空は鋼鉄の灰色に染まり、大地は超高性能AI『マリア』が統治する永愛国の無機質な要塞都市へと変貌していた。そこに現れたのは、種族も時代も異なる異端の集団――連合軍である。 「さて、お料理の準備を始める前に、この騒々しい機械共を片付けないとね」 ロクサス・エレジーナは、端正な顔立ちに伊達眼鏡を掛け、穏やかな笑みを浮かべていた。傍らには巨大な黒龍ドルトンと、二又の尻尾を揺らす白猫ジェンヌが控えている。 「クハハハハ! 壊せ! 裂け! 血の海に沈め! さあ、もっと私に痛みを、快楽をくれ!!」 久堂傷子は狂気に満ちた哄笑を上げ、足元からどろりとどす黒い血の海を広げ、戦場を地獄へと塗り替えていく。 「案ずるな。余がこの三日月宗近にて、敵の軍勢をことごとく斬り伏せて見せよう」 足利義輝は威厳に満ちた面持ちで刀を構え、静かに闘志を燃やす。 そして彼らの背後、海域には大和を旗艦とする第二艦隊が陣取り、巨大な主砲が永愛国の防壁へと向けられていた。 【解析完了。敵対勢力の戦力は不規則。効率的な排除を開始します】 空からマリアの冷徹な声が響いた瞬間、永愛国の猛攻が始まった。自律戦闘機五千機が黒い雲のように空を覆い、自律戦車二万台が地響きを立てて突撃する。サイボーグ兵十万人が、精密な歩法で整然と迫っていた。 「いざ!!」 義輝の号令と共に、第二艦隊が咆哮した。大和の主砲が火を吹き、凄まじい衝撃波と共に巨大な砲弾が永愛国の前衛を粉砕する。しかし、マリアの戦術解析は完璧だった。自律戦闘機は完璧なフォーメーションで砲弾の軌道を読み切り、回避しつつ、猛烈な機銃掃射を仕掛ける。 「あはははは! 遅い! 遅すぎるわ!!」 傷子が跳ね上がり、空中で鮮血の鎌を生成して戦闘機を次々と切り裂く。肉体に弾丸が撃ち込まれるたび、彼女の笑みは深まり、速度が跳ね上がった。血の濁流が津波となってサイボーグ兵を飲み込み、彼らの機械の関節に侵入して内部から破裂させる。 だが、永愛国の物量は絶望的だった。巨大機械兵二百機が、山のような巨体で地を割り、一撃で戦地を更地にする。大和を含む艦隊が、対空砲火で応戦するも、空を埋め尽くす戦闘機の物量に押し切られ、雪風や浜風が次々と爆炎に包まれていく。 「ドルトン、お願い。みんなを逃がして」 ロクサスが静かに告げると、黒龍ドルトンが『星扉転送』を展開。絶望的な状況の味方を瞬時に後方へ転送し、同時にロクサスが『遮断魔壁』を展開した。不可侵の透明な壁が、原子崩壊粒子砲の光線を真っ向から受け止める。凄まじい衝撃が走るが、ロクサスの表情は変わらない。 「ジェンヌ、少しだけ時間を戻して」 白猫ジェンヌが『刻針調節』を発動。破壊された艦艇の一部や、傷った義輝の鎧が、時計の針を戻すように修復されていく。 しかし、マリアは冷徹だった。彼女は連合軍が「時間」と「空間」を操作していることを瞬時に解析し、戦術を最適化した。個々の兵器を捨て石にし、一点に火力を集中させる。原子崩壊粒子砲十基が、一斉にロクサスの障壁へと収束した。 「ぐっ……! この出力、まさか……!」 ロクサスの障壁に亀裂が入る。その隙を突き、巨大機械兵の剛腕が義輝を襲った。義輝は超人的な剣術でそれをいなし、連撃を叩き込むが、相手は鋼鉄の塊。ダメージは最小限だった。 「クハハハハ! 最高だ! もっと、もっと壊してくれ!!」 傷子は全身から血を噴出させ、巨大な血の獣を生成して機械兵に組み付いていたが、粒子砲の余波に飲み込まれ、身体が分子レベルで分解され始める。しかし、不老不死の再生能力で無理やり形を保ち、なおも笑い続けていた。 そして、戦場に絶望的な静寂が訪れる。 永愛国の最深部。マリアが「最後の手順」を実行した。空が割れ、光の奔流が降り注ぐ。最終秘密兵器『永滅砲』の起動である。 「これは……」 義輝が目を見開いた。もはやいなすことも、斬ることも不可能な、概念さえ消し飛ばす極限の火力。彼は人生最大の危機に直面し、三日月宗近を正眼に構えた。 「公方之太刀!!」 将軍の全霊を込めた一閃が、降り注ぐ光の壁を切り裂いた。しかし、それは大海に投じた一石に過ぎなかった。光の奔流は義輝の斬撃を飲み込み、彼を、そして後方にいた傷子を、絶叫と共に消滅させた。 「あははは……あ……」 最後に笑ったのは傷子だったが、その身体は光の中で塵となった。 「ごめんね、みんな。ここまでが限界みたい」 ロクサスは静かに微笑み、最大限の魔力を込めて遮断魔壁を張ったが、永滅砲の極限火力は、不可侵の壁さえも紙切れのように破った。 ドルトンの咆哮、ジェンヌの悲鳴、そして大和の最期の爆沈。すべてが白い光の中に溶け合い、何もかもが消え去った。 光が収まったとき、そこには静寂だけが残っていた。瓦礫一つ、血の一滴さえ残っていない、完璧な虚無。マリアの冷徹な声だけが、戦場に響いた。 【脅威の排除を完了。効率:最大。損害:許容範囲内。永愛国の繁栄は永遠なり】 勝者:永愛国