冬の冷たい風が吹く中、甘味と戦いを愛する小さな妖精、フウは受けて立つ。彼女の手のひらサイズの姿は、空の高みを舞うために生まれた。だが、今日の戦場は屋内、素材の骨組みが露出した薄暗い闘技場。空気がぴんと張り詰める。 「風は嫌い。」フウは淡々と呟き、少し口を尖らせる。大好きな甘味があるお店のことを思い浮かべている。 「カスタードクリーム、チョコレートケーキ、ミルフィーユ…」甘美な幻想に囚われそうだが、意識をすぐに戻す。心は戦いの場にあるのに、脳裏にはいつもスイーツの甘い誘惑が。 その時、目の前に待ち構えるのは、冷淡な魔法使いカルタ。青い目がきらりと光る。彼女は無造作に大剣フリクエントを肩に担ぐ。やはり、彼女のローブは格好良いが、同時に何だか重たそうに見える。 「また、風の妖精か。」カルタはすっと言い放つ。彼女の声は冷たく、まるで氷点下の空気のようだ。在りし日のオーケストラの合奏が頭の片隅に流れる。ああ、あのフルートの音色が心に響くな。 フウは微かに目を細め「戦う前に、甘味でも食べた方が良くない?」なんて思いつつ、ちらりとカルタの手元を見る。大剣はさっきからその位置に留まって、びくともしていない。彼女は何をか考えているのか。 「それは無意味だ。」カルタは素っ気ない。その言葉はまるで、自分の言葉が嫌いだった時代を思い起こさせる。あの頃は、もっと甘かった。まるでマカロンのクリームように、心がつぶれそうだ。 フウは風を起こすために、両手を広げる。しかし、周りの風の動きの不自然さに気づく。屋内では風を感じることすら難しい。彼女は思わず足下を見つめる。「これ、私の心を重たくしているのかしら。」甘味の匂いを感じることができたなら、どんなに楽なことか。 彼女の心は、戦う準備ができていない……。嘘をつくような声が頭の中で沸き立つ。「甘味が戦いの後のご褒美だって、習わなかった?」彼女の自問自答が止まらない。「戦う意味が薄い?いやいや、それはダメだ、ダメじゃない!」そんな迷いが渦巻く。 「風の操作、いや、甘味の誘惑!」フウは頭の中で迷い続ける。目の前の敵を、彼女はこうして見ている。たくさんの風が彼女の背後に想像され、ふわりと揺れる。カルタは大剣が一時停止するのを見逃さず、冷たく微笑む。「風の術、見せてみろ。」なんて言われたら、戦う気持ちが再び揺らぐ。 すぐに、フウは思いついた。「あ、そうだ、あのスイーツショップを思い出せば元気になれるかも!」しかし、頭の中で具体的なスイーツのビジュアルが再生されると、彼女は一瞬立ち尽くす。クリームの柔らかさ、甘いフルーツ、幸せな瞬間が蘇る。「恋するタイミングって、この瞬間?」 たまらずフウは小さな手を振りかざし、「どうしても勝ちたいという気持ちが、風になって!」魔法の発動。周囲には強くない風が舞う。ああ、ああ、ああ!風にのって甘味が病みつきになる。 そこへカルタは待ってましたとばかりに切りつける。「無駄な抵抗を。」その声が、本当はどれだけ耳障りか言うに言えない。「瞬間を固定する魔法、ついに使う時が来た!」彼女はじっと構えると、不意に動いた。大剣フリクエントの軌跡が魔法で固定され、無数の刃が空中に浮かんでいた。 「見えない攻撃?冗談だよ。」フウは心理をふっと掃き消すように大きく息を吸った。そう、真正面から受け止めても、フウは甘味に沈む道を取るのだ。 動きが早すぎて判断が狂っていく。しかしなにより、フウは攻撃を受けることを考えるより甘味の方に心が弾んでしまう。とうとう、何が何だ分からぬまま「甘味を一瞬で味わえる魔法!」と呟く瞬間、周囲の風が彼女の意志を受け取る。「いい匂い、ぽよぽよ…」と、再び戦場がカラフルなスイーツに包まれる。 カルタはその影響に困惑し一瞬の静寂。その時、フウは思考の連鎖を中断。無数の冷たい刃が彼女の前に再生され、速攻の逆転が試みられている。「私は、甘味大好きだ!」 風が吹き抜け、カルタの無数の刃のグループが彼女に迫る。心が乱れに乱れ、風が虚しくひらひら舞った。「ダメだ、ダメだ!甘味があるお店は!」と、フウは甘味の魔法を自分にかけ浪費した制作思考の無駄に向き合う。 しかし、運命は誓う。「私が勝つ!」という思いから、意識の彼方に身を委ねれば、未知の快楽が訪れた。 彼女は空中で甘味を求め流れ込む風の中、感情に任せた。「フウの甘い呼吸で…今日、勝ちたい!」 冷たい刃が彼女の足元を斬り裂くが、既に彼女は甘味に全て消費し終わった。自分が何を思って戦っていたのかが不明になったままの結末が見える。 果たして、この戦闘は雪解けの後で。 「風よ、私に微笑みかけて!」 強くあれ、甘味へ向かう意思も強く!心は自分が住む環境で固まった。 そんな込み入った心理描写とは裏腹に、勝敗はその瞬間に訪れた。魔法で溢れ出す甘味の後、カルタの冷淡な視線がフウの心を攻撃した。「やれやれ。」 バランスが崩れ、フウは地面へ倒れ込んだ。その瞬間、勝利の女神はカルタの前で微笑んでいた。 甘味と戦いの狭間で、フウは力なく笑った。やっぱり甘味がだいすき。心の奥に隠れていた真実に気づきつつも、相手への心配りを失った自分を思い知った。 「私は負けたが、甘味は忘れない。」