【喫茶店Dallasでバトル】ライムちゃん vs. 因防 栄 夜の喫茶店「Dallas」。窓の外では星がキラキラ瞬き、店内では緑髪ツインテールのメイド、ライムちゃんが、スマホのソシャゲを片手に漫画を読んでいた。 「イベント周回、あとちょっと……にゃー。あっ、漫画の新刊も来てる!」 その向かいでは、頭に魚を載せた三毛猫の店主、マスターDが、丸眼鏡の奥で帳簿を眺めている。もふもふの毛並みは平和そのものだが、経営の数字を読む目は鋭い。 常連のごついおっさんは、黒革のジャケット姿でカウンターに座り、コーヒーをすすっていた。若い頃は王宮に仕えた剣士。今は平和を愛する観戦専門の客である。 そこへ、アルミホイルの帽子をかぶった探偵風の男が扉を開けて入ってきた。 「私は因防 栄。世界最高の名探偵だ。ここで説明不能な現象が起きていると聞いて、真相を暴きに来た」 「いらっしゃいませ! うちは普通の喫茶店ですよ?」とライムちゃん。 因防は店内を見回した。魚を頭に載せた猫。メイド。やけに頑丈そうなコーヒーカップ。天井から吊られた「バトル参加者募集中」の札。 「普通……? いや、これは陰謀だ!」 マスターDが札を指で叩いた。 「うちは余興でライムちゃんとバトルできるんだにゃ。参加費は一人一回5000円。ライムちゃんにはその3割、1500円を渡す契約だにゃ」 「明朗会計! やる気出てきた、にゃん!」 「では私が挑戦する。勝てる証拠を見つければ、どんな相手でも倒せる!」 「その自信、すごいですね!」 「審判は俺がやる」ごついおっさんが立ち上がった。「ただし店を壊しすぎるなよ。俺は剣を置いた身だが、修理代の話になると現役に戻るぞ」 「了解です!」とライムちゃん。 「試合、開始!」 第一幕:証拠を探す名探偵 因防は虫眼鏡を取り出し、床を調べ始めた。 「床にコーヒーの染み……これは円形だ。つまり地球が平面である証拠!」 「えっ、床の染みから地球の形まで?」 「名探偵の推理に飛躍はない。飛躍しているように見えるだけだ!」 ごついおっさんが観客席からぼそりと言った。 「いや、今のはかなり飛んだぞ」 その瞬間、床の染みが世界地図のような形に広がり、壁の新聞記事まで一斉に書き換わった。 『世界最高の名探偵・因防栄、地球が平面であることを解明』 ライムちゃんは新聞を拾い上げた。 「えっ、記事が今できた!? しかも世界の教科書にも載ってる!」 因防は胸を張った。 「当然だ。真相はこうだ。君が驚いたのは、喫茶店の床に仕込まれた地球平面化装置のせいだ。証拠はこの染み……そして、私の確信!」 彼のスキル【陰謀論】が働く。説明のつかない事象に彼が仮説を与えると、世界そのものがその仮説を採用する。原因も、経緯も、記録も、推理を裏付ける形に再構成されていく。 ライムちゃんは、目の前で世界の歴史が書き換わったのを見て、すぐに状況を判断した。 「なるほど……説明をつけたら、その説明が本当になっちゃうタイプの能力ですね!」 「そうだ。だが、君はこの真実を証明できない!」 「じゃあ、証拠のほうをギャグにします!」 第二幕:虹のペン、出動 ライムちゃんはエプロンのポケットから、虹色に輝くペンを取り出した。 「虹のペン! 喫茶店風ギャグ食材、描きまーす!」 彼女は空中にペンを走らせた。描かれた絵が、ぽんっ、ぽんっ、と実体化する。 【虹のペン】 - 描いたものを実体化する魔法のペン。 - ただし、喫茶店風のギャグ食材には、思わずツッコミたくなる効果がつく。 【描いた食材と効果】 - すべるバナナワッフル:踏むと足が派手に滑る。転んでも頭の上にワッフルが乗るだけで、痛みはほとんどない。 - びっくりホイップクリーム:浴びると一瞬だけ髪型が巨大なソフトクリームになる。効果中、本人は妙に誇らしい。 - 無限おかわりプリン:食べるたびに同じ皿へもう一個現れる。相手が油断すると、プリンが証拠品のように積み上がる。 - ツッコミ用巨大スプーン:振ると「なんでやねん!」という効果音が鳴る。殴るためではなく、ツッコミの勢いで相手を後ずさりさせる。 「食材で攻撃するとは!」