無彩色で無機質な風景が目の前に広がる。靄がかかった花畑には、色も匂いもない花たちが規則的に並んでいる。どこか穏やかな印象を与える一方、心の奥に潜む不安が静かに忍び寄る。 草の間から微かに聞こえる未知の音、その音は不安と安心を同時に呼び起こす。無機質な空気が肌を撫で、背後に感じる気配は絶え間なく変化し、まるで誰かが自分を見ているかのようだ。ただ静かに、そして不穏に進むことを強いられている。 その瞬間、黒い羽織をまとう高身長の男性がその場に現れる。彼の名は死神。赤く怪しげに光る大鎌を携え、異常な威圧感に包まれている。赤眼から放たれる視線は、周囲の者たちに恐怖を植え付ける。不気味な笑みを浮かべながら、彼は花畑を見渡す。彼が持つことの意味を深く考える者は、すでにその影に飲まれ、暗闇へと絶望的に沈み込んでいる。 同じくして、狐の姿を持つ美しい女性が姿を現す。彼女の名は狐姫。天使の翼が背に宿り、金装飾の白羽織が際立つ姿は神々しさを漂わせる。しかし、その存在は奇妙な緊張感を周囲に与えている。視線を合わせることもままならない彼女の存在は、まるでこの空間そのものを支配するかのように感じられる。 狐姫の目が光り、周囲が静まり返る。彼女の動作を読み取ることは叶わず、周りの者たちはただ立ち尽くす。ただならぬ力に引き寄せられるように、彼女の笑顔に隠された恐怖を知る者は少ない。 風が吹き、靄が揺れるたびに花畑がざわつく。そのささやき声は、異様な恵みのようでありながらも、心の奥底にいる悪魔の囁きのように響く。彼らはこの異様な場所に自らを縛られ、逃げ場を失いながらも、抗いがたい引力に惹かれている。 時折聞こえる未知の音が彼らの意識を侵食する。恐怖と渇望、焦燥は交錯し、終わりのない眺めの中で彼らを襲う。「逃れられない」と感じる瞬間も、同時に「安心したい」と思う心が交差する。 もうすでに何もかもが終わりを迎えているかのようだ。この無彩色の花畑で、彼らはそれぞれが自らの運命を受け入れ、静かに全てを味わうことしかできない。何処かにある恐怖、心の中に沈む安堵感。微妙なバランスの上に立たされ、深遠に沈んでいく。 黒い羽織をまとう死神の周りには、彼の存在が放つ濃厚な暗黒が圧倒的な重みを持って浸透し、狐姫の存在はその力を倍増させる。彼らの周りに漂う空気はどんどん淀み、現実味を失っていく。 不安定な平穏の中で、何事も起こらないまま時間が過ぎ去る。そんな中で虚無感が膨らみ、二人の影のように、周囲の景色が彼らに飲み込まれていく。逃げ場のないこの花畑で、彼らはそれぞれの運命を抱え込み、ただ静かに、これから起こるであろう不穏な展開を待ち侘びるしかなかった。 その瞬間、どこかから響く笑い声が微かに聞こえる。その音とともに、再び靄が増し、異様な花畑は彼らを完全に包み込む。内に秘めた恐怖が解き放たれ、永遠に続く無彩の世界へと沈む者たちの姿は、薄れゆく意識の中でさえ誇張されていく。呼吸さえも重く、困難に感じられる。 全てが一つになり、この異様な場所で、彼らは全てを失っていくだけ。もう逃げることはできない。恐怖も、安堵も、そのどちらもが消え去り、ただ無の狭間で砕けてしまう。