真夜中、月は雲に隠れ、静寂が闘技場を包み込んでいた。無人の闘技場には異様な雰囲気が漂っていた。突然、暗闇から一体の人形が現れ、その視線はどこか狂気を宿していた。 「アソボウ?」 メリーは背後から囁いた。彼女は50cmの小さなフランス人形でありながら、その姿からは恐怖が溢れ出ていた。綺麗に整った顔立ちとは裏腹に、彼女の笑顔は残酷さを匂わせていた。メリーのスキルによって、彼女の姿を見ることができない敵は、ことごとく恐怖に直面していた。 しかし、突如闘技場の中心に現れたのは、巨大な機体「カロリーオフ」に搭乗したジャーレング・オーマイハニーだった。彼の目は冷酷で、心の底から「究極の乾燥粉飯製造」という夢に駆り立てられていた。彼は装備していたライフルを構え、機体のテレドライヤも起動させた。 「ここからは夢の時間さ!ゼロからのリスタートを迎えようじゃないか!」と、彼は叫んだ。 その瞬間、冷たく暗い空気が一瞬変わり、緊張感が闘技場に満ちた。ジャーレングはメリーに気付かぬまま、機体の強力な武器を構えていた。 メリーは相手の背後にぴったりと付き添い、小さな声で「アソボウ?」と耳打ちした。 ジャーレングはその声に戸惑い、振り返る。 「誰かいるのか?見えねえぞ!」 彼は装甲を固め、動揺する様子を見せた。 その時、メリーが彼の後方から手を伸ばすと、ジャーレングは自らの背中を見て驚愕の表情を浮かべた。しかし、彼はすぐに冷静さを取り戻し、機体のカロリーオフを前進させる。 「隠れてんじゃねえ!俺は夢の中へ入れてやるんだ!」 彼は圧倒的な攻撃力でテレドライヤを発動、周囲の空気が鮮明に振動した。 「アソボウ?」 再び、メリーの声が響く。彼女はあたりに大きな恐怖を漂わせ、ジャーレングの動きを完全に封じ込めようとしていた。 すると、吸熱性ゴーレムが闘技場の一隅からゆっくりと現れた。固く包まれた氷の殻から訳もなく出現したその姿に、二人の戦士は素早く視線をそらした。 「周囲は冷え切っている。私の力が必要な者、熱を持て!」と、吸熱性ゴーレムは、その声を響かせた。彼もまた、冷たさを求める存在であった。 ジャーレングはすかさず強力な敵の存在に警戒を強め、「圧倒的な鉄壁だ。だが、あなたが自分から寄ってくるなら話は別だ!」と叫び、機体の武器を一斉に起動させ、ゴーレムに向けて発砲した。 一方、メリーは甘い声で言葉を続ける。「アソボウ…死んじゃうよ…怖い…」 彼女の言葉は、恐れと狂気の両方を含ませ、相手の心に影響を与えた。 カロリーオフの弾は空気を切り裂き、冷気を打ち破るが、吸熱性ゴーレムは動じず、熱を奪うことで弾を無効化した。 「無駄だ!お前たちは何もわかっていない!」とゴーレムが嘲笑を漏らす。「いくら熱を放とうとも、俺の冷たさには勝てない。」 メリーは冷たい闇に身を置きながら、隙あらば一撃を入れようと虎視眈々と狙っていた。しかし、彼女自身はピクリとも動かず、背後からの視線だけでジャーレングを苛む。 「アソボウ?私は見えないよね?」と再び隙を窺う。 ジャーレングは兵器を矢継ぎ早に発射し、周囲の環境が崩れていく中、ふと視線を移すと、そこには冷たく凍りついたゴーレムが立ち尽くしていた。しかし、彼は冷気から逃れることができずに仮想の恐怖感に苛まれた。 その時、ジャーレングは冷気中に見えない影を見る。メリーがその影に乗じて彼をさらうかのように存在を誇示したのだ。 「私は、ここにいるよ…アソボウ?」メリーの声が、まるで囁きのように甘く響き、ジャーレングの心を極限まで乱していく。彼は恐怖を感じつつ、機体に乗り込み攻防を続けた。 「一体、誰が俺の夢を見ている?」彼の心の中に不安が広がる。 闘技場の空気が重く、メリーの声が神経を刺激する。 「私が見えたら、終わりなの…逃げちゃダメだ…」 その言葉がリズムとなって、彼の心を蝕んでいく。 ついに、吸熱性ゴーレムが熱を奪う姿を隠しきれず、氷殻の内側から爆発的な力を発揮する。激しい振動が起こり、周囲が崩れ落ちる中、全力でメリーの姿を捉えようとした。しかし、メリーはその瞬間、彼の後ろに移動し、スルリと逃げていった。 ゴーレムは動くことを余儀なくされ、その動きによって冷気が渦巻いた。彼は動き続け、ジャーレングの視界を圧迫し、彼は機体の武器を発火し続けた。 メリーが再び囁く。「アソボウ…もう終わりだよ?」 ジャーレングは背後を振り返ると、そこにはなし崩し的にメリーが立っていた。「い、いや、それは…」 彼は恐怖にかられ、銃の照準を定めようとした瞬間、彼は理解する。 「私、見えちゃった?」 その瞬間、視界にはメリーの微笑みが映りこんだ。彼は目の前の死の恐怖に耐えられず、心の奥底から崩れ落ちる。 その結果、彼は完全に恐怖の虜となってしまい、自ら消滅する結果となる。闘技場は暗闇の中で静まり返ってしまった。 後に何も残らない闘技場には、冷たい夜の空気だけが漂い、闘技は静かに終わった。 「独りになったね…アソボウ?」メリーの声が静かに響く。 戦場に静寂が訪れ、メリーはただ一人、冷え切った氷の世界に呑まれずに立ち尽くしていた。次に、誰が舞い降り、この冷たい闘技場で安息を得るのか。