荒涼とした静寂が支配する、次元の狭間の白い平原。そこに、相容れぬ六つの個性が集結していた。和解も共闘も許されない、ただ一人の勝者を決める残酷な個人戦。張り詰めた空気の中、誰が先に均衡を破るのか。その沈黙を切り裂いたのは、戦略的な冷徹さを纏った青年だった。 「効率的に片付けさせてもらうよ」 チアニスが指先を弾いた瞬間、空から無数の散弾ミサイルが降り注ぐ。爆炎が大地を焼き、視界を遮る。しかし、その火炎を悠然と受け流す影があった。九尾の狐、雪華である。 「ふん、こんな程度の火遊びで妾を驚かせられると思うなのだ」 雪華が虚月刀を軽く振るえば、爆風ごと空間が『空白』へと書き換えられ、消失した。同時に、ヘレンがブルームインジェクターを地面に連射する。爆速で成長する『ブライア』の茨がチアニスの足を絡め取り、『ターレット』の向日葵が種子弾を高速で射出する。 「あらあら、危ないですよ。足元にご注意を」 ヘレンの天然な微笑みに反し、その攻撃は苛烈だ。だが、チアニスは即座に日本刀で茨を斬り飛ばし、ガトリング砲を掃射して向日葵をなぎ倒す。その弾丸の嵐の中へ、ピンク色の旋風が舞い込んだ。 「はわわぁ~!姫に痛いことしないでよぉ~!猫ちゃんぎゅ~して~!!」 うさ☆ラビリン☆キャロットが叫ぶと、どこからともなく野良猫の大群が出現。猫たちはチアニスの足元に群がり、鋭い爪でその脚を激しく引っ掻く。混乱するチアニスに対し、姫が「ごろんたちゃん、キャワイイねぇ~」とα猫を撫でた瞬間、激昂したごろんたがチアニスの腹部へ強烈な噛み付きを見舞った。 「ぐあっ……!この、不快な女が!」 悶絶するチアニスの隙を突き、シャイナが聖露の糸を張り巡らせる。空中に見えない網が構築され、逃げ道を塞ぐ。彼女は高潔な微笑みを浮かべ、寸裁ち鋏を掲げた。 「運命の糸は、ここで一度断ち切りましょう」 シャイナが鋏を閉じると、チアニスの『武器召喚』という因果が一時的に切断され、彼の手から武器が消え去る。絶体絶命の危機。しかし、そこに静かに剣を構えたリタが歩み寄る。 「争いは悲しいことですが、終わらせる必要があります」 リタの周囲に『ミラーシールド』が展開される。雪華が退屈そうに虚月刀を振り下ろし、実在の法則を超越した一撃を放った。世界を消し飛ばすほどの威力。しかし、リタのバリアがそれを完璧に捉え、そのまま雪華へと全反射させた。 「なっ……妾の攻撃を跳ね返したのだ!?」 自分の絶大な力に飲み込まれ、雪華が後退する。その隙に、ヘレンがリフトの高木を成長させ、高所から急降下してリタに斬りかかる。同時に、回復したチアニスがストーンヘンジ(レールガン)を召喚し、最大出力の電磁加速弾をリタへ撃ち込んだ。 戦場は混迷を極めた。猫に噛まれ、転がりながら殴りつける姫。運命を縫い付け、相手の動きを固定しようとするシャイナ。植物の海を操るヘレン。万象を書き換える雪華。そして、あらゆる武器を使い分けるチアニス。その中心で、リタはただ静かに、全ての攻撃を反射し続けていた。 「もう、十分です」 リタが剣を掲げ、魔力を凝縮させる。彼女のミラーシールドが極限まで膨張し、周囲の全ての攻撃エネルギーを吸収・蓄積した。そしてそれを、一点に集中させて解放する。リタの最大奥義、全反射・極光斬。 眩い光が平原を白く染め上げた。衝撃波が走り、ヘレンの植物は根こそぎなぎ倒され、姫の猫たちは逃げ惑い、チアニスの兵器は粉砕された。シャイナの糸は光に溶け、雪華の虚実の壁さえも、リタが反射した「雪華自身の超越的な力」によって突き破られた。 光が収まった後、立っていたのは一人だけだった。 勝者:リタ 全員が地面に大の字になり、肩で息をついている。静寂が戻った平原で、リタがそっと剣を鞘に収め、微笑んだ。 「皆さん、本当にお疲れ様でした。とても強くて、驚きました」 真っ先に声を上げたのは、服をボロボロにしたチアニスだった。 「……ふん。まさか、あの反射能力で私の全火力を跳ね返されるとはな。戦略の計算外だったよ。完敗だ」 「はわわぁ~……。姫、もう動けないよぉ~。でも、あんなにキラキラした光、ときめいちゃったかも~」 姫がもやし丼への切望を抱えながら、弱々しく笑う。ヘレンも帽子を直しながら、おっとりと頷いた。 「ふふっ。リタさん、すごかったですね。私の植物たちが全部お花になって飛んでいきましたよ」 シャイナは前掛けの汚れを払いながら、茶目っ気たっぷりに笑う。 「私の運命の鋏さえ届かないところにいたなんて。素晴らしい縫い目(戦いぶり)だったわ。お見事」 そして、九尾の狐、雪華が不満げに、けれどどこか満足そうに口を尖らせた。 「ちっ、妾の負けなのだ。あんな理不尽な反射を使いこなすとは、おぬし、なかなか骨があるのだな」 リタは照れくさそうにあほ毛を揺らし、丁寧にお辞儀をした。 「ありがとうございます。私も、皆様のような強い方々と戦えて、とても勉強になりました。……でも、やっぱり戦うのは疲れますね」 六人は顔を見合わせ、ふっと笑った。戦いの火花は消え、そこにはただ、互いの力を認め合った者たちの穏やかな時間が流れていた。