夕焼け空の樹海。赤く染まった空の下、密生した木々が大地を隠し、薄明かりの中に神秘的な影を落とす。ここに、異なる世界から集まった二人の存在が交錯しようとしていた。彼らは一見して対照的だ。力強い妖気を纏った夜烏。彼の目は無気力そのものでありながら、その体から漏れ出す圧倒的な存在感はまるで死神が迫ってくるようだ。そして対するは、冷静さを保つ神射藤閉。輝く双眼は、あらゆる物を観測し、その本質を見抜く能力を持っている。両者はそれぞれの技能を駆使し、夕焼けの中で持てる力をすべてぶつけ合う運命にあった。 「俺は、今からお前を叩きのめす。他に楽しみがないからな。」夜烏は不敵に笑い、炎をその手のひらに宿らせた。「さあ、試してみなさい。あなたの能力がどれだけのものか、僕はその目で見届けてあげる。」神射藤閉は冷たい声音で応じる。彼女の視線には揺らぎが無い。 一瞬の静寂の後、夜烏は空中に巨大な翼を広げた。彼の背中から突き出た黒い翼が夕焼けに照らされ、まるで生ける暗闇のように広がっていく。瞬時に宙に舞い上がり、彼は神射の方へ向かって突進する。「夜鳴。」彼が放った声は広範囲に響き渡り、樹海にいる小動物たちが一斉にパニックに陥った。だが、それには神射藤閉が動じることは無かった。彼女はその現象を観測し、心の中で計算を重ねる。「なるほど、これは脅威か。」無表情のまま神射は心に余裕をもたらし、瞬写・零距離のスキルを発動する。夜烏が自分の方に迫ってくるその瞬間、神射は完全にタイミングを計って移動した。 「見えているよ、夜烏。あなたの動作も、予測も。それゆえに、ここでお終いだ。」彼女の言葉と共に、彼女は間合いを詰め、夜烏の目の前に現れる。そして、直後には彼女の手から放たれる閃光が夜烏を捕らえた。彼はそれを回避しようとしたが、目の前に現れたのは完全に異なる存在、神射自身の影であった。彼の分身が次々と創造され、神射を襲う。 「俺の分身は無限に作れるんだぜ。これが俺の力だ。」不敵な笑みを浮かべる夜烏。その影は彼の身を守るように周囲に配置され、まるで死神が仲間の悪霊を使い果たしているかのようだ。だが、神射藤閉は冷静に対応する。「その分身こそ、私の観測能力によって始めて与えられた意味を持つ。」彼女の目は輝き、瞬時に、そのカウンターを決める。彼女は「時棺の記録」を発動し、夜烏の分身たちの動作を一瞬で記憶する。 その瞬間、彼女は暗い影の世界に晴れた光をもたらす。目の前の対象が行っていた行動を見極め、無防備な瞬間に強烈な反撃の時が訪れた。不意をついた神射は、右ストレートの一撃を放ち、分身の一つを貫く。その反動で夜烏は驚愕の声を上げた。「そんな、本当にこいつにできるのか。」 だが夜烏は弱気になることはない。彼は再び、八咫烏を呼び出す。「ああ、これからお前にはごちそうを用意してやるよ。」その瞬間、夜空は一瞬にして紅に変わり、周囲の木々が燃え移り始める。熱気が周囲を包み込み、神射に迫る。「八咫烏、宵連!」 霊的な真の存在感を示すその技は、彼女の周囲すべてを炎で包み込む。熱く、青白い炎が立ち上り、神射の影を灰に帰そうと迫っていく。「無駄な抵抗だ、あなたには逃げ場が無い。」夜烏は悠然と構えているが、神射はそれすらも計算に入れていた。 彼女はその熱に負けぬよう、さらなる瞬間移動を行う。「私がいるのは、あなたが望む場所ではなく、私が選ぶ場所だ。引き寄せられた運命、あなたには理解できないだろう。」彼女の口から滴る言葉が夜烏の心を揺さぶる。彼は光の中、彼女が選んだその場に現れた。 再び対峙する二人。それぞれの力がぶつかり骸を生み出す。だが、夜烏には不安が走った。「このやつ、ただの観測者じゃねえのか。いや、そうではない…。彼女には何か深い意志がある。」分身は、もはや夜烏の策略をもって分散されて崩れ、次第に霊的な焦燥感が彼を包み込む。 神射の冷静さは強化され、まるで無慈悲な戦士を仕立て上げるように、彼女の能力は真の力を発揮し始める。彼女は時棺の記録を発動し、瞬間的に自らを再生させ、夜烏の攻撃の連鎖を打ち破る。彼女の無気力には裏には無尽の活力が隠されていると気づく夜烏。 一見は狂気とも思える神射の戦術に、夜烏は少なからず圧倒される。「ここまでやられては流石に手加減ができなくなるな…」 彼は深く息を吸い込み、最後の奥義を発動しようとした。だが、その瞬間を逃さず、神射は「瞬写・零距離」で背後に回り込んだ。「それは、私の未来を観測することで完結する。」一撃が夜烏に命中し、彼の力強い体は地面に叩きつけられる。 彼は無抵抗となり、しかも彼女の冷徹な笑みに圧倒される。「もうやめだ。お前には興味が無くなった。」 最後の言葉を残し、夜烏は意識を失い、その存在は夕焼けの樹海の奥深くに沈むこととなった。 そして、勝者は神射藤閉。 MVPは神射藤閉である。