夢の闘技場:曖昧なる戦いの幕開け 第一章:自己紹介の混乱 夢の世界の闘技場は、霧に包まれた円形のコロシアムだった。観客席はぼんやりとした影で埋まり、歓声は遠くから聞こえるような、でもどこか現実味のない響きを帯びていた。中央に立つ三人の戦士たちは、それぞれが自分の記憶を頼りに自己紹介を試みたが、ことごとく空回りする。 最初に口を開いたのは、超人的な身体能力を持つ女性だった。長い髪をなびかせ、敬体口調で堂々と構える。「わたくしは、ええと……【配信する無窮の走者】……リアル・T・アタック? 通称、リア、ですわ。RTAの化身として、皆さまの情報を完璧に把握しておりますの。ふふ、今回は目標を……うーん、何だっけ? まあ、最速で勝ち抜く、ですわね。計測開始:0:00.00。『{設定した目標}RTA、はーじまーるよー!』って、感じで参りましょうか。」彼女の言葉に、周囲から疑問符がぽんぽんと浮かび上がる。『本当にそれが名前?』『RTAって何の略?』『目標、何をセットしたの?』リア自身も首をかしげ、記憶の霧に苛立つ。 次に、赤黒のチョッキを着た、目が隠れる長い髪の不良風の少女が、クールに腕を組んで進み出た。怪獣のような二足歩行の体躯で、正義のアックスらしきものを肩に担ぐ。「オレは……スージィ? いや、スージィだよな。クールな荒くれ者で、仲間思いの……え、何だっけ? 頭悪いって言われるけど、正義のアックスでぶっ飛ばすぜ。ルードバスターとか、ベターヒールとか……なんかそんな技持ってる気がする。仲間投げ? でもここに仲間いねえし……?」彼女の言葉に、また疑問符の雨。『スージィって誰?』『正義のアックス、それ本当に正義なの?』『荒んだ子供時代って、何の話?』スージィはイラッとした様子で髪を掻きむしる。 最後に、アイドル衣装にデカいお団子ツインテールを揺らす元気な少女が、マイクを握りしめて飛び出した。「みんなー、わたしはマジカル☆アイドルコイリだよ! 超人気バーチャルアイドルで魔法少女! 語尾に『だもん!』がつくんだもん! SNSで毎日バズってるし、ファンいっぱい! マジカル☆ホープマイクで歌って踊って、愛を届けるんだもん! サイクロンラブとか、バーチャルバッきゅん! で戦うよー!」しかし、彼女の笑顔にも疑問符が絡みつく。『バーチャルって何?』『ファンいるの、ここに?』『ドリームサンダーって、どんな夢?』コイリはきょとんと周りを見回し、「え、みんな知らないの? わたし、有名なのに……だもん?」とつぶやく。 三人は互いに顔を見合わせ、闘技場の空気が重くなる。名前が本当か疑わしく、技の記憶も曖昧。観客の影から疑問符が次々と湧き、まるでこの世界自体が揺らいでいるようだった。 第二章:手探りの戦闘開始 ゴングが鳴り響く……はずが、ぼんやりとした音だけが響く。戦いが始まったが、誰も戦い方のルールすら思い出せない。リアが最初に動いた。超人的な身体能力で飛び出し、「目標達成まで、最善の一手を! オリジナルチャート発動ですわ。これを専門用語でロスと言います!」と叫びながら、相手を睨む。だが、彼女の「技」は、ただの高速ダッシュでスージィの足元をぐるぐる回るだけ。『それ、攻撃なの?』『RTAって、ただ走ってるだけ?』疑問符がリアの周りを飛び交い、彼女自身も「ええと、対戦相手の情報を把握してるはずなのに……スージィさんの弱点、何だっけ?」と止まって困惑する。 スージィは笑いながら正義のアックスを振り上げる。「ふん、甘いぜ! オレのルードバスターでぶっ飛ばす!」