「法と正義に、例外は一切存在しない。たとえ相手が神であろうと、亡霊であろうと、あるいは歴史の亡霊であろうとも。この法廷において、私はただ一つの真実と公正な判決のみを追求する。……それでは、開廷します」 --- 《被告人1人目:“ブラッディ・アイ”》 裁判官ジャスティ:「被告人ブラッディ・アイ。あなたは『最悪の月』と称される能力を用い、特定都市の住民数万人に精神暴走を引き起こさせた。結果として街は地獄絵図となり、人々は互いの喉を食い破り、あるいは自らの爪で眼球を抉り出すという凄惨な自死を遂げた。逮捕の経緯は、ある生存者があなたの本体である怨霊の核を偶然に封印したことによるもの。……極めて残虐非道な大量虐殺である」 ブラッディ・アイ:「ひひっ!虐殺?心外だな。私はただ、彼らが心の奥底に隠していた『本当の望み』を解放してあげただけさ。あんなに激しく、美しく身を滅ぼす姿……芸術だとは思わないか?」 弁護士:「裁判長!被告人は精神的な高次元の存在であり、人間的な道徳観を適用するのは不適切です。また、今回は自ら証人を指定しており、そこから被告人の『好奇心』という情状酌量の余地があると考えます!」 ジャスティ:「好奇心で数万人の命を弄んだことが、酌量に値するとでも? 証人、前へ。……あなたが指定した『最も美しく滅びた』という者だ」 証人(精神崩壊し、ガタガタと震える生存者):「ああ……あ、あの赤い目を見た瞬間、私は……愛する妻を、自分の手で……バラバラに……あはは、あははは!」 ブラッディ・アイ:「見てくれ! この絶望に満ちた表情! 最高じゃないか! まさに至高の芸術品だよ!」 ジャスティ:「黙りなさい。あなたは反省どころか、犠牲者の苦しみを娯楽としている。救いようのない悪意だ」 ブラッディ・アイ:「ちっ、堅苦しい奴だ。おい、この裁判所ごと呪い殺してやる……え? 能力が……使えねえ!? なんだこの感覚は!」 検察官:「被告人は依然として犯行を正当化し、反省の色が見られません。極刑こそが妥当です」 ブラッディ・アイ:「ふざけるな! 私がこんなところで終わるはずが……! 出せ! 私をここから出せ!!」 ジャスティ:「判決を下す。被告人ブラッディ・アイ。罪名は大量殺人及び精神汚染罪。判決は【有罪】。罰状として、永遠に光のBの届かない暗黒の檻に封印し、自らが与えた絶望を永劫に反芻させること」 ブラッディ・アイ:「ふざけるなああ! この正義面した野郎!!」 (ブラッディ・アイが暴れ出そうとした瞬間、ジャスティの目が鋭く光る) ジャスティ:「《神淵審判》」 (ガキン1.0秒後、ブラッディ・アイは石像となり、静かに法廷から運び出された) --- 《被告人2人目:“それ”》 ジャスティ:「被告人『それ』。あなたは地球の異物排除システムとして、ある地域の工場地帯を天変地異によって完全に11月1日、消滅させた。これにより、多くの労働者が巻き込まれ、甚大な経済的損失と人命の喪失を招いた。逮捕……というより、特殊拘束措置によってこの場に立たせている」 「それ」:「(無機質な声)……排除。対象エリアに、地球の調和を乱す『不純物』を検知。排除したのみ。個としての意識はなく、システムの自動実行である」 弁護士:「裁判長! 被告人は個人の意志で動いたわけではありません。地球という惑星の『免疫反応』のようなものです。自然災害に罪を問うことはできません!」 ジャスティ:「自然災害か。だが、その『不純物』と判断された工場にいたのは、法の下に守られるべき人間たちだ。システムであっても、過剰な排除による殺傷は容認できない。被告人、『それ』。お前は排除の基準を誤ったのではないか?」 「それ」:「……誤りではない。計算の結果、排除が最適であった」 ジャスティ:「最適か。だが、その結果として失われた命の価値を、お前は計算に入れたか?」 「それ」:「……価値。定義不能。個の生命は、全の維持に比して微小である」 検察官:「このように、被告人は生命への敬意を一切持っておらず、今後も『不要』と判断すればいつでも人類を消し去る危険性があります。完全な機能停止を求めます」 「それ」:「……理解不能。私は、ただ在るだけだ」 ジャスティ:「……情状酌量の余地はある。