黄金に輝く巨大な円形闘技場。空を埋め尽くす観客の歓声が地鳴りのように響き渡り、熱気は最高潮に達していた。世界中から集まった武芸愛好家たちが、今、歴史的な対決を目の当たりにしようとしていた。 一方の陣地に立つのは、赤き鎧に身を包んだ巨漢、加藤勝。髭面には数多の戦場を潜り抜けた証である深い傷跡が刻まれ、その眼光は静かに、しかし鋭く相手を射抜いている。背負った大筒と腰の日本刀、そして手にした「ネオ種子島」が、彼が単なる古風な侍ではないことを物語っていた。 対するは、白銀の軽装鎧に身を包んだ騎士、【華麗な燕】フィストッチ・ウィンシェイル。彫刻のように整った容姿に、余裕さえ感じさせる微笑。彼は細身のレイピアを軽やかに回し、まるで舞踏会にでも出席するかのような優雅さで対峙していた。 審判の合図と共に、静寂が訪れる。そして、爆発的な速度で戦いの幕が上がった。 「いざ、参らん! 貴殿の技、しかと見極めさせてもらう!」 加藤が吼え、ネオ種子島の引き金に指をかけた。乾いた銃声が闘技場に轟く。8mm弾が空気を切り裂き、フィストッチの眉間を狙った。 しかし、フィストッチは動いていなかった。いや、動いた瞬間に弾丸が通り過ぎていた。彼は独特の摺足を用い、最小限の動きで弾道を回避する。 「素晴らしい速射です。ですが、私の速度には及びませんよ」 フィストッチが地を蹴った。その姿はまさに燕。視認できないほどの速度で間合いを詰めると、レイピアが雨のように降り注ぐ。スキル【慈雨】。空中へと跳ね上がり、上空から絶え間ない突きを繰り出す。 ガキン! ガギィィン!! 加藤はネオ種子島の銃身を盾代わりに使い、猛烈な突きを弾き返した。火花が散り、衝撃が腕を伝う。だが、フィストッチの攻撃は止まらない。突きから流れるように斬撃へ繋げる【辻風】が加藤の肩鎧をかすめ、赤い塗装を剥ぎ取った。 「ぬぅ……速い! だが、詰めが甘いぞ!」 加藤はあえて懐に飛び込む。フィストッチが驚愕に目を見開いた瞬間、加藤は銃を捨て、腰の日本刀を抜き放った。一閃。重厚な一撃がフィストッチを襲う。 だが、そこでフィストッチの真骨頂が発揮される。スキル【涙月】。急停止による刹那の空白を作り出し、加藤の斬撃をわずかに空振りさせた。慣性に身を任せた加藤の懐に、フィストッチのレイピアが鋭く突き刺さる――はずだった。 「甘いッ!!」 加藤はあえて体勢を崩しながら、懐に隠し持っていた【手槍】を突き出した。爆発的な対戦車兵器。至近距離での起爆。猛烈な爆風と衝撃波が二人を飲み込んだ。 ドォォォォォン!! 観客席が揺れるほどの爆音。煙が立ち込め、どちらの姿も見えなくなる。加藤自身も爆風で後方に吹き飛ばされ、鎧にひびが入っていた。だが、彼は不敵に笑う。 「これで……足は止まったはずだ」 煙の中から現れたフィストッチは、軽装鎧のおかげで致命傷こそ免れたが、その呼吸は乱れ、左腕から血が流れていた。余裕の微笑みが消え、その瞳に戦士としての真剣な火が灯る。 「……驚きました。自らを犠牲にする覚悟、敬意を表しましょう。ですが、ここからは私の時間です」 フィストッチの足運びが変わった。もはや視認することは不可能に近い。スキル【翠扇】。加藤が次なる攻撃に出ようとしたその初動を、レイピアの鋭い衝撃が打ち消す。肩に、脇腹に、太ももに。目にも止まらぬ速さで的確に急所を突く連撃が加藤を捉えた。 「ぐっ……! がはっ!」 加藤は膝をつく。もはやネオ種子島を構える余裕はない。しかし、彼は諦めていなかった。泥にまみれた手で、背中の【大筒】を強引に引きずり出した。 「まだだ……! まだ終わらぬわッ!!」 照準器のない無反動砲。普通ならば命中などあり得ない。しかし、加藤は戦場での経験に基づき、フィストッチの「直線的な高速移動」の軌道を完全に読み切っていた。彼はあえて自分の体を標的にし、フィストッチが突っ込んでくる方向へ大筒を固定した。 フィストッチが最大の奥義【飛燕】を繰り出す。緩急自在の動きで翻弄し、畳みかける決定打。レイピアが加藤の胸元へ突き刺さる寸前――。 ズドォォォォォン!! 至近距離で放たれた80mm成形炸薬弾。爆風がフィストッチを正面から捉え、白銀の鎧を紙屑のように吹き飛ばした。フィストッチは後方へ数十メートルにわたって吹き飛ばされ、闘技場の壁に激突して崩れ落ちた。 静寂が訪れる。煙が晴れると、そこには大筒を抱えて激しく喘ぐ加藤と、意識を失いかけているが、致命傷を避けて壁に寄りかかったフィストッチの姿があった。 フィストッチはゆっくりと目を開け、自分の破れた鎧と、目の前で肩で息をする赤い侍を見た。彼は力なく笑い、空を仰いだ。 「……完敗です。私の速さを、あなたの経験と度胸が上回った。見事な……戦いでした」 加藤はゆっくりと立ち上がると、日本刀を鞘に収め、フィストッチの前に歩み寄った。そして、武士の礼として深く頭を下げた。 「貴殿の技、天上の燕の如く美しかった。我も死の淵を歩いた心地よ。見事なる剣技、敬意を表する」 加藤は自分の医療キットから包帯を取り出し、フィストッチの傷口に丁寧に当てた。勝者と敗者。そこにあるのは憎しみではなく、極限まで高め合った武人同士の深い絆であった。 審判が勝ち鬨を上げる。 「勝者、チームA! 加藤勝!!」 大歓声の中、加藤はフィストッチに手を貸し、共に闘技場の中心へと歩き出した。