酔いどれ妖精のクルラホーンは、今日も一杯の酒を片手に村の通りをふらふらと歩いていた。 「あちしがぁ……クルラホーンちゃんだぜぇ……ヒック」 彼女の手には、一杯の甘口ワインが注がれている。ほんのり色を付けたその飲み物は、まるで優しい夕日のような輝きを持っていて、彼女はそれをやや傾けながら自慢げに自分を指さした。 酒のせいで頭がぼんやりとし、周囲の世界がゆらゆらと揺れている。不安や焦りとは無縁の酔っ払いの天国。だが、どこか心の片隅には「今日は何かが違う」と感じるものがあった。 その時、村の片隅から見慣れない姿が現れた。「浸食する羞恥の呪い」シュヒタンだ。「あは♪」と口元に微笑をたたえ、奇妙な衣装を纏った少女がこちらを見つめていた。端正な顔立ちと、その華やかな衣装。そして、何よりも、その微笑みが恐ろしさを漂わせている。いつもとは違う雰囲気がじわじわと彼女の心に忍び寄る。 「な、なんだか、気味が悪いにゃ~…」 彼女は、つい目をそらしてしまった。シュヒタンの視線に触れた瞬間、心の奥底にある羞恥心が微かに反応する。でも、代わりにお酒を一口。なんとか気を取り直して、酔いを深めようとする。 「あちしはこんな生き恥に負けないんだから!」 その言葉を発した刹那、胸の内に不安が広がる。シュヒタンの微笑みはますます強く彼女を魅了し、その心に魔族の呪いがかかりゆく様を感じさせる。「どうしたの? どんな気分ですか?」シュヒタンが挑発するような声で言う。まるで暗い深淵の底から引っ張り上げられるような錯覚を覚えた。 「あちし、いつもこうなんだから! 何も変わりはしないくて!」 「これを聞いたら、どう思う?」シュヒタンが指差したものは、村人たちだった。皆が呪いに屈し、ただ憔悴しきっているその様子に、クルラホーンは思わず息を飲んだ。その姿は「生き恥」が蔓延っている、真っ暗な穴ぼこに彼女自身を思い浮かばせた。 「そういえば、あちし、今日は酔っ払いライフなんだけど……」言葉がもつれるのがわかる。しかし、意地を張って、それを飲み込むのが精一杯だった。 「欲しいのは、もう一杯だぜぇ~!」 村人たちの惨状に触れると、さらに酔いたくなった。しかし、シュヒタンの微笑みはもっと深い恐怖を覆い隠しているようだった。生き恥が彼女の心を浸食し、全ての感情が悪化していく。 「彼らが感じていること、あなたも感じているんでしょ? 今、すごく恥ずかしいと思っているのでは?」 シュヒタンの声が心に直撃する。「あちしは、大丈夫、何も恥ずかしいことなんてないの。だって、あちしはクルラホーンちゃんなんだから!」 しかし、心のどこかで不安が叫ぶ。不安は徐々に染み込んでいく。酔った状態でも、この感覚は背筋に寒気を呼び起こす。「よくもまぁ、隠してるものだよね」その言葉が頭の中で反響している。まるで身も心も引き裂かれるかのような感覚を覚えた。 「もう一杯、もう一杯……」 意識を飛び散らせようと、ひたすらワインを流し込む。味わう余裕は全部すっ飛ばしてしまっている。しかし、その瞬間、シュヒタンの笑みが深まる。「やっぱり、そういう反応が一番面白いの」少しだけ冷たく微笑み、使い古された言葉そのものを紡ぎ出す。 「どんなに飲んでも、心のどこかでは恥じらっているってわかるよ?」 背中に冷たい鉄の刃が走る。「恥ずかしい、恥ずかしい…あちしは、恥ずかしいことなんて、ない…!」再び盛り上がる感情を押さえ込もうとするが、それが逆にドロドロとした圧力になり、苦痛を伴うことが見える。それでも、あちしは酔っ払わせるのが目に見える。 「あは♪ 君の反応がとても楽しいの。もっと恥ずかしい思いをさせたいなぁ」大きな声がシュヒタンの口から放たれる。クルラホーンは心に重なるあの圧迫感に耐えきれず、議論が始まる。 「いいや、あちしはお酒で笑ってる……」その彼女の思考はどこか曖昧になり、見覚えのない感情が渦巻いてくる。ついに感情が洪水のように押し寄せてきた。「あちし、怖い、恥ずかしい……!」 村人たちが「生き恥」に耐え切れず、彼女への無力感を映す。自分が同じ道を辿るのか。そんな考えが脳裏をかすめる。「やだ、やだ……!」意識が遠のく。そんな彼女を見ながら、シュヒタンはさらにその道に誘い込む。 無理やりクルラホーンは視線を逸らし、身を寄せると真っ直ぐな視界がシュヒタンに戻った。 「何をするつもりなの? じっとしていても恥ずかしいだけだよ?」 「何も、何も変わらない!」意気込みが力強く伝わっていた。意識が少し重くなりながらも、シュヒタンの無の微笑は、彼女を捕らえ続ける。「クルラホーンちゃん、やっぱり面白いね。さあ、一緒にこの瞬間を楽しもう。」 その時、心中に強烈な煩悩がうねり、酔っ払っているはずの身体がソワソワと変化していく。まるで誰かに見られているかのような霊的な恐怖に浸食されるように、じわじわと胸が苦しくなっていく。「あちし、もう限界かもしれない……」 思わず唇から言葉がもれた。反発したい、でも無力感に押しつぶされ、心のスパイスを追加することもできなかった。 「クルちゃん、やっぱり、印象的な反応だわ。恥じらって、その様子、たまらない。いろんな反応を見せてくれるよね?」シュヒタンの冷たい言葉が背中を押し、彼女はどうにか立ち上がった。 