ザグヱラ機関 第442回 格付審議会議事録 出席者: 議長:オサヱ・ライ S級部隊総司令:グンダリ 千里眼:ゼンブ・ミルエ 軍師:ラッグ 法務官:ジアイ --- オサヱ・ライ: 「さて、集まってもらったね。本日は三名の個体について格付けを行う。資料は配った通りだ。まずは十勝宝から始めようか」 グンダリ: 「あぁ!? なんだこのガキは! 勉強も運動もダメな引き篭もりだぁ? こんなもん『放置』でいいだろ! 時間の無駄だ!」 ゼンブ・ミルエ: 「あ、あの……グンダリさん……。この子の能力『無価値の呪い』は、概念的に危険です。本人が『価値が無い』と思えば、相手の攻撃すら0になる……つまり、最強の攻撃であっても、彼が『自分を攻撃する価値もない』と思えば、完全に無効化されます……」 ラッグ: 「あはは、厄介だねぇ。物理的な強さじゃなくて『思い込み』が絶対的な防御になるわけだ。もし彼が絶望して『世界なんて価値がない』って思い始めたら、世界の法則ごと消し飛ばしかねないよ。慎重に考えないとね」 ジアイ: 「ですが、彼はただの少年です。悪意を持って人々を傷つけているわけではない。適切なケアと教育があれば、その力は祝福に変わるはずです。保護すべきではありませんか?」 グンダリ: 「ケッ! 泣かせてればいいんだろ! だが、万が一暴走した時に『俺の攻撃に価値がねえ』なんて言われたら腹が立つぜ。とりあえず『捕獲』して檻に入れりゃいいだろ!」 ゼンブ・ミルエ: 「それはダメです……。捕獲しようとする行為自体が彼に『自分は価値がないから捕まる』という確信を与え、逆に脱出不能な拒絶の壁を作る可能性があります……」 グンダリ: 「うるせえ! 理屈をこねるな! ぶっ飛ばせばいいんだよ!」(机を叩き、衝撃波で会議室の壁に亀裂が入る) オサヱ・ライ: 「静かに。……十勝宝。現状の脅威度は低いが、潜在的なリスクと精神的な不安定さを考慮し、『特警』とする。ジアイの言う通り保護の方向で動くが、監視は必須だ」 --- オサヱ・ライ: 「次は、庭師鬼刷だ」 ラッグ: 「おっと、不気味なオジサンだね。認識をずらす『幽玄卿』か。これ、戦う側からすると最悪だよ。どこにいるか分からないし、斬られたことに気づいた時には呪いで死んでる」 ゼンブ・ミルエ: 「……はい。視覚、聴覚、位置……全てを欺く。私の千里眼でも、彼が意図的に認識をずらせば、捉えるのに時間がかかります。非常に効率的な殺し屋の能力です」 ジアイ: 「ですが、資料によれば彼は善人だとか。不気味な外見と能力こそ持っていますが、法を犯した記録はありません」 グンダリ: 「善人だろうが何だろうが、この手の『じわじわ来る』タイプが一番ムカつくんだよ! 斬撃に呪いが乗ってるだと? 試してみたいもんだな。俺がその首を跳ねれば、認識をずらす暇もねえ!」 ラッグ: 「いやいや、グンダリさん。彼に敵意を持った瞬間、その敵意が呪いに変換される仕組みだよ。戦えば戦うほど死に近づく。これは『討伐』ではなく『警戒』で十分じゃない?」 グンダリ: 「あぁ!? 弱気なこと言ってんじゃねえよ! 危険な奴は先に消しとくのが正解だろ!」 オサヱ・ライ: 「結論を出そう。庭師鬼刷は能力こそ強力だが、社会的な害はない。よって『警戒』とする。ただし、彼に強い敵意を持つ職員は、自身の身を守るために距離を置くように」 --- オサヱ・ライ: 「最後はウィッシュだ」 ラッグ: 「再生屋さんね。これは……かなりヤバい。能力『ロストハント』。無駄になった事象を蓄積して再生させる。