黄金の都を彷彿とさせる、視界の果てまで続く黄金の荒野。そこに、世界の頂点に立つべき唯一の王が、傲然と君臨していた。 金髪をなびかせ、赤き瞳で不快そうに眼下の景色を眺める男。黄金の鎧に身を包んだ【人類最古の英雄王】ギルガメッシュは、自らの領域に足を踏み入れた三人の「雑種」を、至高の退屈と共に凝視していた。 「雑種ごときが、王に刃向かうか。片眼鏡に学ランに、玩具屋の店主か。ふん、滑稽な面構え揃いよな」 ギルガメッシュの背後に、黄金の波紋が無数に展開される。それは神代の宝物庫【王の財宝】。そこから放たれる殺気だけで、大気が悲鳴を上げ、地面が震える。 対する挑戦者の一人、光陀蒼真は冷静に片眼鏡を指で押し上げた。彼の瞳には、常時発動する【オーディンの叡智】が、この戦いの数手先、そしてギルガメッシュという存在の「本質」を解析し続けていた。 「……なるほど。原典の所有者。我々の『象徴顕現』とは似て非なる、所有による顕現か。だが、知恵の泉を飲んだ眼が、ここで敗北する未来は映していない」 「吠えるな、雑種。貴様の知恵など、我の全知の前では子供の遊びに過ぎん」 ギルガメッシュのスキル【全知なるや全能の星】が、蒼真の思考を読み、その戦術を先読みする。王は不敵に笑い、指先を軽く弾いた。その瞬間、黄金の波紋から数多の宝具――神剣、魔剣、聖槍が、音速を超えた速度で雨あられと降り注ぐ。 「どけえッ!!」 大地文雄が咆哮し、地を叩いた。瞬間、猛烈な勢いで土が盛り上がり、巨大な岩の壁がギルガメッシュの攻撃を遮る。【山あり谷あり】による超高速の地形操作。しかし、ギルガメッシュは眉一つ動かさない。彼は波紋の中から「岩石を貫くための宝具」を射出させ、岩壁を紙切れのように切り裂いた。 「鈍いな。土いじりなど、庭師にでも任せておけ」 「っ……この野郎!!」 激昂した文雄が、さらに大規模な操作を仕掛ける。【土砂降り】。空を覆うほどの石礫の弾幕がギルガメッシュを包囲し、全方位から圧殺しようと襲いかかる。だが、ギルガメッシュはただ浮遊していた。【天翔ける王の御座】が思考速度で彼を移動させ、全ての弾幕を紙一重で回避。同時に、空中に黄金の鎖――【天の鎖】を放った。 鎖は文雄の身体を縛り上げる。神性に近い者ほど強く拘束する絶対束縛の鎖。文雄に神性はないが、その拘束力は物理的な限界を超えて彼を地面に縫い付けた。 「離せっ! クソッ、離せ!!」 「騒がしい雑種だ。さて、次は……あの玩具屋の店主か」 アニマは穏やかな表情で、静かに前へ出た。彼の瞳の中にある歯車が青く輝き始める。魔力限定解除。彼は光速を越える速度で移動し、ギルガメッシュの懐へ潜り込んだ。その手には【時を守り貫く針】が握られている。速度を遅延させ、絶対的な間合いを支配する武器。 「速いな。だが、遅いぞ」 ギルガメッシュが冷酷に言い放つ。彼は【全知なるや全能の星】により、アニマが移動する軌道を完全に予見していた。アニマが針を突き立てる瞬間、ギルガメッシュの目の前に「魔法無効化の短剣」と「速度低下を無効にする宝具」が瞬時に展開され、アニマの攻撃を完璧に相殺した。 「……! 僕の速度を読み切ったというのか」 「当然だ。この世の全ては我が財宝の中にある。貴様の理など、とうに把握済みよ」 ここで光陀蒼真が動いた。彼は特定の動作――眼を閉じ、指を組む。その本質から、北欧神話の原典を召喚する。 「[視覚の遮断]から[真理の抽出]を取得。北欧神話より[グングニル]を召喚」 蒼真の手に現れたのは、決して標的を外さない必中の魔槍。それはギルガメッシュが持つ原典の一つでもあるが、蒼真はそれを「象徴」として顕現させ、運命を書き換える戦術を仕掛けた。グングニルが放たれ、空間を突き破り王を襲う。 ギルガメッシュは不敵に笑い、空中に一つの剣を顕現させた。【原罪】。選定の剣の原点。彼がそれを軽く振るうと、槍の衝撃を塗りつぶすほどの光の渦が放たれ、蒼真の召喚した原典を焼き尽くした。 「素晴らしい。だが、原典を『借りる』者が、原典を『所有する』者に勝てると思うなよ」 戦況は圧倒的にギルガメッシュに傾いていた。文雄は鎖に縛られ、アニマは速度を封じられ、蒼真は原典の格の違いを突きつけられた。しかし、挑戦者たちはまだ諦めていなかった。 「……アニマさん、今だ!」 蒼真の合図と共に、アニマが自らの身を犠牲にするようにギルガメッシュの宝具の雨に身を晒した。肉体が裂かれ、血が舞う。だが、それは彼が狙った「被撃破」の状態だった。 瞬間、アニマの瞳の歯車が黄金に染まり、世界が静止した。 『█▉▅▎▃▉』 管理者としての権能。完全なる時間停止。周囲の全てが灰色の世界へと変わり、ギルガメッシュの動きさえも止まった。アニマは冷酷な、無機質な表情へと変わり、ギルガメッシュの周囲から武装を解除しようとする。 だが、その時。静止した世界の中で、ギルガメッシュの赤い瞳が、僅かに動いた。 「……ふん。時間を止めたつもりか。浅はかな雑種め」 【全知なるや全能の星】。過去・現在・未来の全てを見通すそのスキルは、時間停止という特異点さえも「既知の事象」として処理していた。ギルガメッシュは静止世界の中でありながら、ゆっくりと口角を上げた。 「王に命令を下そうとは、いい度胸だ。だが、ここからは我が慈悲の時間だ。終わりを告げよう」 ギルガメッシュが、自身の最果ての宝具を手に取る。それは剣とさえ呼べない、空間を切り裂くための「楔」であった。 「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ!『天地乖離す開闢の星』‼︎」 その一撃が放たれた瞬間、時間停止の理など塵となって消え去った。空間そのものが絶叫を上げ、次元が裂ける。防御不能、回避不能。世界を分断する絶対的な一撃が、挑戦者三人を、そして彼らが立っていた大地ごと、無慈悲に消し飛ばした。 黄金の光が収まった後には、何も残っていなかった。ただ、静寂だけがそこにある。 ギルガメッシュは、満足げに鼻を鳴らし、空中の御座へと戻った。 「退屈よな…我が手を下すまでもなかったわ」 彼は、自分が最古の英雄であることを改めて証明し、黄金の都へと帰還していった。その背中には、誰にも届かぬ絶対的な孤高が漂っていた。 【勝者:ギルガメッシュ】