因防が身構える。 ライムちゃんは、すべるバナナワッフルを床に置いた。 「名探偵さん、そこに証拠があります!」 「どこだ!」 因防は前のめりに踏み込み、ワッフルを踏んだ。 ズルッ! 「おおっ、これは床が動いた! 陰謀だ!」 「床じゃなくてワッフルです!」 因防は宙を舞い、なぜか探偵らしいポーズのまま椅子に着地した。頭の上にはワッフルがちょこんと乗っている。 ごついおっさんが採点するようにうなずく。 「転び方は満点だ。剣士の受け身よりきれいだったぞ」 「これはワッフルが私を転ばせたのではない。ワッフルを配置した黒幕が、重力を……」 「それ以上の推理は、ワッフルが聞いてますよ!」ライムちゃんが巨大スプーンを掲げた。 「なんでやねん!」 効果音とともに、因防は椅子ごと数歩後ろへ滑った。 第三幕:プリンターの危険な発想 マスターDはカウンターの下から、創造神プリンターを取り出した。普段は店の備品を作る便利な機械だが、戦闘時にはアイテムを生成できる。 「必要なら俺も手伝うにゃ。俺ならプリンターで超巨大ビル作って頭上にドカーンだけどな~」 「やめろ!」ごついおっさんが即座にマスターDの前へ回り込んだ。「その余興、参加費5000円に対して修理代が何円になると思ってる!」 「冗談だにゃ~。たぶん」 「“たぶん”で創造神プリンターを起動するな!」 因防はそのやりとりを見て、目を光らせた。 「巨大ビルを出すつもりだった……つまり、この店は秘密結社の支部だ!」 「出してないだろ!」とごついおっさん。 「真相はこうだ。マスターDはビル建設計画を隠蔽し、剣士の男はその証拠を握りつぶそうとしている!」 壁のメニュー表が、いつの間にか『秘密結社Dallas支部・本日のおすすめ』に変わった。マスターDの帳簿にも、存在しない「巨大ビル建設費」の項目が一瞬だけ現れる。 「わあ、また世界が推理に合わせてる!」ライムちゃんは驚きつつも、すぐにプリンターを見た。「でも、あの機械を使ってビルが出るなら、もっと安全で小さいものを出せばいいんです!」 「なるほどだにゃ」 マスターDはプリンターに小さな紙を入れた。 「生成、特大お子さまランチ旗!」 機械から出てきたのは、旗だけでなく、旗を立てるための大きな台座だった。ビルほどではないが、店の中央にどんと現れる。 「十分でかいじゃないか!」ごついおっさんが叫ぶ。 ライムちゃんは、無限おかわりプリンを皿ごと台座の上に置いた。 「名探偵さん! これは何でしょう?」 「証拠品だ。プリンが増えるのは、秘密結社が――」 「はい、どうぞ!」 因防は反射的にプリンを一口食べた。 ぽんっ。皿にもう一個。 「増えた……。これは国家規模のプリン隠蔽工作だ!」 ぽんっ。ぽんっ。ぽんっ。 プリンが積み重なり、因防の胸元まで迫る。 「食べれば食べるほど証拠が増える! 探偵として見逃せない!」 「推理よりプリンを見逃してください!」 「無理だ。証拠がある!」 「それ、プリンです!」 第四幕:名探偵の決めつけ、メイドの切り返し 因防はプリンの山を前に、アルミホイルの帽子を直した。 「真相はこうだ。このプリンは、私の推理を妨害するために用意された偽証拠だ。つまり、君が黒幕!」 「私はメイドです! 注文を取ったり、テーブルを拭いたり、ソシャゲのデイリーを忘れたりする人です!」 「その多忙さこそ、陰謀のカモフラージュ!」 「便利な言葉ですね、陰謀!」 因防の推理が成立しそうになったそのとき、ライムちゃんは笑顔でメニュー表を差し出した。 「じゃあ、黒幕ならこの店のおすすめを当ててください!」 「簡単だ。プリンだ!」 「正解です!」 「なにっ」 「でも今日は売り切れです!」 その言葉と同時に、積み上がったプリンが一斉に皿から飛び出し、ふわふわのホイップクリームとなって降り注いだ。 ぼふっ! 因防の髪は、巨大なソフトクリームになった。 「むっ……これは私の頭部が甘味に変えられたのではない。私が変装したのだ!」 「その変装、かわいいですね!」 ごついおっさんは腕を組んだ。 「状況判断がいいな。