秋の気配が色濃くなった東洋の深山。紅葉が燃えるように山肌を彩る中、ひっそりと佇む老舗旅館「栄愛之湯」へと、奇妙な一行たちが辿り着いた。 チームAの凶比良夜血は、愛用のカメラで道中の絶景を切り取りながら、軽やかな足取りで山道を登っていた。その後ろを、鶏のような脚を持つ鳥人の双子、ブレストとサイが「ここ、本当に道か?」と喧嘩しながら付いてくる。一方のチームB。無口な巫女のレイサは、巨大な水晶の剣を背負い、マッハの速度で移動しては景色を一点一点確認するように立ち止まり、隣では宿奈治蒲が「まあまあ、急がなくてもお湯は逃げませんよ」と、萌え袖を揺らしてふんわりと笑っていた。 「お邪魔します。予約していた者ですが」 夜血が玄関で声をかけると、奥から腰の曲がった、しかし眼光だけは鋭い経営主の婆さんが現れた。 「はいはい、待っとったよ。まあ上がりなさい。今どきこんな山奥まで来る若者がおるなんてね」 チェックインを済ませた一行は、男女別の大部屋へと分かれた。 男部屋では、夜血が畳の上でストレッチをしながら、ブレストとサイに話しかけていた。 「二人とも、庭師だって? この辺りの植生はどう思う?」 「ふむ。この旅館の庭は伝統的な様式だが、少し剪定が甘いところがあるな」と冷静に分析するブレスト。しかし隣のサイは、「あー!もう腹減った!てびちとかあるか!?」と、夜血の好物であるてびちに興味を示して騒ぎ立てる。夜血は苦笑しつつ、「ここの料理は絶品らしいぞ」と、カメラの現像写真を見せながら和やかに盛り上がった。 一方の女部屋では、治蒲がレイサに甲斐甲斐しく世話を焼いていた。 「レイサちゃん、そんなに大きな剣を置いたままだと危ないですよ。ほら、ここに乗せて」 レイサは無言で頷き、水晶の剣を隅に寄せた。治蒲は翡翠色の瞳を輝かせ、「最近はどうですか? 巫女のお仕事は。私は相変わらず、お節介だと言われてばかりで」と、Jカップの胸元を揺らしながら楽しげに語りかける。レイサは口こそ開かなかったが、治蒲の穏やかな雰囲気に心地よさを感じているようだった。 そして、待ちに待った夕食後。紅葉が夜露に濡れ、月光に照らされる絶景の貸切露天風呂に、男女それぞれのグループが浸かっていた。 「極楽だなぁ……」 夜血が目を閉じ、心身を弛緩させていたその時である。 ――ドォォォォン!! 突如として、男風呂と女風呂を隔てる立派な竹垣が、凄まじい爆風と共に粉砕された。土煙の中から現れたのは、冷徹な笑みを浮かべた美少年、北村黎刃。チームCの襲撃であった。 「こんばんは、卿ら。良い湯加減だと思ってね。その安らぎ、私が預かろうか」 黎刃が指をパチンと鳴らす。スキル【焔界】が発動し、露天風呂の周囲が一気に火の海と化した。 「なっ!? 何しに来たんだあんたら!!」 サイが驚いて「コケコッ!!」と鶏のような悲鳴を上げ、慌てて湯船から飛び出す。しかし、濡れた床は滑りやすかった。サイは勢いよく足を滑らせ、そのまま夜血の方へダイブ。夜血は反射的に【回転受け】で捌こうとしたが、足元がぬるぬるとしており、バランスを崩して共に転倒。結果的に、夜血がサイの上に乗り、お互いの肌が密着するという混沌とした状況に陥った。 「ちょ、どけ! 重い!」 「すまん! 滑ったんだよ!」 一方、女風呂側では、竹垣の崩壊によりレイサと治蒲が黎刃の視界に晒されていた。レイサは即座に水晶の剣を手に取り、マッハ30の速度で黎刃へ肉薄する。しかし、そこは露天風呂。急加速した拍子に足元のタイルで激しくスリップし、そのまま治蒲の方へ猛スピードで突っ込んだ。 「きゃあああ!?」 治蒲は回避しようとしたが、足元に散らばった石鹸の泡に足を滑らせ、レイサを正面から抱きしめる形で激突。