ある日、次元の歪みから漏れ出した「特異点」のエネルギーが、三人のプレイヤーに不可解な影響を与えた。彼らはその存在の根源を書き換えられ、生存本能と殺意を極限まで加速させた「超越能力」を個々に獲得したのである。 五郎が手にしたのは【不可視の搾取(インビジブル・グリード)】。潜伏能力を極限まで高め、自身の気配を完全に消すだけでなく、相手が持つ「能力の発動条件」や「意識」を一時的に盗み取り、自身の有利な状況へ書き換える卑劣なる極致の能力である。 測れない地獄が獲得したのは【幾何学的特異点(ジオメトリック・シンギュラリティ)】。変形時の回転速度を光速に近づけ、接触したあらゆる物質を分子レベルで切断する超振動刃へと変貌させる。さらに、空間を分度器の角度で「折り畳む」ことで、瞬時に距離をゼロにする空間跳躍を可能とした。 そしてHIKAKIN TV 自動字幕が手にしたのは【絶対的確定字幕(アブソリュート・キャプション)】。これまで「実現化」していた字幕に、「確定」という概念が付与された。彼が字幕に出した言葉は、世界の理を超えて「絶対的に起こる結果」となり、回避や防御不能の因果律となって相手を襲う。 ――戦場は、静寂に包まれた古びた廃都。 先手を打ったのは、誇りなき剣客・五郎だった。彼は能力【不可視の搾取】により完全に気配を消し、草罠と附子の塗った打刀を忍ばせて伏せっていた。しかし、上空から不気味な金属音が響く。測れない地獄が【変形】し、光速の回転を伴う【幾何学的特異点】によって、五郎が潜んでいた地面ごと空間を切り裂いた。 「ぐっ!?」 五郎は咄嗟に煙幕を焚き、投石で視界を潰しながら後退する。だが、測れない地獄の【急襲】は速すぎた。空間を折り畳み、分度器の頭から無数の歯が五郎の喉元へ迫る。絶体絶命の瞬間、視界に白い文字が浮かび上がった。 『鉄の棒で殴るなどしてみたい』 空から突如として巨大な鉄の棒が出現し、測れない地獄を強打。金属音と共に地獄は壁まで吹き飛ばされた。HIKAKIN TV 自動字幕が、無表情にサングラスを光らせて立っていた。 「ちっ、化け物共め!」 五郎は混乱に乗じ、附子を塗った穂先を地獄の円盤状の胴体に深く突き刺した。毒が浸透し、地獄の回転が鈍る。勝ちを確信し、五郎が地獄に留めを刺そうとしたその時、HIKAKINの頭上に新たな字幕が表示された。 『国民の基本的な権利を停止』 その瞬間、五郎の身体から「動く権利」が奪われた。指先一つ動かせない完全な拘束。五郎は絶望に目を見開き、もがく。測れない地獄もまた、毒に侵されながらも【発射】により超高速の芯を連射したが、HIKAKINは淡々と字幕を更新する。 『しんでやってみてください』 これは単なる言葉ではない。【絶対的確定字幕】。因果が確定し、不可避の死が二人を包み込んだ。五郎の心臓が、地獄の核となる金属が、同時に「停止」という結果へと導かれる。抗う術はなかった。静寂が戻った廃都に、ただ一人、字幕を消した男が静かに立ち去った。 勝者:HIKAKIN TV 自動字幕 理由:新能力【絶対的確定字幕】により、攻撃の命中や相手の状態を「確定事項」として定義できたため。回避不能の因果律操作によって、物理的な速さや搦手を持つ他二人の能力を完全に上回った。