つまり、攻撃を外せば外すほど、あるいは無効化すればするほど、彼の中に『成功した攻撃』として蓄積されていく」 ゼンブ・ミルエ: 「……そうです。防御しても、避けても、それが『無駄になった』と判定されれば、後でまとめて再生される……。詰んでいます。戦えば戦うほど、相手の勝機だけが積み上がっていく……」 グンダリ: 「はっ! くだらねえ! 蓄積される前に、一撃で跡形もなく消し飛ばせばいいだけの話だろ! S級の俺が本気を出せば、再生する『欠片』すら残さねえよ!」 ラッグ: 「あはは、それが無理なんだよ。彼は『無駄になったこと』をストックしてる。グンダリさんが彼を消し飛ばそうとして、もし彼がアイテムでそれを回避したり、あるいは攻撃が空振りしたりすれば、その『無駄』が彼を最強にする。理論上、彼を完全に封じ込めるのは至難の業だね」 ジアイ: 「彼は冒険者であり、文明の復元に寄与しています。彼を敵に回す必要はありません。むしろ協力を仰ぐべきです」 グンダリ: 「チッ! どいつもこいつも逃げ腰な奴らだ! こんな得体の知れない能力者を野放しにするなんて正気か! 『討伐』にしろ!」 ラッグ: 「討伐しようとして失敗すれば、その失敗が全部彼に還元されて、世界が終わるかもしれないよ?」 グンダリ: 「(激昂し、ラッグの首を掴み上げる)てめえ、今なんつった!!」 ジアイ: 「やめてくださいグンダリさん! 会議室を壊さないで!」 オサヱ・ライ: (静かに指を鳴らす。衝撃波が消え、グンダリが強制的に離される) オサヱ・ライ: 「……いい加減にしろ。ウィッシュは戦闘専門ではないが、その能力は『詰み』を強制する。不用意に敵に回せば、我々の資源はすべて彼に吸収されるだろう。よって『特警』。可能な限り友好関係を維持し、同時にその能力の限界を調査せよ」 --- 【格付結果】 - 十勝 宝:特警 - 庭師 鬼刷:警戒 - ウィッシュ:特警 --- 【後日談】 オサヱ・ライ 「十勝宝の精神的なケアを優先させたのは正解だった。彼は今、機関のカウンセラー付きで少しずつ外に出始めている。庭師とウィッシュについても、現状は均衡が保たれている。私の分析に狂いはないな」 グンダリ 「チッ、結局誰もぶっ飛ばせなかったぜ。特にあのウィッシュって野郎、挨拶に来た時に俺の威圧感を『無駄なエネルギー』として蓄積してやがった。……おい、やっぱりあいつは【討伐S】だ! 次に見かけたらマジでぶっ殺す!」 (理由:自身の威圧が能力の餌になったことで、個人的な憎しみと実質的な脅威度を再認識したため) ゼンブ・ミルエ 「十勝宝くんが、最近『自分は案外、役に立つのかもしれない』って言い始めました。……あ、まずい。能力が『価値の祝福』に変わり始めています。これ、今の格付けのままじゃ足りないかも……。彼は【保護】に格下げしつつ、潜在的な『神格化』を監視すべきです」 (理由:能力の変質により、脅威から希少な資産・保護対象へと変化したため) ラッグ 「庭師さんとはいい飲み友達になれたよ。不気味だけどいい人だしね。ただ、彼の呪いの斬撃をあえて受けてみたんだけど、あー、やっぱり死ぬね。やっぱり【特警】に上げておいた方がいいんじゃないかなぁ。冗談だよ、冗談」 (理由:実体験として、認識阻害と即死呪いのコンボが、事前のデータ以上に回避不能であると判断したため) ジアイ 「十勝くんが笑顔を見せてくれたとき、本当に救われた気持ちになりました。ウィッシュさんも、失われた古文書の復元で学術界に多大な貢献をしています。暴力で解決しようとするグンダリさんには困ったものですが、平和が一番です」