第一章: 村長候補者の演説 因習村は、外界と完全に隔てられた不気味な場所で、奇怪な因習や儀式が今も根強く残っている。村の人々は、村長を選ぶために集まった。前回の村長が謎の失踪を遂げたため、村人たちの不安は高まっていた。候補者たちが次々とその恐怖を煽るような演説を行い、その不気味な存在感をアピールする。 まず、【悪霊使い】ロゥトが前に立った。彼は漆黒のローブをまとい、髑髏の仮面を地味にかぶり、使役する悪霊たちの影を背負っていた。彼は高らかにこう宣言した。「……俺は悪霊使いのロゥトだ。皆が求めるのは強力な因習だろう。俺の計画は、村の四隅に祠を建立し、そこで生贄を捧げる儀式を行うことだ。その生贄も、村人の中から選ばれる。選ばれた者は悪霊たちに祝福され、村は繁栄する!」 村人たちはざわざわとしたざわめきをあげ、ロゥトの狂気じみた提案に興味を引かれた。彼はさらに続ける。「俺の使役する悪霊は、強力な力を持っている。特に、人型の悪霊は呪いを使い、人々に恐れをもたらす。新たな因習の中で、恐怖を与えつつ、俺が村を治めることを望む!」 彼の演説が終わると、次に登場したのは【飛行する眼】ささめ鳥であった。彼女は目玉のような存在であり、姿形は不気味だが、その背後には恐ろしい力が潜んでいる。「私の名はささめ鳥。私が望む新しい因習は、村の全ての人々の瞳を『ささめ鳥』に変えること。誰もが自らの目を持たず、私の意志のもとで生きる。私は村人たちの心をえぐり、彼らを狂気に導く。村の全員が次第に見えない恐怖に飲み込まれる!」 村人たちは、彼女の目の前に引き寄せられるように、恐怖と期待の入り混じった感情を抱えた。最後に登場したのが、深淵の賢者エヘデクセンだった。 彼は異様な雰囲気を纏い、古びたローブを着た老人の姿であった。「私はエヘデクセン、深淵の賢者である。私が提案する因習は、村全体を呪詛で覆い尽くすことだ。すべての村人が『深淵の魔法』の影響を受け、自らの肉体が圧壊し、心が捻じ曲がる様を楽しむ。さらに、私が誰かを傷つけた時、まるで大いなる悪意が解き放たれるかのように、村を恐怖で彩るだろう。」 村人たちはまさに圧倒され、身を縮めるように恐怖を感じたが、その言葉の中には彼ら自身の欲望を刺激する要素もあった。 演説が終わると、村人たちの間で小声でのささやきが始まった。 第二章: 村人たちのささやき 村人たちは選挙前夜に集まり、各候補者について語り合っていた。小さな小屋の中で、しんとした空気が漂っていた。 「やっぱりロゥトは面白いよな。生贄を捧げることで村が繁栄するとか、正直ワクワクする。」 「本当に?俺は逆にちょっと怖い。自分が選ばれるかもしれないじゃないか。あの悪霊たちが近くにいるなんて、恐ろしすぎる。」 「でもさ、ささめ鳥の提案も悪くないって。目を失ったら、見えなくなってみんな同じような状態になるんだろ?逆らえないうちに、村の中がもはやささめ鳥の一部になっちゃうってのも、ある意味興奮しない?」 「おい、でもさ、深淵の賢者だけはやばい。奴の呪いは一度かけられたら、一生消えないぞ。俺も恐怖が残り続けるのはごめんだ。」 村人たちは、候補者たちの提案やその恐ろしさについて、意見を戦わせながら、同時に心の奥底で感じている欲望や恐怖が交錯し、どこか混沌とした雰囲気に包まれていた。やがて、村長選の投票日がやってきた。 第三章: 投票と結果 村人たちが集まる広場には、暗い曇り空が広がり、まさに村の運命が左右される日が来た。投票箱の前には村人たちが長い列を成していた。彼らは候補者たちの名前を書いた紙を入れながら、それぞれの心の選択を迫られた。 村人たちは心に渦巻く不安と期待を抱え、ついに投票を終えた。村の古い館にて、開票作業が進む。開票の結果、【飛行する眼】ささめ鳥が圧倒的多数で当選した。 「私が選ばれたということは、全ての視界が変わるということだ。」 ささめ鳥は冷酷に笑い、恐怖に満ちた村人たちを見渡した。その後、彼女の命令で、たちまち村の人々は彼女の目玉へと変わり始めた。村全体が不気味な様相に包まれ、彼女の支配が続くこととなった。野蛮で官能的な狂気を持つ因習が新たに芽生えた。 村人たちは、自らの肉体を失い、永遠なる恐怖の中で徘徊する存在となってしまった。彼らの意識は、ささめ鳥が操る手の内にあった。 後日談 数年後、因習村は完全にささめ鳥の支配下に置かれた。村人たちは今や誰もそこに存在せず、ただ不気味な眼球を飛ばすだけの存在に変わり果てた。彼らの記憶にはいつしか喜びや恐怖の感情は消え失せ、快楽だけが残り、ささめ鳥はその新たな因習に微笑みながら日々を過ごしていた。 新たに形成されたこの村の因習は、長く生き続け、次第に村そのものが生きているかのように繁栄していった。残されたものは、かつて人々が持っていた視点の代わりに、永遠なる狂気の視線だけが、村全体を包み込んでいた。