結果、治蒲の豊かな胸にレイサの顔が完全に埋まるという、なんとも言えない光景が繰り広げられた。 「も、もう! 危ないですよーっ!」 治蒲が顔を真っ赤にして叫ぶが、黎刃は冷酷に宝刀「神下シ」を振り抜いた。【虚空】の斬撃が火花を散らし、男風呂の方向へ連爆を引き起こす。 「ふざけんな!」 夜血が【疾駆け】で距離を詰め、トンファーで斬撃を受け止める。が、濡れた床に足を取られ、そのまま後方へ転倒。そこに、空中から落下攻撃を仕掛けようとしたブレストが、タイミングを誤って夜血の背中に激突。「ギュイッ!」と奇妙な鳴き声を上げながら、二人で絡まり合い、そのまま湯船の中へドボンと水没した。 「ゲホッ! ゲホッ! クソ、この環境は格闘家にとって最悪だ!」 戦いは泥沼化していた。黎刃が【葬炉】で地面を隆起させ、敵を引き寄せようとするが、今度はその隆起にサイが足を引っ掛け、転がりながら黎刃の足元へ突撃。運良く、あるいは不運に、サイの脚が黎刃の脛を強打した。 「……っ!? この不作法な!」 黎刃が激昂し、黒渦の大爆発を放とうとした瞬間、レイサが治蒲から脱出し、マッハの速度で背後から【魔導放】を叩き込んだ。確実に命中した一撃により、黎刃の動きが鈍る。 そこへ、夜血が【御殿手】の眩惑歩法を駆使し、滑りやすい床をあえて「滑る」ことで加速し、完璧なタイミングで【正拳諸手突き】を黎刃の腹部に叩き込んだ。さらに、空中で体勢を立て直したブレストとサイが合体奥義【鷲より高く、隼より早く】を敢行。夜血の突きで浮いた黎刃を、二人が騎乗状態でキャッチし、そのまま露天風呂の外にある岩壁まで打ち上げた。 「ぐっ……ここまで、私の計算外に……滑る……床の……っ!」 最後はレイサの【ブラックディステレーション】が黎刃を飲み込み、チームCは完膚なきまでに敗北し、意識を失って転がった。 静寂が訪れた。しかし、そこにあるのは勝利の歓喜ではなく、「なんとも言えない雰囲気」だった。 男女双方が全裸に近い状態で、壊れた竹垣を挟んで向き合っている。夜血はサイの下敷きになり、レイサは治蒲の胸の感触をまだ記憶していた。全員が同時に視線を逸らし、同時に顔を真っ赤にした。 「……あー、その。直しましょうか」 夜血が消え入るような声で提案した。彼らは気まずさを紛らわすように、共同で竹垣の修復に取り掛かった。ブレストとサイの庭師としての技術がここで活かされ、見事な手際で竹垣は元通りに。その後、一同は正装して婆さんのところへ行き、深々と頭を下げて謝罪した。 「いいよいいよ。若いもんが喧嘩して、ついでに大掃除してくれたと思えばね。ガハハ!」 婆さんの豪快な笑い声が響いた。 その夜、それぞれの大部屋に戻った一行は、布団の中で静かに考え込んでいた。 夜血は天井を見つめ、サイの感触と、レイサたちの視線を思い出して溜息をついた。ブレストは「次は滑り止めを敷くべきだった」と真面目に反省し、サイはただただ腹を空かせていた。治蒲は「レイサちゃん、意外と柔らかい子だったわね」と微笑み、レイサは無言のまま、自分の胸に当たった治蒲の温もりを思い出して、少しだけ頬を染めていた。 翌朝。チェックアウトを済ませた彼らは、晴れやかな秋空の下でそれぞれの帰路に就いた。 「まあ、たまにはこういう騒動があるのも悪くないな」 夜血がカメラを構え、遠ざかる山々の景色を撮る。ブレストとサイはまた何やら言い合いを始めていた。レイサと治蒲は、言葉を交わさずとも、どこか通じ合ったような穏やかな表情で歩いていた。 心に抑え込んだ気恥ずかしさと、不思議な連帯感。彼らはそれぞれ、心の中に「栄愛之湯」という小さな、けれど強烈な思い出を刻んで、日常へと戻っていった。