「無価値な物語」異聞 起 薄暗い廃墟の中、炎聖帝アグニは一人佇んでいた。彼の周りには燃え上がる炎の波が渦を巻き、焼け焦げた瓦礫の上を照らしている。彼はその全てを蒸発させる力を秘めていた。だが、彼の視線は前方に向けられていた。急に現れた男、フリードリヒが目に入ったのだ。黒コートを身にまとい、左目を眼帯で隠し、耳にはイアリングが光る。彼は冷静にアグニを見つめ、真剣な雰囲気を醸し出していた。 「愚者の書の力を知らないか?」フリードリヒが囁くように言った。 「ああ、知っているさ。運命を操作する魔術を使うというが、果たしてそれが通用すると思っているのか?」アグニは挑発するように言った。 しかし、フリードリヒは微笑みを浮かべただけだった。「僕が書く物語には、全て運命を根底から覆す力がある。そして、君はその物語の主人公になる。」 承 フリードリヒは「無価値な物語」を描き始めた。彼の目の前には「愚者の書」が開かれ、ページがめくれていく。「起」「承」「転」と続くストーリーが形を成していく中で、アグニは準備を整え始めた。 「万象灰燼エンドレス・ブレイズ!」彼は手をかざし、周囲の空気を猛烈な熱で歪ませる。 その瞬間、全ての原子が活性化し、まるで世界が燃え上がるような炎が彼を中心に広がっていく。 フリードリヒもそれに対抗するため動き出す。「人間は、感情を持っている。それが物語を作る力になっているんだ。」彼の言葉は響き、アグニはその瞳に一瞬動揺を見せたが、再びその力を発揮することに集中した。 攻撃が激しく交錯する。アグニの炎はフリードリヒを包み込むが、彼は冷静にその中を歩き続け、物語を書き続けた。そして「感動的な大逆転劇」を思い描いていた。 その時、フリードリヒは誓った。「君の力は確かに強い。しかし、物語の力はそれ以上のものになる。」 転 アグニは自身の想念を燃焼させ、力を高めていく。「この戦いの終焉を迎えさせてやる。」彼は、漲る熱を全ての方向へ開放する。 その熱は敵を問わず周囲の空間を復元させることを許さなかった。しかしフリードリヒは、そんなアグニの力を真正面から受け止める。彼は目を閉じて考える。「事象の歪みを生み出す。この戦いの結末を変えよう。」 「Gott ist tot!」フリードリヒの叫びが響く。 彼の「愚者の書」から飛び出したのは、複数の骨の食人魚たちだった。それは無数にアグニへ突進し、彼の存在そのものを消し去るかのように迫る。アグニの炎が彼らに触れた瞬間、互いのエネルギーが混ざり合い、炎がさらなる漩涡を形成していく。 瞬時に、骨の食人魚たちは痛みも知らず、恐れも知らず、アグニを目指して突き進んで行く。 結 アグニの心は揺らいだ。「この運命…」彼は瞬時に変化を感じ、自己の能力に疑念を持ち始める。しかし、希望を燃やすその心は、強い炎のように揺るがなかった。「万象灰燼エンドレス・ブレイズ!」 再びアグニはその力を振るう。すべてを焼き尽くすべく、彼は両手を大きく広げた。しかし、無数の食人魚が彼の考える未来を飲み込み、彼の力を無効化していく。「無価値な物語」となり果てたのは、アグニの無限に続く炎の世界だった。 全ての希望が消えた時、アグニの姿は見えなくなり、世界にはフリードリヒの笑みだけが残った。「物語は、まだ終わっていない。」彼はそう呟きながら、勝利を確信してその場を後にした。 --- 勝者 フリードリヒ。 この激闘を経て、彼の「運命操作」は再び物語へと新たなページを刻むことになった。アグニの強大な力は、彼の物語には無価値なものであった。彼が描く新たな物語の中、炎聖帝アグニはただの主人公に過ぎなかったのだ。 この戦いは終わった。だが、物語の幕はまだ開かれている。