橘蘭と諏訪煉の出会いは、彼らそれぞれの力が明らかになり始めた高三の夏だった。学園の特別プログラムとして、特異な能力を持つ学生たちに与えられる「能力開発セミナー」が開催されることになった。そのセミナーは、メンバーの選定や出席の方法、訓練内容などが決まったうえで運営されるもので、橘蘭と諏訪煉もその参加者の一員となった。 初日のセミナー会場は、学校の体育館に特設されたもので、そこにはすでに集まっていた他の能力者たちがいた。橘蘭はいつもの無気力な態度で、壁にもたれて寝そべっていた。彼女の周りには、彼女の同期である彫素嶺架、敷島緋那、巣鴨世界が集まっていたが、蘭はあまり会話に参加せずに、つまらなそうに天井を見上げていた。一方、諏訪煉は彼女の存在に気づいていた。 「彼女、なんかすごいオーラ持ってそうだな」煉は心の中で思った。彼は普段はやる気がないように見えたが、どこかで心惹かれるものを感じていた。煉もまた、無言ではあったが、彼女の様子に惹かれ、ついつい目がいく。セミナー後半になり、各自の能力を試すためのバトルトーナメントが開催されることが発表された。 このトーナメントでは、お互いの能力を理解し、相手の長所や短所を見極めながら、さまざまな戦いと戦術が求められることとなった。まずはペアを組む必要があり、「無能力者」にも関わらず、戦績がいい橘蘭を選ぶ者が多かった。 しかし、一向に彼女の元には誰も寄って来なかった。そんな中、煉は少しずつ意を決して彼女に近づく。「あ、あの…もしよかったら一緒にペアを組みませんか?」と、若干緊張した様子で声をかけた。 蘭は面倒くさそうに目を開け、「別に構わないけど、私あんまり戦ったりしたくないからね」と、淡白な返答をしている。しかし、その目には不思議な興味と、彼女自身も感じたことのない期待感があった。 戦いが始まってから、彼らの戦闘スタイルはすぐに一致した。蘭は空間の歪みを駆使し、攻撃をかわしながら相手を歪みに送り込む。一方、煉はその技術を使ってお互いを助け合い、攻撃をうまくかわしながら相手の武器を奪う。彼はいわゆる搦手を得意とし、斬新なアイデアで相手を翻弄していった。 そして互いの能力を組み合わせながら、二人の戦績はどんどんと良くなっていった。トーナメントが進むにつれて、彼らは次第に意識する存在へと発展していく。 戦いが終わったある日、トーナメントが終わった合宿中の夜、甦る夜空の下で、無防備に談笑しながらお互いの夢や希望を語り合う場面があった。勝負の緊張が解けて、納得のいく試合ができたこともあり、彼らは自然と打ち解けていった。 「夢って何?」と蘭がうつらうつらしながら聞く。「俺は、もっと強くなって、たくさんの人を守りたいな…」と煉は答えた。 その場面で蘭は初めて煉に向ける真剣な目をした。「だったら、私はその強さを手に入れる手助けをしてあげる。私の力はきっと役に立つと思うから」と、無気力でありながらも彼女の中には燃えるような意思が存在した。実際にお互いの信頼を深めることで、彼らの絆はさらに強まっていった。 時が流れ、彼らは千の戦いを繰り返し、苦楽を共にすることで、橘と諏訪のチームワークは他の同期たちの中でも特別なものへと進化していった。 そして、特別な友達以上の存在へと進化し、彼らは少しずつ気持ちを通わせるようになり、デートをする仲にも発展した。彼らのスキンシップはその中で自然に行われていった。手を繋ぐのも、気づけば無意識に触れ合うことが多くなった。 ついに彼は、感情を言葉にしようと決心をする瞬間がやってくる。「蘭、俺たち、ずっと一緒にいたいんだ、友達?それとももっと近い関係、どう?」と言い終わりの瞬間、二人の表情が固まった。その瞬間、彼女は素直に言った。「私も同じ気持ちだよ、煉。」