相手の能力を否定するんじゃなく、起きた現象をギャグにして受け流してる」 「ギャグ漫画のお約束は強いんです! 大事なのは、次のコマで元に戻ること!」 因防はクリームを払い、再び立ち上がった。帽子は少しずれていたが、名探偵の目はまだ鋭い。 「私は負けない。勝てる証拠を探す。それだけで、外なる邪神さえ倒してきた!」 「すごい実績!」ライムちゃんは目を輝かせた。「でも、今の証拠はプリンとワッフルとクリームです!」 「それらがすべて、私を倒すために配置された証拠だ!」 「つまり、証拠がいっぱいあるってことですね!」 「そうだ!」 「では、証拠品の山に埋もれてください!」 ライムちゃんが虹のペンで床に大きなコーヒーカップを描く。絵は店内の端まで広がり、黒い線が実体を得て、巨大なカップになった。 その瞬間、ライムちゃんの姿が光に包まれる。 終幕:猫耳メイド、超高速回転 「猫耳メイド姿に変身!」 緑髪ツインテールに猫耳がぴょこんと立ち、メイド服のリボンがきらきら輝く。ギャグ補正が一段と強まり、店内の空気まで漫画の効果線だらけになった。 「いくよ、にゃん! 巨大コーヒーカップ・回転サービス!」 ライムちゃんは因防を巨大カップの座席へ案内した。 「待て。これは罠だ! 真相は――」 「ご乗車の際は、帽子をしっかりお押さえください!」 カップが回り始めた。 ぐるぐる。ぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐるぐる! 因防のアルミホイル帽子が回転に合わせて銀色の円盤のように光る。 「この回転は地球の自転を隠すための――!」 「お客さま、目が回っております!」 「私は目を回していない! 世界のほうが回っているのだ!」 「そこは合ってるようで、今は違います!」 ごついおっさんが審判として、手を高く掲げた。 「勝負あり! 店内の備品を大きく壊さず、相手を店外へ送り出した。ライムちゃんの勝ち!」 マスターDがストップボタンを押す。 「回転、最高潮だにゃ!」 「ストップって言ってない!」と、おっさん。 「えっ」 カップは最後にひときわ大きく回った。 ぐるぐるぐるぐる――ぽーん! 因防は巨大カップに乗ったまま、入口から夜空へ飛び出していった。店のドアは、なぜか飛んでいく彼に合わせて自動で開き、閉じるときには丁寧に「ありがとうございました」と音声を出した。 「真相はこうだー! 夜空の星々が私を――うわああああ!」 店外の夜空では、お星さま🌟がキラキラ✨輝いた。 「今夜の推理も、星の数ほど話題になりそうだね✨ でも地球が平らかどうかは……えーっと、今は考えないでおこう!」 ライムちゃんは猫耳をぴこぴこ動かし、虹のペンをしまった。 「ふう、勝ちました! ギャグ漫画のお約束、強い! にゃー!」 マスターDは帳簿を開く。 「参加費5000円。ライムちゃんの取り分は3割で1500円だにゃ。今日のバトル報酬、はいどうぞ」 「ありがとうございます! これでソシャゲの新イベントを……いや、漫画も買える!」 ごついおっさんは、窓の外に飛んでいくコーヒーカップを見届けた。 「平和な余興だったな。次からは、店外へ飛ばす前に安全確認をしろよ」 「はい!」 「あとマスターD。ビルは出すな」 「わかったにゃ。次は超巨大プリンにするにゃ」 「それも大きさ次第だ!」 試合結果 - 勝者:ライムちゃん - 敗者:因防 栄(店外へカップごと退場。なお、本人は「これは計画的な再配置だ」と主張している) - 審判:ごついおっさん - 参加費:5000円 - ライムちゃんの収入:1500円(参加費の3割) - マスターDの取り分:3500円 被害額(円) - 床のワッフル染み清掃・拭き取り:800円 - ホイップクリームの店内清掃:1,200円 - プリン皿の追加洗浄と食器補充:600円 - 巨大コーヒーカップの製作・収納費:1,500円 - 店外へ飛び出したカップの回収・点検費:2,000円 - メニュー表と帳簿の書き直し:900円 - ドアの開閉機構の点検費:500円 - 被害額合計:7,500円