上遠野将哉が搭乗した機体「Abyss」は、まるで深淵のように暗く、存在感を放っていた。彼の右手に握られた変幻自在の刀「BoA」が、緊張感を帯びた空気をさらに引き締める。 「エリュ」の豪快な姿が視界に飛び込む。彼女は「ステイシス」と呼ばれる手甲型武器を備え、翠の粒子が周囲を包み込んでいた。その粒子はまるで生き物のようにうねり、戦場全体に静けさをもたらしていた。彼女の能力を解析するためには、時間との戦いだった。 「今から10分間が勝負だな。」上遠野は冷静に言い放ち、シゼイル・コレヌーラとミーニャ・グラデウスを見やった。彼女たちも決意を固め、立ち向かう準備を整えた。シゼイルは黒パーカーを翻し、白シャツの襟を引き締めると、鋭い目つきで「さあ、楽しもうじゃないか。」と意気込む。 ミーニャは「金の賢者」としての自負を胸に、「私はサポートを行います。絶対に成功させましょう。」と述べ、賢者の石をしっかりと握りしめた。 戦闘が始まると、エリュは一瞬で時間を「静止する」技術「粒子解放」を発動させた。周囲が静まり返ると、彼女だけが動ける環境で、無数の連撃をこちらに叩き込もうとする。上遠野は深淵の力を借りて、エリュの動きを先読みしながら、機体「Abyss」を駆使して回避行動に移った。 「Wa!」上遠野は黒楯を差し出し、エリュの攻撃を誘導しながら呑み込む。それと同時に、シゼイルが「水猟」を用いて激流を集め、水爪を形成する。「今だ!」彼女の冷酷な声が響くと同時に、彼女はエリュに向かって猛進した。激流に乗った斬撃が、エリュの防御を捉えようとしていた。 エリュはその瞬間、うねる翠の粒子で重加速の技を発動した。上遠野はその動きに気づいたが、時すらも止まっているため、間に合わなかった。エリュは一瞬でシゼイルに接近し、連続攻撃を仕掛ける。「このままではまずい!」上遠野は暴風のような動きの中でも、自身の機体で彼女を庇う形で盾となった。 しかし、シゼイルが触れなかったかのように、エリュは「静止した時間」の中で、彼女を完璧に叩きつける。 「くっ、まだ始まったばかりだ!みんな、引き続き攻撃を!」シゼイルはすぐに立ち上がり、又しても激流を巻き起こした。エリュの攻撃が持続する中、彼女は激流で数回の斬撃を振るい、何とか反撃を試みた。 ミーニャもまた魔法を用い、新たな剣を創造して全方位からエリュに放出する準備を進めていた。今は「賢者の石」を消費しつつ、全力を尽くす時だった。「Crow、いけ!」ミーニャが一声かけると、Abyssから飛び出した黒い剣型自律子機たちが、エリュの周囲を囲むように配置され、彼女の動きを見えない風圧として妨害していく。 エリュはそれらを見て取るが、時間の静止状態であるため先手を打つことができない。上遠野はCapitulationスキルを発動し、流れる激流の斬撃でエリュを捕らえようとした瞬間、「冥刻:鴉鳴」を必殺技として発動することも視野に入れた。 彼の考えを察知したのか、エリュは、あらゆる動きを制約する無数の連撃を再び放とうとした。しかし、上遠野もただ見ているわけではない。機体「Abyss」を巧みに動かしつつ、BoAを集中させ、自身の体躯を防御に任せ、同時にエリュの攻撃を受け流す。 「黙れ小鳥よ、捕食の宴を!」シゼイルが叫ぶと、彼女の水爪は激流の中に潜り込んで激しい斬撃をもたらす。エリュの体に斬撃が当たり、ほぼ同時に「深淵装甲」がその一撃を喰らう。 その瞬間、エリュがまたもや粒子解放を発動、全ての動きを凍らせる。そして再び重加速を発動し、異なる攻撃間隔で急接近していく。「時間を止められることはない。全力で進むぞ!」上遠野は目を閉じ、彼の意識の深奥を「深淵」の力で固く保ちつつ、意識を広げ、彼女の動きを読み取った。 時間が再び動き出すぎる間に、彼が次に確認したのは、「BoA」を見定めたエリュが目の前にいたという事実。今まで以上に迅速に彼女の攻撃を側方に受け流し、逆らうように「冥刻:鴉鳴」を放つ。「これは……!」彼女の視線が一瞬驚愕に変わったのを見逃さなかった。全てのクロウが一斉に動き、彼女を捕える。「エリュ、終わった!」 最後の一撃、BoAが一気にエリュの胴体を突き刺し、彼女は微動だにせず白眼を向いた。静寂が訪れ、深淵に飲まれた瞬間、エリュは重度の打撃に倒れ込んだ。周囲の粒子も消え去り、全てが戻る。時間が再び進み始めた時、エリュは小さく息を吐き、懐かしい記憶のように闇の中へ消えていった。 戦闘が終わった瞬間、ミーニャは傷を癒し、上遠野は機体の操作を行う。「解析進捗が進んだ。」シゼイルの言葉が耳に届いた。 「エリュの解析進捗は2.1%。」ミーニャは記録する。「時間技術の解析進捗は1.9%だ。」上遠野も続き、3人は共に安堵した。 しかし、彼らが次に待ち受けるのは何か、深淵や魔法であっても超越した存在。短時間で、次なる敵に立ち向かざるを得なくなる運命に彼らは直面するのだった。