廃ビルの全容はその名の通り、広域の都市の外れに佇む5階建ての建物である。外壁は風化しきったコンクリートで覆われ、窓ガラスは打ち捨てられたままひび割れている。その物々しい佇まいは、あたかも数々の戦いの舞台となったことを物語るかのようだ。 1階:エントランスと廃棄物の山。 入口のドアは吹き飛ばされたかのように開き、広場はごみや廃材で埋まり、薄暗い影が落ちている。顧みられることのない廊下は左右に伸び、1階には短い階段とエレベーターがあるが、どちらもひどく錆びついている。 2階:オフィススペース。 かつてビジネスが行われていた空間には、荒れたオフィスデスクや壊れた椅子が散乱している。窓から差し込む光が薄れかけたカーテンに反射し、不気味な雰囲気を醸し出す。ここには影を利用した暗闇の潜行にぴったりの場所が多く、スタンドやロッカーは隠れるのに最適だ。 3階:食堂と休憩室。 広々とした食堂は、テーブルと椅子が倒れ、食器が散乱している。傷んだ冷蔵庫が設置されているものの、すでに中身は腐敗しており異臭が漂う。ここには多彩な武器として応用できるアイテム、食材や飲み物が散見される。 4階:会議室とクローゼット。 大きな長テーブルが真ん中にあり、壁には長らく放置されたホワイトボードが見える。クローゼットは無数の文房具や予定表で満たされており、それらを武器や持ち物に変化させることも可能だ。 5階:屋上とバルコニー。 屋上には鉄柵が残り、外界を一望できる。バルコニーからは風が吹き抜け、屋上には古くなった通信機器が残されている。そのため、逃げ道や視点を活かした作戦を展開するのに適した場所だ。 --- 物語は、二人の戦士がそれぞれのフロアで目覚めることから始まる。まず、一人目は夜影颯。彼は静かに目を覚ました。 「ここは……どこだ?」 薄明かりの中、彼は自分が3階の食堂にいることを理解する。 彼の和服がひらりと揺れる。影を操る能力が彼を守っていると、彼は実感する。周囲を見渡して、周りは廃材や壊れた椅子だ。だが、彼に必要な武器は、周囲に散見するであろう。 一方、2階で目覚めたテラレクスは、全身を大きく伸ばす。 「ここは……敵がいるんじゃないか?」 彼は自分が仲間を助け出すために、隠れるだろうと思い、周囲に注意を払いながら階段を上がっていく。 夜影はその冷静さで周囲を伺い、すぐに影を使い食堂から隠れた。 「このビルの構造を、利用するべきだ……」 影をはわせ、視界を遮るように動く。テラレクスは階段を上がって、3階の食堂に辿り着く。 すでに場所を特定した夜影は影を纏い、テラレクスの襲撃に備える。 *** テラレクスは自信満々に食堂に進む。 「おい、夜影颯。お前はどこにいる!」 その声は不気味な静寂の中で反響する。しかし、影に隠れた夜影は自らの影を利用し、即座に動く。 「なぜお前がここにいる。」影から声がします。 「お前の動きを捉え、こちらの有利な位置を駆使する!」 彼は瞬時に自身の影を操作し、テラレクスの身に絡めていく。 テラレクスは不意打ちされ、動きを止められる。「何だこれは!」 彼は周囲を見渡し、武器を振るう準備をする。 「これが僕の影の力だ。」夜影は冷静に言った。 テラレクスの動きをさせない。 「ならば、逃げずに戦うぞ!」 テラレクスは一撃で影を打ち振り払おうと、ハンマーを持ち上げる。 彼のハンマー「ガイアクラウン」が大きく振られ、目の前の影が消え去る。「クエイク!」 彼がハンマーを地面に叩きつけると、空間が揺れ動き、影が乱れる。 「くっ、これを受けるのか……」夜影は他の影を瞬時に操り、さらに別の場所に分身を持ち込む。 両者はお互いを測り合いながら戦い、ビルの全フロアを利用しての駆け引きが続く。 夜影の使う分身と影、周囲に蓄える物品を駆使し、次第にテラレクスが追い込まれていく。 「俺はお前に負けるわけにはいかん!」テラレクスは歴戦の勇者としての威厳を持ち、ギガントクラッシュを放つ。 その瞬間、夜影は影を一纏いして、上空に飛び上がる。 「今だ、影を主役に!」 テラレクスの強烈な一撃は、倒れたデスクを吹き飛ばし、食堂が崩れ落ちる。だが、そこに隙が生まれる。 その隙を捉えた夜影は、再び影を操り、今度は彼の心を読もうと試みる。「今の動きが見えたはず……」 ついにテラレクスを制する体勢に入った夜影は勝者として、最初の一撃を放つ。 そのとき、冷徹な彼の目が、テラレクスの姿を捉えた。両者の実力が拮抗したが、徐々に夜影が優位に立つ。 ついに、食堂で彼の影に捕らえられたテラレクスは戦意を失い、夜影は勝利を収めた。 廃ビルの出口。夜影颯は静かにその姿を現し、外の光を浴びる。 「どんな戦いも、冷静さがあれば勝てる。」 彼は一瞬振り返るが、テラレクスに対する同情はなかった。 そのまま静かにビルから出て行く様子は、まるで影のように。その後ろ姿は、勝者の名に相応しい。 空を見上げながら、すべての戦闘を思い返し、彼は新たな戦いの日々を生きることを決意した。