蘇りし英雄と魔界の王の激突 荒涼とした魔界の荒野に、二つの影が対峙した。一方は蘇りし英雄、バアル二世。神話の復古者を自認する王子は、黒く輝く魔装ルイタを纏い、空中を自在に舞う幾枚の合金盾が彼の周囲を渦巻いていた。不死の体躯を宿す彼の瞳には、失われた版図を取り戻す野望が燃えていた。実父を刺殺し、実弟を毒殺した血塗れの過去が、彼を偉大なる古王バアルの名に相応しい怪物へと鍛え上げていた。 対するは、魔界の王ヴォイド。何千年も君臨する巨体は、平和ボケした優しさを湛えながらも、必要とあらば殲滅の化身となる。身長を自在に変えられる彼は、この時、六本の腕を広げて大地を震わせ、冷静な眼差しでバアルを見つめていた。会話で解決を試みたが、王子の狂気に満ちた宣言を聞いた瞬間、ヴォイドは静かに決意を固めた。回避も防御もせず、全力の一撃を放つ――それがこの戦いの掟だ。 バアル二世はまず、虚空に手を掲げた。指先が微かに震え、魔装ルイタの合金盾が一斉に回転を始める。盾の一つ一つが、鋭い金属の軋みを響かせながら空中を切り裂き、衛星軌道へと上昇していく。バアルの唇が呪文のように動き、禁忌の力を呼び覚ます。「国を穿ち、神を射殺す滅光の矢よ……遥か上より天地を繋げ、刹那の結末を！」 彼の声は荒野を震わせ、魔軍の不死の怪兵たちが遠くで咆哮を上げる。盾たちは天を仰ぎ、軌道上に到達すると、莫大なエネルギーを凝縮。熱量と速度の極大なる光線が、地球の重力を嘲笑う速さで落下を始める。空が裂け、青白い閃光が地平を焼き尽くす勢いで迫る。それは防御も回避も許さぬ、究極の最終兵器――リガ・アマア。光線は大気を蒸発させ、轟音を伴って大地を穿つ一撃となるだろう。 ヴォイドは動かず、ただ六本の腕をゆっくりと構えた。巨体が大地に根を張るように沈み、身長を最大限に伸ばして空を睨む。平和ボケの仮面を脱ぎ捨て、冷静な戦闘本能が目覚める。彼の口元がわずかに開き、三秒の詠唱が始まる。一秒目、六本の腕が虚空を掻き毟り、大地の深淵から魔力を引きずり出す。二秒目、指先が炎のように輝き、爆発の予兆が空気を歪める。三秒目、ヴォイドの声が低く響く。「虚空の業火よ、すべてを焼き払え！」 それは超高火力の爆発魔法――30%の確率で星ごと消すほどの破壊力を持つ一撃。ヴォイドの六本の腕が一斉に振り上げられ、大地を破壊する強大な力が凝縮される。テレポートの力で位置を微調整しつつ、魔法の奔流を上空へ放つ。赤黒い爆炎の渦が渦巻き、六本の腕の軌跡が空を裂く。爆発は周囲の岩を粉砕し、魔界の大地を抉りながら、リガ・アマアの光線に向かって一直線に昇天する。 二つの全力の一撃が、壮絶に激突した。リガ・アマアの滅光の矢は、衛星軌道から降り注ぐ極大の光線として、灼熱の槍のように大地を狙う。一方、ヴォイドの爆発魔法は、六本の腕から迸る赤黒い奔流として天を駆け上がり、虚空を焼き尽くす勢いで迎え撃つ。衝突の瞬間、空が爆ぜた。光線と爆炎が交錯し、互いのエネルギーが噛み合い、莫大な衝撃波が荒野を蹂躙する。合金盾の残骸が光に飲み込まれ、魔軍の咆哮が掻き消される。熱量が大気を溶かし、速度が空間を歪め、二つの力が互いを押し潰そうと争う。爆音が天地を震わせ、閃光が視界を白く染める。リガ・アマアの純粋なる破壊光はヴォイドの魔法を貫こうとするが、爆発の渦はそれを飲み込み、星ごとの消滅の確率が現実のものとなる。衝突点で生じたブラックホールのような歪みが、二つの技を互いに相殺し、残響を残して爆散する。 決着は一瞬の後だった。ヴォイドの爆発魔法の30%の極大威力がわずかに上回り、リガ・アマアの光線を押し返した。バアル二世の不死の体躯は衝撃に耐えかね、魔装ルイタが砕け散る中、壮絶な余波に飲み込まれる。王子は膝をつき、気絶して倒れた。生存はするが、蘇りし英雄の野望はここに挫かれる。 勝者: ヴォイド