死の砂の迷路 サージは褐色の肌を陽光に輝かせ、常に高揚した笑みを浮かべていた。23歳の若き王族は、国民から愛されるフレンドリーな性格で、次期国王の座を約束されていた。彼の体は砂そのものであり、物理的な攻撃などものともしない。砂漠の民の誇りを胸に、今日も彼は冒険の旅に出ていた。一方、バアル二世は自らを蘇りし英雄と信じ、神話の復古者として君臨する野心家だった。魔装ルイタ――空中を自在に舞う幾枚の合金盾――を従え、不死の肉体を持つ彼は、実父を刺殺し、実弟を毒殺した過去を背負いながら、バアルの魔軍を率いて失われた版図を取り戻す野望を燃やしていた。 二人は奇妙な巡り合わせで出会い、互いの力を認めつつ、未知の領域を探検することになった。目的は定かではなかったが、サージの好奇心とバアルの征服欲が、彼らを白黒の世界へと導いた。辺りは無人の田舎道。色褪せた景色が広がり、遠くから見知らぬ童謡が微かに響いてくる。蛙の鳴声と鴉の鳴き声が混じり合い、徐々に不気味なハーモニーを奏で始めた。サージはテンション高く笑った。「おいおい、この道、面白そうだぜ! 王子として、こんな退屈な旅はごめんだ!」バアルは冷ややかに盾を浮遊させながら応じた。「愚かな。この先には力の源があるはずだ。進め。」 しかし、歩を進めるごとに、二人の精神に影が忍び寄る。童謡のメロディーが耳に絡みつき、蛙と鴉の声が頭痛を誘う。サージの意志は強く、精神攻撃に耐性があったが、バアルの心には禁忌の過去が蘇り、苛立ちを募らせた。道は不規則に分岐し、最初の分かれ道が現れた。小道だ。長い畦道が続き、足元が不安定に揺れる。「よし、突っ切ろうぜ!」サージが先陣を切り、バアルが盾で周囲を警戒する。だが、畦道の途中でサージがうっかり足を滑らせた。砂の体が流動的に形を変えようとしたが、地面が陥没し、マンホールが口を開けた。中から泣き声が響き、サージは吸い込まれるように落ちていく。「くそっ、何だこれ!」彼の叫びが虚しく響き、砂の渦が渦巻く中、サージの姿は闇に飲み込まれた。 バアルは空中を飛ぶ盾で体を支え、辛うじて脱出に成功した。サージの砂がマンホールの底で蠢くのが見えたが、もう引き戻す術はなかった。バアルの目には狂気の光が宿り、童謡の声が彼の精神を蝕み始める。道は再び分岐し、今度は交差点が現れた。引き返すことを思案した瞬間、十字路が突如出現。高速で車が往来し、バアルの盾が衝突を防ごうとするが、精神の乱れが隙を生んだ。一台の車が彼を捉え、引き裂くように轢き潰した。不死の肉体が再生を試みるも、精神崩壊の波が押し寄せ、バアルは動けなくなった。 最後の一人となったバアルは、朦朧とする意識の中で選択を迫られた。進むか、引き返すか。目の前に三角の標識が立ち、人の半身が描かれていた。その奥にトンネルが口を開け、暗闇が誘う。バアルは魔軍の幻影を呼び起こそうとしたが、童謡と鳥獣の声が彼の意志を削ぎ、ついにトンネルへと足を踏み入れた。一瞬の出来事だった。全身が溶け落ち、禁忌の不死すら無力化され、バアル二世は全滅した。 - 脱出者: なし - 脱落者: サージ、バアル二世