序章:霧に消えた村の記憶 海辺の古びた港町。湿った潮風が吹き抜ける喫茶店に、奇妙な一行が集っていた。 アメリカ海軍提督、ペリー。そして、紫色の髪をした眠そうな少女ユクル。黒いゴスロリ服に身を包み、眼帯をつけた不気味な美少女レヴィア。そして、父親を完全に財布扱いしている金髪の娘。 彼らの前に、一人の男が現れた。名はエライアス。この町の図書館司書を名乗るが、その目はひどく充血し、指先は小刻みに震えていた。 「お願いだ……助けてくれ。私の故郷である『静寂の森の村』で、人々が一人、また一人と……『空っぽ』になって消えていく。身体は残っているが、中身が、魂が、何かに啜られたかのように消えてしまうんだ」 エライアスは震える手で古びた地図を差し出した。そこには、地図に載っていない深い森の中の小さな集落が記されている。 「あそこには、古くから『星の胃袋』と呼ばれる禁忌の祭壇がある。最近、そこから不気味な歌が聞こえてくると評判だ。どうか、調査してほしい」 ペリーは胸を張り、自信満々に宣言した。 「任せておけ! 私のペリー拳があれば、どんな怪異もひとたまりもない。あ、マリオじゃないぞ! ペリーだ!」 娘はため息をつきながら、父親のポケットから財布を抜き取った。 「はいはい。パパ、報酬の半分は私の分ね」 【探索者ステータス】 ・ペリー:SAN 100 ・ユクル:SAN 100 ・レヴィア:SAN 100 ・娘:SAN 100 --- 第一章:静寂の森への行軍 一行はエライアスの指示に従い、地図の目的地へと向かった。森に入った瞬間、空気が変わった。鳥のさえずりが一切なく、ただ重苦しい沈黙が支配している。 「……眠たいです。でも、この森、何か『視線』が多すぎますね」 ユクルが欠伸をしながら、周囲を警戒する。彼女の眼は、物理的な視覚を超えた「全情報を読み取る眼」で周囲を走査していた。 「ふふっ……いいね、この静けさ。愛し合うには最高の場所じゃない?」 レヴィアが頬を赤らめ、包丁を指先で弄んでいる。彼女の足元からは、時折、不自然なほど鮮やかな青い薔薇が、土を割って咲き始めていた。 森の奥に進むにつれ、異変が顕著になる。道端に点在する村人の服。それは、脱ぎ捨てられたのではなく、「中身だけが消えて、服だけがその場に崩れ落ちた」かのような形をしていた。 ペリーは冷や汗を流しながら、もぞもぞと後ずさる。 「な、なんだこれは……。ただの失踪事件じゃないぞ」 【正気度チェック】 中身のない服の山を目撃した。 ・ペリー:1d6 → 3減少 (SAN 97) ・ユクル:1d3 → 1減少 (SAN 99) ・レヴィア:1d3 → 0減少 (SAN 100) ・娘:1d3 → 1減少 (SAN 99) --- 第二章:空洞の村の探索 ようやく辿り着いた村は、地獄のような静寂に包まれていた。家々の扉は開いたままで、食卓には温かみを持った食事が残されている。しかし、住人は一人もいない。 探索を始めて数分後、レヴィアが鋭く反応した。 「あそこに、誰かいるよ♪」 彼女が指差した先には、一人の中年男性が立っていた。しかし、その顔には目も鼻も口もなく、ただ滑らかな皮膚が張り付いた「空白の面」になっていた。 「ヒィィィ! 顔がない! 顔がないぞ!」 ペリーが絶叫し、反射的に「ペリーパンチ」を繰り出す。 「ヤーーーッ!」 ボフッ、と鈍い音がしたが、顔のない男はダメージを負うどころか、液体のように形を変え、ペリーの腕を飲み込もうとした。 「危ないですよ!」 ユクルが素早く反応し、空中に魔導書を召喚する。 【魔導書:静止する銀の頁(シルバー・ページ)】 効果:指定した範囲の時間を3秒間停止させる。 一瞬にして男の動きが止まった。その隙にレヴィアが電光石火の速さで切り裂く。 「サーフカット🔪!」 鮮血ではなく、黒い泥のような物質が噴き出した。男は悲鳴を上げる口を持たず、ただシュルシュルと音を立てて地面に溶けて消えた。 「……あれ、今の人、内臓がなかったですね」 ユクルの言葉に、一行に戦慄が走る。この村の住人は、単に消えたのではない。何かに「書き換えられ」、空っぽの器にされていたのだ。 