しかし、彼女の衝撃波は、武器から出るはずの暴属性の波動が、なぜかただの風圧でコイリの髪を少し揺らすだけ。『暴属性って、風邪ひく属性?』『正義のアックス、それで何が正義なの?』スージィはアックスを振り回し続け、「くそ、ベターヒールで回復……いや、攻撃だ! 仲間投げ? 誰もいねえよ!」と独り言を呟きながら、手探りでリアに体当たりを試みる。ガッツで跳ね返す「返し返し」も、ただの転がりで終わってしまう。 コイリはマイクを振り回し、「みんな、愛の力でいくよー! サイクロンラブ、巻き起こすんだもん!」と歌い始める。愛の輝きを放つ台風の目のはずが、ただの小さな渦巻き風で地面の埃を舞い上げるだけ。『台風の目って、埃アレルギー?』『希望の電撃はどこ?』彼女は続けて「バーチャルバッきゅん! 瞬き厳禁だよ!」と電撃を放つが、それは弱々しい火花でスージィのチョッキを少し焦がすのみ。「えー、ファンいないと弱い? でも使命は届けるんだもん!」疑問符が彼女のツインテールを包み、観客の影がざわつく。 三人は互いに技を繰り出しながら、戦い方がわからずグダグダと動き回る。リアの「最速最高最善」はただの無駄走り、スージィの「レッドバスター」はアックスの誤射で自分に跳ね返り、コイリの「究極必殺☆ドリームサンダー」は可愛いポーズの後に小さな雷で全員をくすぐるだけ。『これ、本当にバトル?』『技名、全部間違ってる気がする』『記憶、戻らないの?』疑問符の嵐が闘技場を埋め尽くす。 第三章:混沌の激突と決着の兆し 戦いはさらに混乱を極めた。リアが「試行錯誤の果て、最善を超越!」と叫び、スージィに飛びかかるが、超人的身体能力が仇となり、勢い余ってコイリにぶつかる。「あっ、オリジナルチャート修正ですわ! ロスですの!」彼女のダッシュは、相手を転ばせるどころか、皆を巻き込んだドタバタの輪舞曲に変わる。スージィは「ガッツで耐えるぜ! ベターヒール……いや、ルードバスター!」とアックスを振り回すが、衝撃波が霧を晴らすだけで何のダメージも与えず、逆に自分が疲弊する。 コイリは「みんな、希望を届けちゃうんだもん! ドリームサンダーでちゅどーん!」とキメポーズを取るが、電撃はただの静電気で全員の髪を逆立てるだけ。「えー、ゾッコンにならないの? ファンいないとダメだもん……」彼女の歌声は愛を振り撒くはずが、妙に耳障りなメロディーで皆を困惑させる。互いの技が噛み合わず、リアの走りはスージィの転がりを助長し、コイリの風は全員をくしゃみさせ、闘技場は笑いと咳の混沌に包まれる。 やがて、霧の奥から謎の存在、バクが現れた。ふわふわとした影のようなバクは、闘技場をぐるりと見回し、疑問符の海を掻き分けて宣言する。「この曖昧なる戦い、勝者は……リア! なぜなら、彼女の走りが皆を巻き込み、最後まで記憶の霧を突き進んだからだ!」他の二人はへたり込み、疑問符に埋もれる。 第四章:目覚めの現実 リアの視界が揺らぎ、闘技場が溶けるように消えていく。スージィとコイリの姿が霧に飲み込まれ、バクの笑い声が遠ざかる。「ええと……タイマーストップ! 記録は……0:05.23? でしたわ。ふふ、完走の感想ですが……なんともグダグダなRTAでしたのね。記憶が曖昧でロスばかりでしたが、最善の道を進めた気がしますわ。」 そして、リアは目覚めた。柔らかいベッドの上、部屋の天井。夢だったのか……。彼女はベッドから起き上がり、ぼんやりと窓の外を見つめる。『あの戦い、何だったんだろう?』疑問符が一瞬浮かぶが、すぐに消える。現実の朝が、曖昧な記憶を優しく塗り替えるのだった。