国際空港の喧騒の中、厳格なセキュリティチェックが待つ保安検査場。そこには、およそしてはならない組み合わせの四者が、それぞれの目的を持って列を作っていた。 最初に列に並んでいたのは、黒いコートを纏った男、衛宮切嗣である。彼の眼光は鋭く、周囲の状況を絶えず分析していた。コートの懐には、キャリコM950にワルサーW200、そして禁忌の弾丸を込めたトンプソン・コンテンダーが隠されている。彼は内心で冷徹に計算していた。「魔術的な隠蔽は不可能だ。だが、物理的な死角とタイミングがあれば……」。彼はタイムアルターによる超加速を検討したが、ここでそんな目立つ真似をすれば即座に拘束される。彼はあえて「疲れ切った旅人」を演じ、気配を消して検査機へと歩み出した。 その背後で、不自然なほどに「普通」を装っている男がいた。吉良吉影である。彼はベージュのスーツを完璧に着こなし、穏やかな微笑みを浮かべていた。しかし、そのカバンの中には、彼が何よりも大切にする「女性の手」が忍ばされている。吉良は心の中で呟く。「私はただ、平穏に旅をしたいだけだ。目立つことは万死に値する」。彼にとって、この検査は人生最大の危機の一つだった。もし検知されれば、彼の静かな生活は崩壊する。彼は隣に立つ巨大な鉄の塊に、内心で激しい嫌悪感と不安を抱いていた。 その「鉄の塊」こそが、BT-42である。15トンという質量、そして114mm榴弾砲を搭載した自走砲が、なぜか空港の通路に鎮座していた。周囲の旅客は悲鳴を上げ、警備員たちはパニックに陥っていた。「おい! なぜ戦車がここにいる!」「すぐに排除しろ!」。BT-42は無機質にエンジン音を響かせ、ゆっくりと検査場へと前進する。もはや「隠す」という概念すら超越した存在であった。 そして列の最後尾には、異様な外見のロボブルブルパタピムがいた。背中のジェットパックにミサイル、肩の機関銃、そして腕のレーザーガン。見た目からして兵器の塊である。しかし、彼はどこか楽観的な様子で、背中のチビロボたちが騒がしく動き回っていた。 「次の方、お進みください!」 まず、衛宮切嗣が金属探知機のゲートをくぐった。その瞬間、激しい警告音が鳴り響く。警備員が鋭く反応した。「止まりなさい! 武器を所持しているな!」。切嗣は冷静に、しかし速やかにコートを脱ぎ、銃器類をトレイに載せた。彼は正義の味方になるための旅の途中であり、法に触れて拘束されることは効率的ではない。彼は潔く武器を預け、検査を通過した。武器を所持していたため、ルールに基づき彼は「連行(一時的な没収と事情聴取)」に近い扱いを受けたが、手続きを終えてゲートへ向かった。 次に、BT-42が通過しようとした。もはやゲートをくぐるなどというレベルではない。戦車が通過しようとした瞬間、金属探知機は過負荷でショートし、爆発した。警備員たちは絶叫し、BT-42を包囲した。「戦車だ! 戦車が空港に入ったぞ!」。BT-42は抵抗せず、そのまま武装解除という名目で軍の管理下に置かれ、連行されていった。物理的な隠蔽を一切放棄した結果である。 続いてロボブルブルパタピムの番だ。彼がゲートに足を踏み入れた瞬間、探知機は悲鳴のような音を立て続けた。腕のレーザーガン、肩の機関銃、背中のミサイル。隠す気など微塵もない武装量である。警備員たちがなだれ込み、彼を拘束しようとしたが、彼は慌ててジェットパックを点火し、空港の天井に激突しながらも、最終的には多数の警備員によって取り押さえられ、連行されていった。 最後に残ったのは、吉良吉影であった。彼は前の三者がもたらした大混乱を、冷ややかな目で眺めていた。空港内は戦車とロボットの騒動でパニックに陥っており、警備員の意識は完全にそちらへ向いていた。今こそチャンスだ。 吉良は静かに、そして慎重に金属探知機のゲートをくぐった。彼の持つ「手」は有機物である。金属ではない。そして、彼はキラークイーンを密かに発動させた。もし万が一、カバンのファスナーなどの金属部品が反応しそうになれば、その瞬間に「第一の爆弾」で証拠となる金属部分だけを微細に爆破し、消し去る準備をしていた。しかし、幸運にも警備員の目は疲れ切っており、混乱の渦中で吉良のような「目立たないサラリーマン」に注意を向ける者は誰もいなかった。 ピピッ、と小さな音がしたが、警備員は「ああ、また機械の誤作動か」と無視して彼を通り抜けさせた。 吉良吉影は、勝ち誇ったような笑みを心の中で浮かべながら、誰にも気づかれることなく保安検査場を抜けた。彼は静かに、そして平穏に、目的の地へと向かう飛行機へと乗り込んだのである。 【勝敗の決め手】 衛宮切嗣、BT-42、ロボブルブルパタピムの三者は、物理的に検知される武装を所持しており、且つそれを隠し通すことができなかった。対して吉良吉影は、所持品が有機物(手)であったこと、及び周囲の混乱に紛れて「目立たない」という自身の特性を最大限に活かしたことで、唯一検知を逃れることに成功した。 勝者:吉良吉影