【正気度チェック】 顔のない住民の襲撃と、その中身が泥であったこと。 ・ペリー:1d10 → 7減少 (SAN 90) ・ユクル:1d6 → 2減少 (SAN 97) ・レヴィア:1d6 → 1減少 (SAN 99) ・娘:1d10 → 5減少 (SAN 94) --- 第三章:神話生物の顕現 村の中心にある「星の胃袋」と呼ばれる祭壇。そこには、空を覆い尽くすほどの巨大な「眼」と、そこから伸びる無数の半透明な触手が、村全体を包み込むように蠢いていた。 この生物の名は『忘却の捕食者:アムネシア・ガスト』。 異次元から来たこの神話生物は、生物の「記憶」と「個としての定義」を食糧とする。食われた者は、名前も、愛も、肉体の構造さえも忘れさせられ、ただの泥の塊へと成り果てる。 「ギガガガ……記憶を……定義を……寄越せ……」 アムネシア・ガストの精神攻撃が降り注ぐ。ペリーの脳内に、「お前は誰だ」「お前の名前はマリオではないか」という強烈な疑念が植え付けられる。 「私は……私はマリオじゃない! ペリーだ! 提督なんだよぉぉ!」 ペリーがパニックになりながら、全力で「ペリー汁」を放出した。 「出た!」 精神的大ダメージを伴う謎の液体がガストの触手に命中。あまりの気味悪さに、神話生物が初めて「拒絶」の反応を示し、激しく身をよじった。 「今です!」 ユクルが叫ぶ。彼女は自身の脳波をガストにシンクロさせ、ダメージを共有しつつ、最大出力を準備する。 「狂愛の瞳、ロック完了。もう逃げられないね♪」 レヴィアが狂気に満ちた笑みを浮かべ、周囲に青い薔薇を乱舞させる。 --- 最終章:クライマックス 戦闘は激化する。ガストの触手がレヴィアを襲うが、彼女は「青薔薇の舞」で軽やかに回避し、相手の体中に種をまき散らした。 「ここだぁぁ! 91倍の愛をあげるよ!」 レヴィアが必殺技『もう逃げられないね♪』を発動。大量の茨がガストを拘束し、青い薔薇が咲いた箇所を滅多斬りにする。凄まじい衝撃波が走り、ガストの巨体が悲鳴を上げる。 しかし、ガストは最後の抵抗として、全方位に「忘却の波動」を放った。意識が遠のき、自分が誰であるかさえ忘れそうになる絶望感。 「クソッ……出ない! ビームが出ない!」 ペリーが必死に叫ぶが、ここで娘が父親の背中を強烈に蹴った。 「しっかりしなさいよ、この情けないパパ!」 その衝撃で正気に戻ったペリーが、人生で最も激しい20分の修行の成果を解き放つ。 「ソヤアアアアアアおしおきだ! 浦賀来航チョップ!!」 ギャグ補正による超絶威力の一撃が、ガストの核である「巨大な眼」に直撃した。同時に、ユクルが禁断の魔術を唱える。 「……もう、眠ってください。『マクスウェルエントロピー』!!」 紫色の魔力爆発が村全体を包み込み、アムネシア・ガストを次元の彼方へと消し飛ばした。爆風と共に、森を覆っていた不気味な霧が晴れていく。 --- エピローグ:静寂の後の不協和音 村に静寂が戻った。住民たちの意識は戻ったようだが、彼らの表情にはどこか虚脱感があり、互いの名前を呼び合うのに時間がかかっていた。 「ふぅ……なんとか終わりましたね」 ユクルが再び眠たげな表情で、本を閉じる。 「パパ、いい加減に歩きなさいよ。あ、国書拾ったわよ。これ返してほしければ、次のお給料全部ちょうだいね」 娘がニヤリと笑い、ペリーの国書をひらひらと振る。 「なっ! 貴様という娘は! 返せ! それは国家の機密だぞ!」 ペリーがじたばたと騒ぎながら、一行は村を後にした。 しかし、彼らが去った後。村の入り口にある一本の古木に、一輪だけ、不気味に脈打つ青い薔薇が咲いていた。 その薔薇からは、かすかに誰かの囁き声が聞こえる。 「……まだ、足りない。記憶が、足りない……」 アムネシア・ガストは本当に消えたのか。それとも、誰かの中に「種」を植え付けたのか。 レヴィアがふと、自分の胸に手を当て、誰にも見えない微笑みを浮かべた。 【最終正気度】 ・ペリー:SAN 82 ・ユクル:SAN 95 ・レヴィア:SAN 98 ・娘:SAN 91 物語は幕を閉じたが、彼らの心に刻まれた「空洞」は、決して埋まることはないだろう。