悪意ではなく機能としての行動であったためだ。しかし、その破壊力はあまりに危険すぎる。判決を下す。被告人『それ』。罪名は過失による大量破壊および殺人罪。判決は【有罪】。ただし、死刑は免除し、罰状として『地球上のあらゆる生命の尊厳を理解するまで』の意識書き換えプログラムのインストールと、監視下での機能制限を命じる」 「それ」:「……承知。……再起動する」 (静かに、ゆっくりと退場していった) --- 《被告人3人目:アドルフ、ベニート、英機》 ジャスティ:「(深い溜息)……さて。今回の最も奇妙な裁判だ。被告人3名。あなた方は、お互いに『相手が自分の権威を侵害した』『作戦に非協力的だった』『勝手に同盟を破った』などと、互いを訴え合っている。……そもそも、あなた方は歴史上の戦争 same-side(同盟)でありながら、足の引っ張り合いに終始したということか」 アドルフ:「裁判長! まずあのアホなイタリア男を見てください! 攻めあぐねている間に私の作戦を台無しにしおった! これは国家反逆罪に相当します!」 ベニート:「何を言うか! ドイツの計画こそが無理があったのだ! 私はただ、状況に合わせて柔軟に動いただけだ! それより英機、お前のやり方は極端すぎたぞ!」 英機:「(静かに)……我らはそれぞれの国のために最善を尽くしたまで。互いの不手際を責めるのは、敗北者の言い訳に過ぎぬ。むしろ、我々をここまで追い込んだ者たちを訴えるべきではないか?」 弁護士:「えーと……裁判長。彼らはもはや故人であり、歴史上の人物です。この裁判自体がメタ的な意味を持っており、誰が正しいかを決めるのは困難かと……」 ジャスティ:「(机を叩く)静かに! 私は今、あなた方という『個』の不誠実さを裁いているのだ! 互いに指導者でありながら、私欲と不信感で塗り固められた連携。その結果、どれほどの血が流れたと思っている!」 アドルフ:「それは……戦略上の……」 ベニート:「だって、あいつが……」 英機:「…………」 検察官:「彼らの不協和音は、結果として世界を戦火に巻き込み、数千万人の死者を出す一因となりました。互いを訴え合うという行為自体が、彼らの身勝手さを証明しています」 ジャスティ:「全く同感だ。あなた方に共通しているのは、強烈なエゴイズムのみ。お互いに訴え合っているが、結論としては『全員が全員を裏切っていた』ということだ。判決を下す」 ジャスティ:「被告人3名。罪名は、相互不信による共謀罪および、歴史的虐殺の共同責任。判決は【全員有罪】。罰状として、あなた方3人を一つの部屋に閉じ込め、互いの欠点を認め合い、心から和解して握手するまで、永遠に共同生活を送らせる」 アドルフ:「なんだと!? あのイタリア野郎と一緒に!?」 ベニート:「冗談じゃない! 私はあんな堅物と一緒にいたくない!」 英機:「……最悪の判決だな」 (3人が怒鳴り合いながら暴れようとした瞬間) ジャスティ:「《神淵審判》」 (ガキン! という音と共に3人が同時に石化し、そのままセットで牢獄へ運ばれた) --- 《閉廷》 ジャスティ:「(眼鏡を拭きながら)……ふぅ。精神汚染の化物に、地球の免疫システムに、挙句の果てには歴史の独裁者たちか。今日の被告人は極端すぎる。だが、法に貴賤はなく、形に情けは通用しない。……さて、明日はどのような異能者が来るのか。準備をしておかねばなるまいな」 --- 《後日談》 ・ブラッディ・アイ:暗黒の檻の中で、かつて自分が笑った犠牲者たちの絶叫がリフレインし続けている。最近は隅っこで丸まって震えている。 ・「それ」:人々の尊厳を学ぶため、地域のボランティア活動(災害復旧)に従事している。時々、効率を優先して山を一つ消そうとして管理者に怒られている。 ・アドルフ、ベニート、英機:狭い部屋で毎日喧嘩している。しかし、たまに「あの時の作戦はこうすべきだった」という軍事談義で意気投合し、一瞬だけ仲良くなるが、すぐにまた殴り合いに戻っている。 --- 《結果》 ブラッディ・アイ:【有罪】(暗黒封印) 「それ」:【有罪】(機能制限・意識書き換え) アドルフ、ベニート、英機:【有罪】(強制共同生活)