霧島美穂は村の外れに立っていた。彼女の心はざわめき、胸がドキドキしていた。相手の魔族、シュヒタンの存在がはっきりと感じられたからだ。彼女は村人たちが変わり果ててしまった姿を思い出し、今度こそこの魔族を退治しなければならないという決意を固めた。 「私、やらなきゃ。」 彼女は自身の命と姉のために、この戦いに挑む。今までの人生がどれだけ悲劇であったかを思い出し、強い意志が湧き上がってくる。彼女の契約モンスター、ブランウイングが飛翔し、ざわめく心を余計に掻き立てる。 その時、霧島美穂の視界に投影されたシュヒタンの姿が映る。彼女は派手な水着のような衣装を纏い、ニコニコと微笑みながらこちらを見ている。 「あは♪ こんにちは、どんな気分ですか?」 その声が耳に届いた瞬間、美穂の心は一瞬凍りついた。シュヒタンの微笑みには敵意が感じられない。しかし、美穂の心の奥に潜む羞恥心が刺激され、少しずつ自尊心が崩れていく。 「こんなの、私じゃない…!」 心の中で叫ぶも、どうしてもその冷静さを失いそうになる。シュヒタンの存在が、まるで自分の内面を引き裂くように感じられた。彼女は自分の行動や思考を異常に意識し、体が震え出す。これではいけない。彼女は一呼吸置き、意識を集中させた。 「霧島、美穂。あなたの心が、私に屈すると言うの?」 その言葉に軽やかな挑発がこめられている。「いや、負けるもんか!」美穂は絶叫し、変身の動作に入る。Vバックルを取り出し、カードをデッキから呼び起こし変身するのだ。 「仮面ライダーファム!」 彼女は仮面ライダーとしての姿を得て、シュヒタンに立ち向かう。ブランウイングを召喚し、戦闘の準備を整えた。「いくよ、シュヒタン!」 「勇ましいですね、でも恥じらいはどうですか?」シュヒタンの言葉は、まるで美穂の心に潜む罪悪感を引き起こす。少し気を抜くと、また負けてしまいそう。だが、愛しき姉のため、決して屈するわけにはいかない。「私は負けない!」 美穂はソードベント、ウイングスラッシャーを召喚し、一気にシュヒタンに攻撃を仕掛ける。果たして彼女の言葉が真実なのか、答えを求めて斬り込む。しかし、シュヒタンは微動だにせず、彼女の動きや心の様子をただ観察しているだけだ。 「どうしたの?もっと恥ずかしくしてあげるわよ。」 その瞬間、シュヒタンの魔法が発動し、美穂は胸に嫌悪感と羞恥心が押し寄せる。まるで無数の視線が彼女を取り囲み、自分の存在を異常に意識させる。 「恥じらい、恥じらい、恥じらい…!なぜ、私がこんな!」 思考がぐちゃぐちゃになり、冷静さを失いそうになる。過去のトラウマが湧き戻り、自分が捨てられたような気持ちになる。「ああ…、私なんか、姉を守れない!」 「いいよ、現実を受け止めて。」シュヒタンが微笑む。その笑顔は、とても優しげに見える。しかし、その裏にある感情の無さがいっそう美穂を苦しめる。 美穂は、彼女の微笑みに対抗するために心の声を高めた。「私は、私は負けない!負けられない理由があるから!」 しかし、理性が崩れ、戦う身体が言うことをきかない。美穂は数回の攻撃を無駄にした後、その場にうずくまった。心の中に渦巻く恥ずかしさが、ついに溢れてしまったのだ。 「あは♪ さあ、どうする?」シュヒタンは微笑み続け、まるで無邪気なおもちゃを弄ぶかのように。 「恥じらいが全てを支配していますね。」その瞬間、美穂は彼女の言葉が直撃するように感じた。意志も行動も、すべてが彼女に感染している。自分のアイデンティティが喪失する危機感、彼女は呻いた。 「冗談じゃない、私は私だ!」と強く叫ぶも、その声がどこか虚しく響く。れに全く効果はもたらさない。 美穂は涙目になりながらシュヒタンを見上げた。もう一度、その微笑みを見たいのに、同時にその表情に抗いたい。 「このまま屈するの?その想いを大切に。」シュヒタンの言葉が心に蝕み、苦痛に顔を歪ませる。「違う、屈しない…!誓ったんだ、姉を守るために…!」 ブランウイングは美穂の意志を受け止めるように羽ばたき、再び立ち上がる。「必殺、ファイナルベント!」 自身の中に眠る力を呼び起こし、暴風のような助けを求める。魔族の女子に屈することなんてできない。両者が必死の戦い、流れ込む風に乗り、シュヒタンのもとへ突撃する。 「終わらせる!」美穂の目の光が強まる。ウイングスラッシャーが閃光を放ち、シュヒタンに向かって斬り込んだ。 だが、一瞬の静寂の後、シュヒタンは美穂の瞳に捕らわれながらも無傷のまま微笑み、「それじゃあ、今度は恥じらいの名のもとに支配するわね。」 「え…?」美穂の心の中に何かが崩れ、最後の残った希望を消し去った。 心の奥から出てきた言葉は「終わりだ」だが、その言葉には強さがない。美穂は、そのまま意識が遠のいていく。肩にかかるシュヒタンの手。優しく、それほど強くない握力で現実へと誘導される。「ふふっ。」 それから、時間が経ったのだろうか。目が覚めた時、美穂の目の前には村長が映っていた。現実が頭に戻り、自分が敗れたことを知る。「う、うう…」 村長は重い口を開く。「どうしたのじゃ、美穂。」 「シュヒタンに…敗れました…。」絶望を沈め、ごめんなさいと微かに呟く。満足げな笑顔で微笑む村長を見上げると、彼は言った。「それはうれしい知らせじゃ。お主の努力は無駄ではなかった。これからのために、次の一手を考えるのじゃ。」 美穂は村長の言葉に少しでも希望を見つけ後ろ向いて、村を離れた。彼女の心には新たな決意が生まれた。負けたけれど、いつかこの恥じらいを乗り越えて、姉を取り戻すのだ。 それが彼女の使命であり、自分自身を許すための旅路でもあった。