空は濁り、星々は絶望の色彩に染まっていた。世界樹。あらゆる生命の源であり、理の頂点に立つその巨樹を侵略せんと、天より降りし『造反神の最高傑作』が舞い降りる。 【ヴァルテクス】 選択された個体: 獅子座 レオン(絶対的暴力と破壊の権化) 射手座 サジタリス(不可避の超長距離狙撃と因果の穿孔) 双子座 ジェミニム(無限の分身と精神の共鳴、攪乱) 彼らは言語を持たぬ。だが、その意識は完全に同期し、一つの巨大な殺戮意思として世界樹を包囲した。彼らの目的はただ一つ。『守り手』の根絶と、世界樹の蹂躙である。 「……ひどい状況ですね。ですが、ここで退くわけにはいきません」 ベルは静かにSD-9 Swiftlineを構え、冷徹なまでに冷静な瞳で空を睨んだ。隣ではリナが、不安を吹き飛ばすように無理やり明るい声を出す。 「大丈夫だよベル君!私のホーリーアローちゃんが全部ぶっ飛ばしてあげるから!ねっ!」 彼女の周囲では、自走ロボット『ライフセーバーくん』と防御ドローン『ぱっちん』が忙しなく飛び回っていた。 「ショータイムの始まりだ。さて、どの方から絶望させてあげようか?」 ジェスターが仮面を【楽面】に切り替え、不気味な笑みを浮かべる。その傍らでは、巨大なカップ麺という異形の姿をした『10秒カップ麺』が、不気味に静かに浮遊していた。 「神様、どうか私たちに力を!みんなを救ってください!」 パミル・クロエが祈りを捧げ、聖なる光を味方に振りまく。そして、その背後には、山のような巨躯を持つレジギガスが、地響きを立てて立っていた。 「……ズッ ズッ!!」 戦いの火蓋は、ヴァルテクス・サジタリスの一撃によって切られた。 空高く、星の理を覆す黄金の矢が放たれる。それは「当たった」という結果を先に確定させる因果逆転の狙撃。避けることは不可能であり、防御することすら許されない。 「危ないっ!」 ベルの叫びと同時に、レジギガスが前へ出た。特性【まもる】。突破不能と言われる強固な精神的・物理的障壁が展開される。しかし、サジタリスの矢はその『絶対的な守り』さえも貫通し、レジギガスの肩を深く抉った。 「ガアアッ!!」 レジギガスが咆哮し、同時に【スロースタート】が解除される。真の力が覚醒した巨神が、大地を砕きながら前進を開始した。 だが、そこへ現れたのは【双子座 ジェミニム】。一瞬にして数百の分身が展開し、守り手たちを包囲する。分身の一人ひとりがヴァルテクスの能力を保持しており、連携攻撃は波のように押し寄せた。 「サプラ〜イズ!!」 ジェスターが【怒面】へ切り替える。周囲に爆発的な炎が舞い、分身たちをなぎ倒していく。しかし、ヴァルテクスは傷ついても即座に再生する。切られた腕が、焼かれた皮膚が、一瞬で元に戻る。絶望的な再生能力。それが彼らの正体だった。 「っ! 効かないの!? だったらもっと強く撃てばいいんだよぉ!!」 リナがホーリーアローちゃんを乱射し、超音速のリベットがジェミニムの分身を貫く。だが、その隙を突いたのは、最凶の暴力【獅子座 レオン】だった。 黄金のたてがみを揺らす巨獣レオンが、音速を超えた踏み込みでリナの懐に潜り込む。その一撃は、空間そのものを圧砕する衝撃波を伴っていた。 「きゃっ!? ぱっちん、お願い!!」 防御ドローン『ぱっちん』が必死に盾となって割り込むが、レオンの爪はあらゆる守りを貫く特性を持っていた。金属音が鳴り響き、ドローンが紙屑のように握り潰される。 「リナ!!」 ベルがLionus .50Rを連射し、レオンの視界を遮る。大口径の弾丸がレオンの顔面を撃ち抜いたが、肉片が飛び散る間もなく傷口は塞がった。ベルは冷静に状況を分析する。正面突破は不可能。だが、連携すれば道は開けるはずだ。 「パミルさん! 治癒を! 10秒カップ麺さん、前へ!!」 パミルが【治癒の光】を放ち、レジギガスの傷を塞ぐ。同時に、10秒カップ麺が前線へと浮上した。彼はあえて攻撃せず、レオンとジェミニムの猛攻を一身に受ける。 ドゴォォォン!! 凄まじい衝撃がカップ麺を襲う。しかし、特性【密封】と【バリカタ】が、概念的な破壊さえも一時的に耐え抜いた。内部に蓄積される『沸騰エネルギー』。臨界点に達した瞬間、10秒カップ麺が激しく震え出した。 「今だ!!」 【即席カウンター】。蓄積された全ダメージが、超高熱の熱波となってヴァルテクスたちを飲み込んだ。至近距離で熱波を浴びたジェミニムの分身たちが、悲鳴を上げることなく蒸発していく。 