開廷 法廷の静粛を保つための鐘が鳴り響く。執拗な視線を浴びる中、被告人「ツッカ・エネー」が法廷に登場する。その表情は怯えと無気力が混ざり合い、彼のあまりにも無力そうな姿が周囲の期待感を一層高める。ツッカは重たい鎧を身にまとい、彼がどれほどの戦意を持っていないかを如実に示している。彼の心中は、「逃げ出したい」という想いで一杯だ。 彼は「怠慢な番兵」として知られており、その名は不名誉なものだ。彼は王国の守衛として、任務を怠けて逃げ出したという罪で起訴されている。戦場において正義を守るべき立場にありながら、タフさを欠いたその姿勢が彼をこの法廷に引きずり込んだのだ。 今、彼の運命がこれからの議論に委ねられようとしている。 --- 狐音意盧は真剣な表情で法廷を見つめる。北神智琉は不安そうに隣を窺い、栄西レイは気だるそうに椅子にもたれかかっている。 検察側の主張 クレア・ストロングが立ち上がり、鋭い目で被告人を見据える。「被告人ツッカ・エネー、あなたは王国の守衛としての任務を果たさず、逃走した罪に問われています。あなたの怠慢によって、多くの市民の安全が脅かされました。」 クレアは音ありげに吐息をつき、被告に向かって続ける。「あなたの態度は王国への背信行為であり、恐れや怯えを抱くことは罪ではない。しかし、任務を放棄するという行為は、許されるものではありません。よって、懲役5年を求刑いたします!」 その声は法廷全体に響き渡り、厳格な空気が漂う。 --- 狐音意盧は冷静にノートを取っている。北神智琉は小さく頷き、栄西レイは面白そうに頬杖をついている。 弁護側の主張 アルフレッド・ヴァレンティナが立ち上がり、深い呼吸をしてから言葉を発する。「あなた方、御廷におかれましては、被告人ツッカ・エネーが心から戦う意志を持たなかったことを理解してください。彼は決して卑怯者ではない。彼には希望があったが、運命に翻弄されたただの守衛です。」 「彼の心にあった恐怖を無視することはできません。私たちは人間であり、時には抵抗することなく逃げ出すこともあります。だからこそ、ツッカに情状酌量を求め、懲役を3年に軽減していただきたいのです。」 彼の言葉には人間味があり、ツッカのかすかな期待に照らされた。弁護人の心が被告人と共にあることが感じられる瞬間であった。 --- 狐音意盧は眉をひそめて聞いている。北神智琉は小さく首をかしげ、栄西レイは呆れた表情を浮かべている。 検察側証人喚問 検察側のクレアが証人席に向かい、「証人、名乗りなさい」と促す。すると、重そうな革靴で登場したのは「王国民の一人」だ。彼は緊張しているようで、汗をかきながら証言を始める。 「私はツッカ・エネーが戦場から逃げ出した現場を目撃しました。彼の逃走は、城を守る者としてあるまじき行為です。」証人は頷きながら続ける。「彼は仲間に迷惑をかけ、王国に大きな危険をもたらしました。」 クレアは証人に向かって好んで更に質問を続ける。「確かに、あなたが見たのはツッカの逃走のみですか?」証人は頷き、彼の言葉に重みを持たせた。 --- 狐音意盧は冷静に観察し、北神智琉は興味を抱いている様子、一方栄西レイはあくびをしながら見守っている。 弁護側証人反対喚問 アルフレッドは立ち上がり、まず証人に向かって優雅に頭を下げる。「あなたが、その場面を見たのですね。その時、ツッカはまったく無抵抗に見えたのですか?」 「彼は逃げ出したのでしょうが、恐怖で仕方なかったのではないですか?」アルフレッドは問いかける。その問いは証人に迷いを生じさせ、一瞬沈黙を破るのを待つ。 証人は言い淀む。「ですが、逃げるのは…やはり正義を放棄することでは…」さらにアルフレッドは攻め込む。「あなたは彼が助けを求めていた可能性を考慮しましたか?」 証人は困惑しながら、何も答えられない。 --- 狐音意盧は目を細め、北神智琉は笑みを浮かべている。栄西レイはあくびをしつつ目を閉じている。 弁護側被告人尋問 アルフレッドはツッカに向かい、真剣な眼差しで質問を始める。「ツッカ、あの時あなたの心の中にどんな恐怖があったのですか?」 ツッカは体を強ばらせながら答える。「あんな強い敵と戦ったら、僕は命を失うかもしれないって…」 「逃げ出すのも一つの選択です。あなたは本当に王国を守ることができないと思ったのですか?」アルフレッドは優しげに聞く。 「はい…、僕は弱いから…」 その声には心の底からの悲しみが滲み出る。法廷中が静寂に包まれ、彼の無力感が照らし出される。 --- 狐音意盧は興味深そうに見るが、北神智琉は一瞬目を閉じ、栄西レイはようやく顔を上げて見ている。 検察側被告人反対尋問 クレアが立ち上がり、鋭い眼差しを向ける。「ツッカ、あなたが逃げた時、誰かを助けたかったのではありませんか?自分の命を優先することで、多くの市民が危険に晒されたのです!」 ツッカは怯えた表情で、「ですが、僕は自分の力不足を痛感していました…」と答える。 「それでも、任務を放棄する権利はありません。あなたには覚悟がなかったのです!」クレアは詰め寄る。 ツッカは呆然とした表情で答えられず、弱気にうなだれる。法廷の空気は緊張感を増し、被告人の心の中に葛藤の火花が飛び散った。 --- 狐音意盧は無表情のまま、北神智琉は意外にも真剣になっている。栄西レイは面白くなってきた様子で目を輝かせている。 評議 裁判官たちは別室に集まって評議を行う。狐音意盧が議長として、「この事件は王国の安全に関わる重大なものである。ツッカの怠慢は許されるものではないが、彼の心情にも同情の余地がある。」と言い、意見を始める。 北神智琉は、「被告は息苦しい戦場での逃走を選んだ。我々も、そこに非のない人間の心の脆さを忘れてはいけないかもしれない。」と続ける。栄西レイも考え込みながら、「だからといって、彼の行為を完全に無罪にする理由にはならない。」と同意する。 そして、議論は続くが、意見は分かれていた。 --- 狐音意盧は真剣な表情で、北神智琉はちらっと窓の外を見つめている。栄西レイは足をバタつかせて考えている。 判決 遂に、評議が終わり、裁判官たちが法廷に戻る。狐音意盧が静かに口を開く。「被告人ツッカ・エネーは、任務を怠った罪であるが、情状を考慮の上、懲役2年とする。」 被告人はその言葉を聞いて、驚きと同時に安堵の表情を浮かべる。観衆からも小さな囁きが広がり、彼の無罪ではないが、求刑よりも軽い判決に少しの希望を見出すことができた。 ツッカは「…そんな。大した罪ではないということですか」と、ほっとした様子で語りかける。彼の心には罪の重さと共に、命を賭けた意志の変化の兆しも見え始める。 --- 狐音意盧は静かに微笑を浮かべ、北神智琉は元気良く頷き、栄西レイは不満げに目を細めている。