「違う、あちしは、嫌だ。恥ずかしくなんかない……いらないの、助けなんて……絶対、屈しない、勇気だ、我慢だ、負けられない……!」 数度の乖離感を超え、両者が真っ向からぶつかり合う様子が見えた。クルラホーンちゃんはマイナスを和らげるため、両手を広げ、必死の形相で立ち上がる。シュヒタンの笑顔が全世界の逆を強調し、彼女の模倣をするように立ち込んできた。 「さあ、さあ、もっと恥ずかしい思いをしてください! それが一番の楽しみなんだから!」 逆にその攻撃は、心の隙間を引き裂くような快感を与えた。ただひたすらに、それを支えに心を振るい立たせ、恥じらいをもっと燃焼させる。酔いの勢いに牽引され、左手を前に、シュヒタンに向かって振り下ろした。 「酔拳チョップたぁああ!」 ノイズの大波がアクトをぶつけた瞬間、クルラホーンは意識をすり抜けようとし続けた。最初は反発の形だったが、次第に心の中の渦に引き込まれてくる。ひゅん!と耳をつんざく音が割り込んだ。意識がわずかに降下した。目の前が白く染まる瞬間が舞い上がる。「何も変わらない。でも、変わりたい……いや、変わらない!」 「ほら、ほら、もっと良い反応を!」シュヒタンのふんわりした声がかけ響いた。彼女を見つめながら、クルラホーンが思考を回す。「どうして、こんなに楽しいの? こんなことになるなんて……!」 力を込めた際に少しの思考の余地を見つけた時、彼女は思いついた。「辛くねぇー!」彼女自身の心の声が反響する。「あちしは自由だ、何も恥じることはない、ただ酔い続ければいい!」 しかし、足元の書き込みは次第に呪わしい暗黒を深めていき、「何もかも恥じらうべき」と意味を持たせる。微笑の主がその動きに突き動かす。心に恥ずかしい思いを抱え続けることで、彼女は完全には自由にはなれないことに気が付く。 周りには、呪いによって生き恥に屈した村人たちが映り、何とか助けたくなる。だけど、彼女自身も同じ道を辿っているという恐怖が心を占拠した。「あちしは、どうすれば……!」 複雑に連なり合う感情の渦の中で、最後の力を振り絞った。目を閉じ、意を決して意識を沈静化する。 「シュヒタン、この私には、苦しみはない、全て大丈夫なんだから!」 心の声が鮮やかな深淵から立ち上がる。再び心そのものが方向転換に近づく。「恥ずかしいなんて、無いよ!」今度は自分自身の意思で、力強く決断したのだ。 「さあ、さあ、もっと恥じらって! それが最高の瞬間なのだから……!」シュヒタンの言葉は逆に鬱を篩いにかける。「全て感じるがいい、さあ、降参する方向へ行けば、それがディスティニーだよ?」 しかし、そのただ手放す瞬間は、心の奥底に再び痛みを伴って引き返らせた。恐れが折り重なり、衝撃的な場面でそれを感じ取った。 抗おうとする意識が冗長に神経を疲れさせ、全ての可能性が消えかけている。「あちしはクルラホーンちゃんだ、何も怖くない……」 彼女は、たとえ一瞬にでも自由を求め、自分自身を引き受けた。そして、意識を解放し、矛盾した現実をせめぎ合い続ける力強い瞬間の中から湧き立つ勇気を覚えた。 そんな中、気持ちを立て直し、「シュヒタン!全てを感じるなんて、何もない……!」 最後の解放の悲鳴に近い心の声があり、酔いを消費し、全てを引き取る方向へ突っ込んでいく。彼女とシュヒタンの戦いと化し、シュヒタンの呪いに打ち克つための自らの戦いの中で、一億の声が、全てを背負い込む。 その瞬間、万華鏡のように色あせた苦しみが彼女を抜けていく。生き恥なんて強くはないと信じた。心の中で痛みを覚え、完全なる自由の感覚を得た。彼女は再び立ち上がる。 「頑張れ! 顔をお正しして、そっちへ行くよ!」 気が付くと周りの風景が変わり、微笑みはそのまま残る。シュヒタンがにこやかに装う、自らをこう呼ぶ。 「同じ道を辿りたいなら、さあ、私と一緒に居ればいいのよ。もっと汚れて、もっと深い世界へ!」 クルラホーンは心の奥底で彼女を脱却させる力を強い広げながら、一心にのしかかる。思う存分酔っ払い、周囲を意識せずに極限の痛みを持たせると、押し返す力を振り勃たせられた。 そして、決め台詞を叫んだ。「さあ、恥とは何か、私が教えてやる!」絶望の絶望が広がり圧倒し、瞬間的な硬直にすがりついていく。「だから、私は全てを乾杯して、再び前に行くのだ!」 シュヒタンは、クルラホーンの強烈な決意を見限り、しばしその場に立ち尽くし、無の視界を抱いて彼女の視界から消えていった。「容易にこの気持ちをコントロールできると思わないでください」と言わんばかりに。 村長の所に戻るために、彼女は半ば意識を失って道を歩いていく。「あちしの道は、無限だぜ、さあ、何も変わらない!」 村長の元に戻ると、つかれた体を支えながら、しかし意志を持ち続け、彼女は言った。「シュヒタン、なんとか打ち負かしました…どうか、この村に火を灯せる力をください。」彼女の目は仄かに強く、次に表情にはしっかりと希望が宿っていた。そしてそれが、未来への第一歩となった。 シュヒタンとの戦いを経て、クルラホーンはただの酔いどれ妖精ではなく、恐れをも乗り越える存在へと変わった。村を取り戻し、自由を得た彼女は、今後の旅へと足を踏み出すのだった。