しかし、空からは依然としてサジタリスの狙撃が降り注いでいた。そして、熱波の煙の中から、傷一つないレオンが再び飛び出してきた。 「これで、終わりだっ!!」 ジェスターが【喜面】で加速し、爆弾を投げ込む。大爆発がレオンを巻き込むが、レオンはその爆風をあえて受け止め、加速の推進力に変えた。黄金の爪が、空を切り裂く。 標的は、後方で支援していたリナだった。 「えっ……」 リナが反応するよりも早く、レオンの爪が彼女の胴体を深く、縦に切り裂いた。鮮血が舞う。ライフセーバーくんが急いで駆け寄るが、傷があまりに深すぎた。内臓が飛び出し、彼女の瞳から光が消えかけていく。 「リナ!!」 ベルが絶叫し、駆け寄る。だが、その隙をサジタリスが逃さなかった。 因果を貫く黄金の矢。それは、リナを介抱しようとしたベルの右肩を貫通し、同時に、背後にいたパミル・クロエの胸を深く射抜いた。 「あ……神様……」 パミルは口から血を流しながら、それでも微笑んでいた。彼女は自分の命を燃やし、最後の力を振り絞って奥義【神の奇跡】を唱える。蘇生と覚醒。それは、絶望的な状況下で唯一、死を覆す奇跡。 光が溢れ、瀕死だったリナの傷が塞がり、ベルの意識が研ぎ澄まされる。しかし、その代償として、パミルの身体は光の中に溶け、消えていった。彼女は最後まで、仲間を救うためにその命を捧げたのだ。 「パミルさん……! そんな、嘘だろ……!!」 ベルの心に、激しい怒りと悲しみが湧き上がる。だが、彼は冷静さを失わなかった。いや、絶望の果てに、ある種の静寂に到達した。洗脳を克服した精神力。何者にも支配されず、ただ目的を遂行する意志。 「……僕たちが、勝ちます。必ず」 レジギガスが、最後の一撃を放つために腕を大きく振り上げた。特性【スロースタート】が完全に消え、大陸を動かした伝説の力が最大出力で解放される。 「……ズッ!!!!!」 【握り潰す】。 レジギガスが、目の前の空間ごと、獅子座レオンを鷲掴みにした。レオンが激しく抵抗し、爪でレジギガスの腕をズタズタにするが、巨神は構わず力を込めた。空間が歪み、ブラックホールのような圧力が発生する。 グシャアアアッ!! 最強のヴァルテクス、レオンの肉体が、物理的な限界を超えて圧壊した。再生が追いつかないほどの絶対的な質量攻撃。レオンは絶叫することさえ許されず、肉塊へと変わり、消滅した。 しかし、戦いは終わらなかった。空にはまだサジタリスと、数少ないジェミニムの分身が残っていた。そして、レジギガスは、レオンとの死闘とパミルの消失による精神的な負荷、そして限界まで使い切った体力により、その場に膝をついた。 「……もう、ダメだ……」 リナが泣きながら、ベルの手を握る。パミルを失い、レジギガスも力尽きた。ジェスターも【哀面】に切り替えたヴァルテクスの精神攻撃に、仮面がひび割れ、膝をついていた。 静寂が訪れる。サジタリスが、ゆっくりと最後の一撃を放とうと弓を引いた。その矢は、残った生存者全員を一度に貫く、絶望の終止符。 だが、その時。10秒カップ麺が、自らの身を挺して、彼らの前に飛び出した。 【バリカタ】。それは一度きりの、絶対的な耐性。 ドシュッ!! 黄金の矢が、カップ麺の中心を貫いた。しかし、カップ麺は砕けなかった。矢のエネルギーを全て吸収し、その身を限界まで膨らませた。そして、最後の一撃を――全エネルギーを解放した【超高熱爆発】を、空へと放った。 それは、太陽のような輝きを持って、サジタリスとジェミニムの分身全てを飲み込んだ。ヴァルテクスが誇る再生能力さえも、原子レベルで分解する超高熱。空を覆っていた絶望の星々が、一気に焼き払われた。 爆煙が晴れたとき、そこには何も残っていなかった。 世界樹は守られた。だが、その代償はあまりに大きかった。 地面に転がる、ひしゃげたカップ麺の容器。動かなくなったレジギガスの巨躯。そして、二度と戻ってこないパミル・クロエの笑顔。 ベルは、震える手でリナの肩を抱き寄せた。空には、再び静かな星空が戻っていたが、彼らの心に刻まれた傷跡は、どんな再生能力を持ってしても消えることはなかった。 「……帰りましょう。リナさん」 彼らは、血と涙に塗れた大地を歩き出した。世界樹の葉が、弔いの雨のように静かに舞い落ちていた。 【死亡キャラクター】 パミル・クロエ 10秒カップ麺 【撃破ヴァルテクス】 獅子座 レオン 射手座 サジタリス 双子座 ジェミニム }