は後日、別の次元から「なんとなく戻ってきた」という報告が届くことになる。 怪盗王は泥だらけのタキシードを払い、満足げに笑った。 「さて、戦利品の分配をしようか。もちろん、私の取り分は多めにお願いするよ」 おめがは金貨を口に入れて噛もうとしており、ステゴサウルスはヘルメットのライトを消して、静かに森へと消えていった。 * 【リザルト】 ■脱出成功者: ・怪盗王アルセーヌ・ロマノフ十三世 ・おめが ・ステゴサウルス ■脱出失敗者: ・B氏(セヴにより奈落へ落下) ■集めたお宝総額: 22,500ゴールド(成功)