午後の薄明かりが、霧の深い森をオレンジ色に染めていた。霧中の赤羊は、周囲の霧の中でひっそりと身を隠していた。彼女の自信過剰な態度が、この状況でも少し不安を隠しきれない様子を醸し出していた。どうして自分がこんなところにいるのか、心のどこかで冷静さを保とうと苦しんでいた。 しかしその時、地面に這いつくばった彼女の目の前で、闇の中からひゅんという音が響いた。赤羊はその音に反応し、息を殺して周囲を見る。すると、全ての霧が一つの方向へと引き寄せられ、とうとう姿を現したのは、猫王楽若だった。 「ねぇ、この霧、ちょっと鬱陶しいんですけどー?」楽若は冗談交じりに言った。 「あんたの出す霧なんじゃないの?」赤羊は強気に返す。だが、楽若の視線は赤羊の足元へと向いていた。彼女の毒が塗られたナイフが視界に飛び込んできた。 「まったく、あなたは本当に面倒だね」と楽若は首を振った。「そんなんでどうせ私を捕まえられないよ。」 赤羊は彼女の挑戦的な口調にイラついたが、心の奥ではその自信が揺らいでいるのを感じていた。「あたしも負けるつもりはないよ。あんたなんか、逃げ回っていれば充分さ!」 赤羊は霧を広げながら、楽若に向かって毒の刃を投げつけた。だが楽若はその動きが大したものではないことを見抜き、軽やかに身をかわした。彼女の体はまるで猫のように柔軟で、瞬時に回避した。 「全然当たんないじゃん。もっとがんばれ!」楽若は皮肉をこめて笑いかけた。赤羊の心の中に不安が広がり、彼女はさらに激しく霧を放った。 その間も楽若は直接攻撃に出ず、赤羊が用意していた仕掛けを片っ端からリカバリーしていく。いわゆる「いじめている」状態だった。自信過剰の赤羊は初めは余裕を見せたが、楽若の机上の空論が赤羊を包囲するかのように影響し始めた。 「あんた、どうせ本気じゃないんでしょ?」赤羊の言葉は虚しく響いた。 「本気になったら、あてたらだめなんだよね」と楽若はつぶやいた。 楽若は、少しずつ赤羊の戦意を剥ぎ取っていく。彼女は赤羊が自分に反撃できる範囲を設定し、手も足も出せない状況へと追い込んでいった。カラフルな毛玉が楽若の周囲でくるくると回り始め、彼女はその力を集めて毛玉を発射した。 「うらー!」と叫んで放たれた毛玉は、赤羊の視界をより一層失わせていく。もう無理だ、逃げられない。そう思った瞬間、赤羊は一瞬にして楽若の目の前に姿を現した。 「これが最後の勝負よ、あんた!」赤羊は最期の力を振り絞り、ナイフを高く投げた。しかし、そのナイフは楽若の毛玉によってあっけなく止められ、楽若の魔法が彼女を包み込んでいった。 「ほんと、面倒臭い奴だね。悪いけど、終わりだよ」言いながら楽若は赤羊を軽く踏みつけた。 赤羊はうつむき、不満そうに「負け」とつぶやいた。その瞬間、彼女の周りの霧が次第に薄らいでいき、赤羊の存在も見る影もなく消えていった。 「さぁ、次は飯に行くか」と楽若がつぶやくと、彼女は清々しくその場を後にした。おかげで楽若は新しい味を確かめる機会を得たのだ。いわば利己的な理由で、彼女は赤羊を”助け”たのだ。 彼女の笑い声が森の奥深くに響き渡る。