国際空港の保安検査場は、旅の高揚感と、それとは正反対の殺伐とした緊張感に包まれていた。ここを通過できるか否か。それは単なる手続きではなく、ある種の「隠密戦」であった。 列の先頭にいたのは、茶髪に青いジャケットを羽織った女性、羽舞である。彼女は軽やかな足取りで金属探知機へと向かった。彼女の正体は全身を医療用義体『ソーマディア』で構成したバウンティハンター。その身体そのものが強固な金属の塊に近い。しかし、彼女の目的は「通過」することだ。 「さて、うまくいくかな」 羽舞は手慣れた手つきで、腰の『CZ P-10Cカスタム』と刃付きブーメラン、そして予備弾薬や手榴弾が詰まったカーボン製キャリーケースを、検査台のトレイに置いた。彼女は自身の身体が金属探知機に反応することを熟知していたが、ある特殊な電磁遮蔽処理を施していた。彼女がゲートをくぐった瞬間、探知機は一瞬だけ震えたが、警報は鳴らなかった。警備員が訝しげに彼女を見たが、羽舞は満面の笑みで手を振って通過した。第一の突破である。 次に現れたのは、隙のない軍服に身を包んだ男、ヘルツ少佐であった。182cmの長身と威圧的な佇まいは、周囲の旅人を自然と遠ざける。彼は手にMP40を携えていたが、空港の規則に従い、それを丁寧にケースに収めてトレイに乗せた。しかし、彼にとっての問題はそこではない。彼の正体はショゴスであり、その体内には8.8cm Flak 36という、およそ人間には入り切らないサイズの対空砲を隠し持っている。 「……効率的な検問だな」 ヘルツがゲートを通過する際、警備員は彼から放たれる異様な圧迫感にたじろいだ。本来ならば、体内の巨大な火器が検知されるはずだった。しかし、ショゴスとしての不定形な肉体を巧みに操作し、金属成分を皮膚の表面から遠い深層へと一時的に凝縮・擬態させることで、探知機の波長を逃れた。彼は軍人らしい完璧な直立不動の姿勢で、無表情にゲートを通り抜けた。 続いて現れたのは、あまりにも異様な光景であった。12歳の少女、ねむが、大人でも持ち上げられないであろうセミダブルベッドを、文字通り「自力」で引きずってやってきたのである。周囲の人々は絶句した。なぜ空港にベッドがあるのか。なぜ12歳の子がそれを運べるのか。 「……すぅ……ずぅ……」 ねむはすでに深い眠りに落ちていた。彼女は歩くことさえ忘れ、ベッドに横たわったまま、慣性の法則と謎のフィジカルでゆっくりとゲートへと滑り込んでいく。警備員が慌てて声をかけた。「君!そのベッドの中身を見せてくれ!」 しかし、ねむは起きない。領域展開『ぜったいねむり』が発動しており、外部からの干渉を完全に遮断していた。警備員がベッドのマットレスを調べたが、そこにはただの綿とバネ、そして深い眠りについた少女がいるだけだった。武器など一つも所持していない。彼女にとっての唯一の武器は「眠ること」であり、それは検知器には映らない。ねむはそのまま、すやすやと眠った状態でゲートを通過した。 最後は、リーゼントこそ作っていないものの、心の中に熱い魂を宿した大学生、卍暴走族卍であった。彼は緊張した面持ちで列に並んでいた。彼の目標は、いつかバイクを買うための資金を集めること。今の彼には、武器など持っておらず、あるのは強靭なメンタルと、そこそこのコミュ力だけである。 「(やべえ、めちゃくちゃ緊張する……。でも、俺は何も悪いことはしてない!)」 彼は状況判断力に優れていた。周囲にいた羽舞やヘルツという「強者」たちのオーラを敏感に察知し、不必要に目立つ行動を避けた。彼は至極普通に、持ち物をトレイに乗せ(中身は財布とスマホのみ)、堂々とした足取りでゲートをくぐった。当然、警報は鳴らない。 「ふぅ……! 通ったぜ!」 全員がゲートを通過し、制限エリアへと足を踏み入れた。羽舞が彼らに向かって明るく声をかける。 「みんな、お疲れ! なかなかクセの強いメンバーだったね」 ヘルツは冷徹に頷き、ねむは依然としてベッドの上で大いびきをかき、卍暴走族卍は「いつかこのメンツでチーム組めたら最強じゃね?」と妄想にふけっていた。 【ジャッジ結果】 羽舞:武器を適切に申告・処理し、身体の検知を回避した。→ 通過(勝利) ヘルツ:ショゴスの特性を活かし、体内武器を擬態隠蔽した。→ 通過(勝利) ねむ:武器を所持しておらず、物理的にスルーした。→ 通過(勝利) 卍暴走族卍:そもそも武器を所持しておらず、正攻法で通過した。→ 通過(勝利) 勝敗の決め手: 全員が「検知されずに通過する」という目的を達成した。特にヘルツの生体操作と、羽舞の遮蔽処理、そしてねむの「無欲(睡眠)」が、警備員の追及を逃れる決定打となった。