空は鉛色に塗り潰され、絶望が物理的な重圧となって戦場を支配していた。ザグヱラ機関の出撃。それは「戦い」ではなく、一方的な「処理」に過ぎなかった。 「対象確認。はぐれエルフ、ドワーフ、登山家、植物学者。……取るに足らぬ雑種どもだ」 総司令グンダリの冷徹な声が響く。彼の背後には、地獄の軍勢を屠ったS級部隊百人と、時空さえも玩具にするSS部隊二十人が、静謐なる死の軍勢として佇んでいた。 予知者ミルエの瞳には、すでに数千万通りの未来が映っていた。そのすべてにおいて、侵入者たちの敗北と死が確定している。軍師ラッグは、その予知に基づき、一分の隙もない完璧な殲滅戦術を構築した。 「法務官ジアイ、準備は?」 「完了しております。彼らが持つ『古代遺物の短剣』『迷宮攻略の経験』『大地の声』『風の声』……すべてを無効化し、精神から肉体まで完全に破壊するための術具を揃えました」 ジアイが提示したのは、因果律を固定し、成長と変化を禁じる【停滞の枷】、そして迷宮の構造さえも書き換える【次元崩壊の楔】。予知に基づき最適化された法具の前に、抵抗の余地など存在しない。 さらに後方では、議長ライが神々しい黄金のオーラを放っていた。SS部隊には絶対的な不死身が与えられ、対して侵入者たちの筋力、魔力、精神力は極限まで弱体化させられる。彼らが思考し、行動を起こそうとする瞬間に、ライの権能がその「行動」自体をキャンセルさせた。 絶望の開戦 レリックは叫んだ。「まだ、私は成長できる!可能性は無限にあるはずだ!」 彼女が短剣を振るおうとした瞬間、ジアイが用意した【停滞の枷】が発動した。成長をテーマとする彼女にとって、それは最悪の天敵だった。彼女の「限界突破」という概念そのものが法的に抹消され、能力値は底辺まで固定される。 リラスビは大戦斧を構え、相手を迷宮に見立てて致命点を探った。しかし、彼が見出した「最適ルート」は、軍師ラッグによってあらかじめ罠へと書き換えられていた。彼が踏み出した一歩は、そのまま時空封印術の檻へと繋がっていた。 尾山 登は大地の声に耳を傾けた。「右だ!右に逃げろ!」という大地の誤助言をあえて無視し、生存本能で左へ跳んだ。だが、そこにはSS部隊の即時再生法を持つ戦士が、嘲笑いながら待ち構えていた。いかにサバイバルのプロであろうとも、時空そのものを操作される絶望には抗えない。 幕間 木呑は風の声を聞いた。(木呑よ、策はあるぜ。右側の術具の継ぎ目にスケッチブックを挟み込め!) 「風よ、君、いつも無茶言うよね」 木呑は軽やかな身のこなしで跳んだが、議長ライのオーラが彼の「跳躍」という行動をキャンセルした。空中で静止した彼を、SS部隊の想像実現術が作り出した巨大な圧壊壁が押し潰した。 殲滅 抵抗は、わずか数分で終わった。 幕間 木呑は、風の策を実行に移す前に、身体を真っ二つにされ、絶命した。 尾山 登は、大地の助言さえ届かない高次元の攻撃に晒され、肉体を塵に還元され、絶命した。 リラスビは、自らが信じた攻略ルートの果てに、逃げ場のない時空の牢獄に閉じ込められ、精神を破壊され、絶命した。 最後に残ったのはレリックだった。彼女はボロボロになりながらも、短剣を握りしめていた。「まだ……まだ、私は……!」 しかし、ジアイが冷酷に告げる。「君の成長速度よりも、私の準備速度の方が速い。君が何かを学ぶ前に、私はそれを無効化する術具を完成させる」 SS部隊の一人が、無限万能術を用いて、彼女の心臓の位置に「虚無」を創造した。レリックは絶叫することさえ許されず、光に飲み込まれ、絶命した。 結末 戦場に静寂が戻る。死体は一つとして残らず、ザグヱラ機関の完璧な処理によって消滅した。 「想定通りですな」 ラッグが手帳を閉じる。ミルエは退屈そうに目を閉じた。彼らにとって、この戦いはただの事務作業に過ぎなかった。 生存者:なし 【ザグヱラ機関:完全勝利】