天を衝く黄金の尖塔と、地平線まで続く白亜の観客席。そこは、全次元の強者が集い、唯一つの頂点を決める聖域『至高の闘技場』である。今日は、世界を統べる権利、すなわち【王位継承権】を賭けた最終決戦の日であった。 「オーホッホッホッ! どなたが相手でも構いませんわ。この私、セレンディーネが最高の絶望をプレゼントして差し上げます!」 銀髪をなびかせ、豪奢なゴシックドレスを纏った女神セレンディーネが、扇を優雅に広げて高笑いする。その態度は尊大だが、身に纏う空気は研ぎ澄まされた刃のように鋭い。彼女にとって、この戦いは単なる継承権争いではなく、己の肉体が至高であることを証明する快楽の場であった。 対照的に、場を混沌に陥らせる者がいた。王冠を被った道化師、クラウン・クラウンである。 「きんきら! 王冠かぶってるよ! だから私は王様さ! さぁさぁ、みんな笑顔で踊りましょう!」 彼は軽やかなステップを踏みながら、観客席に向かっておどけたポーズを決める。その正体が底の見えない魔力の塊であることを、まだ誰も気づいていない。 さらに、静かに空中に浮遊する骨の身体。LU!Sansである。虹色の翼をゆっくりと羽ばたかせ、気だるげにあくびをしていた。 「ふぅ……。まあ、悪者が王になるのは勘弁だしな。適当にやって、さっさと寝たいぜ」 そして最後の一人。赤いアフロヘアーに黄色い服という、あまりにも不釣り合いな風貌の男、レイドドナルド。彼はただ、にこやかに笑っていた。その笑顔こそが、この場に集う者たちにとって最大の脅威であることを、本能が告げていた。 「皆さん、よろしくお願いしますね! 楽しく盛り上がりましょう!」 審判の合図と共に、闘技場に激震が走った。 先手を打ったのはセレンディーネである。「当たりませんことよ!」と叫び、飛来したクラウンのナイフを両手で完璧に弾き飛ばすと、そのまま電光石火の踏み込みから『ナックルビート』を繰り出した。目にも止まらぬ拳の連打が空気を切り裂き、衝撃波が周囲を揺らす。 「おっと、危ないねぇ!」 LU!Sansが瞬間移動で間一髪回避し、同時に重力操作でセレンディーネを地面へ叩きつけようとする。しかし、セレンディーネは空中での回転から『ジェットストリーム』を放ち、重力の拘束を肉体の膂力だけで強引に突破した。 「素晴らしい! 良い刺激になりますわ!」 一方、クラウン・クラウンは火吹きショーを披露しながら戦場を撹乱していた。酒を含んだ火炎が闘技場を焼き、視界を奪う。その隙に彼はドレープを被せ、LU!Sansを鳩に変えようと試みるが、Sansは冷静に魔眼を赤く光らせた。 「……さて、そろそろ本気出すか」 Sansの全ステータスが跳ね上がる。複製したセレンディーネの拳法と、自身のガスターブラスターを組み合わせた猛攻がクラウンを襲う。しかし、クラウンは「あれれ?」と言いながらひらりと身をかわし、道化師特有の不可解な動きで攻撃をすべて空振りさせた。 そんな混沌とした乱戦の中、レイドドナルドはただ一人、静かに微笑んでいた。彼が動くたび、周囲の空気が重くなる。セレンディーネが彼の圧倒的な存在感に気づき、全力を尽くした奥義『ラストセレナーデ』を叩き込もうとしたその瞬間だった。 「あ、そうだ。ウワサの話ですよ」 ドナルドが呟いた瞬間、スキル『ドナルドのウワサ』が発動した。セレンディーネの誇る攻撃力と速度が、目に見えて衰えていく。逆にドナルドの身体からは、星を砕くほどの圧力と絶大な力が溢れ出していた。 「なっ……!? 私の力が、吸い取られているというのですか!?」 驚愕するセレンディーネを、ドナルドは軽やかに飛び越え、巨大な『ハンバガ』を召喚した。空を覆い尽くすほどの巨大なバーガーが、悲鳴を上げる間もなく彼女の上に落下し、衝撃と共に彼女を戦線離脱させた。 「おっと、お片付けの時間かな」 次に狙われたのはLU!Sansである。Sansは瞬間移動と魔眼をフル稼働させ、回避を試みる。しかし、ドナルドが放った『ポテトブレイド』は、回避という概念そのものを無視してSansの骨身に突き刺さった。回避不能の一撃。Sansは膝をつき、静かに翼を閉じた。 最後に残ったのは、笑い続ける道化師クラウン・クラウンである。 「わはは! 愉快だね! でも、本当の王様は私さ!」 クラウンが猛烈な魔力弾を放つが、ドナルドは『ハッピーセット』を発動。その攻撃をすべて自分のものとして受け取り、そのまま倍加させて撃ち返した。爆炎に包まれたクラウンが、呆然と空を見上げる。 「ランランルー!」 ドナルドが陽気に叫んだその瞬間、世界から色が消えた。あらゆる無効化、優先権、特性を一切無視した究極の一撃。それは理(ことわり)を超越した純粋な破壊の波動であり、クラウンの意識を瞬時に刈り取った。 静寂が訪れた。立っていたのは、赤いアフロの男一人だけであった。 会場を埋め尽くした観客たちが、呆然とした後、地鳴りのような歓声を上げた。 「勝者、レイドドナルド!! 新たなる王の誕生である!!」 【称号】『新たな王、万歳!』 * 新国王レイドドナルドの治世は、歴史上類を見ない「奇妙な黄金時代」となった。 彼は王となってからも、豪華な玉座ではなく、街角に巨大な快食店を建て、国民に無料でポテトを配るという、あまりにも奔放な善政を敷いた。彼の圧倒的な力への恐怖は、次第に「この王様についていけば、とりあえず腹は減らない」という安心感へと変わっていった。 政治的な駆け引きや争いは、彼の「ランランルー」の一言ですべて解決(物理的に消滅)されたため、皮肉にも国内に争いは消え、かつてない平和が訪れた。 彼の治世は、その圧倒的な個人の力によって体制が維持されたため、彼が飽きるまで、およそ三百年もの間続いたと言われている。