恒星熊のノヴァくまは、温泉街でのんびりとした日常を送っていた。しかし、そんな彼に突如訪れた危機。それは、前触れもなく現れた幼女が手に持つ「相手誕生以前の因果に干渉し強制的に存在消去するボタン」だった。彼女は無邪気にそのボタンを握りしめ、まるでその力を使うことに何の疑念も持っていないかのように見えた。 「ボクの出番だ!」 ノヴァくまは頑丈な体をさらに温め、いつでも変身できる準備を整えた。直訳すれば、ここで本気を出せば地球が危険に晒されるのだ。しかし、幼女を守るため、彼はそのリスクを承知で行動することにした。 「そのボタン、絶対に押させないぞ!」 彼は幼女に近づき、やんわりと微笑みかけながらも内心は焦っていた。幼女はその笑顔に喜び、さらにボタンを強く握りしめていた。ノヴァくまは飛び上がり、空中から幼女の視線を遮り、彼女の完全な注意を引く。 「あはは、ノヴァくまさん、なんで空にいるの?」 幼女が軽やかな声で尋ねる。彼女は全くの無邪気さで、その質問をする。ノヴァくまは思わずほっこりとしたが、すぐに心を引き締め、次の行動に出た。 「ちょっとお話ししよう!」 その瞬間、ノヴァくまは意を決して地面に着地し、幼女の目の前に膝をつく。そのまま優しく語りかける。彼は多くの子供たちに愛されていると同時に、自分の存在がどれほど重要かを強調する必要があった。 「君も大事な存在なんだ。でも、そのボタンはとても危険で…」 すると幼女は笑顔を見せた。「危険って…?それって面白そうだね!お話だけじゃなく、ボタンを押してみたいな!」 ノヴァくまの心臓が一瞬ギュッと絞まった。このままでは本当に押されてしまう。 「だめだ!それじゃ、こうしよう!」 彼は急いで考えを巡らせ、思いついた。温泉街で見せていた彼の特技、演歌の歌唱。ノヴァくまはゆっくりと立ち上がり、幼女に分かりやすい歌を歌い始めた。彼の宇宙的な音楽の響きは、周囲の人々をも惹きつける。 「君の笑顔が大好きなんだ。それを壊さないように、このボタンは返してほしい。」 音楽の流れる中、幼女は楽しんでいたが、その表情に少しずつ心の揺れが見え始める。「えーっと…、ノヴァくまさんの歌、すごく好き。でも…」 ここでノヴァくまは全力で笑顔を作り、歌い続けた。彼のアプローチは徐々に幼女の心の内に響き始めたようだ。 「どうしても押したいなら、ノヴァくまが負けたら押してもいいよ!」 ノヴァくまはそれを聞いた瞬間、意識が変わった。今の自分に勝って、押させない。彼は急いで自分のパワーを抑えつつ、幼女を守るためにスピードを上げた。「行くぞ!」 「ノヴァくま強いから、負けないよ!」 それでも、幼女の持つボタンの力が彼を圧倒することはなかった。空を舞い、華麗に躱し、挙句の果てにはボタンへの手が届くモーションを無に帰する。しばしの間、お互いにその攻防が続く。 しかし、ノヴァくまが最後に、彼女が持つボタンへと手を伸ばそうとしたその瞬間、幼女の表情が一瞬わななき、ボタンに抱えられる腕が止まった。 「それでも、やっぱり…押さないでいいのかな?」 ノヴァくまがその瞬間を捉えた。心が通じ合ったのだと確信し、素早くボタンを取り上げた。彼は彼女に優しく頭を撫でながら、微笑みかけた。 「そうだよ。君は笑っている方が素晴らしい!そのままでいいんだ!」 幼女は、ぱっと笑顔を見せ、そのカードのような高く青空に飛び立ったノヴァくまの後を追って踊るように笑い声をあげた。 その後、ボタン幼女とノヴァくまは、笑顔のまみれながらおやつを食べに行くことになった。 ノヴァくまはボタン幼女を守り切り、彼女と心温まる時間を過ごすことによって、一つの戦いを終えたのだった。