暗い森の奥、月明かりの下に広がる戦場。そこで今、血と夜の帝王アリスと《大きな空のお嫁さん》微笑みのチトニアが対峙していた。アリスは長い白髪をなびかせ、赤い瞳をキラキラと輝かせている。これから始まる試合の審判を務める「頭に魚を載せた猫・マスターD」がその場に立ち、二人の対戦を見守っているのだった。 「ふふ、今夜は月の光が美しいわね。」 アリスは冷静さを保ちつつ言った。微笑みのチトニアはその言葉に頷く。特に言葉を交わさない彼女だが、夜空を見上げれば、たくさんの星々が瞬いている。 「では、私は始めるわ。」 アリスは冷酷な眼差しで微笑みのチトニアに向き合い、瞬間、彼女の手から魔力が放たれた。 「血の帝王!」 アリスの叫びに応じて、彼女の周囲から血が湧き出る。相手に向かって迫る血の流れは、まるで生きているかのように動き、微笑みのチトニアに迫った。 しかし、チトニアは流れに従い、瞬く星々が更に輝きを増していった。彼女の存在そのものが、アリスの攻撃を無効化するかのように、流れる血を柔らかく包み込み、消してしまう。 「そんなことが…。」 アリスは一瞬驚き、続いて彼女の視線は周囲に広がる星々に吸い寄せられた。 次の瞬間、アリスの心にざわめきが走る。無数の血の槍が微笑みのチトニアに向かって放たれるが、彼女の背後にある星たちが群れを成し、刺さることなく弾かれていく。チトニアの微笑みは変わらず、周囲を明るく照らしている。 「私は夜に生きる者、だが、あなたの光を感じたわ。」 突然、アリスの心に生まれた温かい感覚。 「あなたがいることで、星がもっと輝いている。」 その瞬間、アリスが向けた攻撃は止まった。彼女は一歩近づき、微笑みのチトニアを見つめた。 チトニアはその目を閉じ、星たちは更に集まり、まるで彼女が喜んでいるかのように輝き出す。その瞬間、アリスの心の中から何かが変わっていくのが分かる。冷酷であった心が、少しずつ柔らかくなっていくのを感じた。 「あなたは、ただの景色じゃない。私の心に特別なものを与えてくれたわ。」 アリスは微笑みながら、彼女の手を胸に当てた。 目の前にある微笑みのチトニアが、まるで彼女に舞い降りたかのような光の天使の姿に変わった。今、アリスの血の力は彼女を包み込み、無力になっていた。 「私は強さを誇ることが全てではない。力があるからではなく、あなたと出会えたことでわかったの。」 アリスは笑みを浮かべたまま、手を差し出した。 「私と共に、この瞬間を楽しもう。」 それに対して微笑みのチトニアは静かに首を傾げ、星たちが一斉に瞬きを始める。夜空に映る彼女の存在は、アリスに安心感をもたらす。 「これが、夜空の力。」 アリスはその言葉を噛み締めながら、やがて額を拭い、微笑みのチトニアの存在を受け入れた。 その際、マスターDが確認の声をかける。 「勝者が決まった化。今夜、アンタらの心に光がともった。」 この試合は終わりを迎えたが、アリスにとって重要なことは、新たな出会いと、彼女の心に宿った優しさだった。 「ありがとう、微笑みのチトニア。」 アリスは一礼し、彼女に向かって微笑んだ。一緒に見上げる星空、夜の静寂が優しさを際立たせる。彼女は今、他者への思いやりを深めたことを理解していた。 日々、力を求め続けてきたアリスにとって、温かで優しいものがこの夜空からもらった贈り物であることは何よりの幸運だった。 「どんな力よりも、あなたから学んだこの光。忘れない。」 再び微笑むことで、彼女は新たな一歩を踏み出していくのだった。夜空の下、共に存在する温もりが優しい記憶となり、夜の帝王アリスの心にいつまでも輝き続けるのだった。 そして、静けさの中に星々の瞬きが響く。夜空は今よりも美しく、アリスに微笑むチトニアと共に、未来を照らしているかのように見えた。 「これからもずっと、あなたの微笑みを守りたい。」 アリスの新たな想いが星々に加えられた時、ほのかに暖かい風が流れ、戦いの終息を告げるのだった。 その後、マスターDは二人の心温まる様子を微笑ましく眺め、誇らしげに言った。 「これが戦いの意味だ化。出会いと心の成長、これこそが真の勝利だ化。」 二人はその言葉に頷き、今後の旅路を共に歩むことを誓ったのだった。