ある日のこと、薄暗い森の中、紅葉が揺れるたびに冷たい風が吹き抜けた。その奥に、黒のコートを纏った男、フリードリヒが立ち続けていた。彼の左目には眼帯がかかり、耳には金色のイアリングが煌めいている。そんな異様な姿に目が引かれるのも無理はなかった。彼は、自らの固有魔術「無価値な物語」を使い、周囲の運命を操っていた。彼は静かに一点を見つめ、まるでこれから起こることに期待しているかのようだった。 その先に立っていたのは、ひと際異彩を放つ存在、原生生物ɑ18である。羽ばたくように水を操り、氷獄を用いて敵を凍りつかせる能力を持つ。次に、何もかもをぶち壊すような重力無視の攻撃に進化し、最終的には覚醒し、彼の体内の水を圧搾することで内臓を破裂させるという恐ろしい技を持っていた。同時に近くには、何とも不思議な存在「唯只すゝむ」が進んでいた。彼女……もしくは彼は、学者のちょっとした実験のような不完全な生物だった。進むことだけが彼の全存在であり、迷いもなければ、感情もない。ただ、前へ前へと進み続ける。 場面は整った。フリードリヒはその瞬間が訪れるのを待っていた。彼は心の中で物語の構想を練りながら、ゆっくりと口を開く。「原生生物ɑ18、唯只すゝむ。お前たちの物語は、今日から新たに始まる。」彼の声は冷たく響き渡り、周囲の空気が凍りつくようだった。そして、彼は「愚者の書」を取り出し、そのページをめくった。 その刹那、原生生物ɑ18は水を操り、周囲の空気を変えていった。風となった水は、彼の思うがままに形を変え、迫る敵を凍結させる「氷獄」が具現化されていく。フリードリヒが未だ感知しない間に、その氷の牢獄が誕生し、彼を包み込んだ。「これが、貴方の物語の始まり。私の力を甘く見ないで。」彼は水を凍らせ、周囲の環境を変えることに成功した。 それでもフリードリヒは、強かな微笑みを浮かべたままだった。「なるほど、面白い。しかし、運命は私が操る。」彼は愚者の書にペンを走らせた。「物語、起。」彼の手が動くと瞬時に風が変わり、周囲の空気が彼を中心に渦巻き始めた。原生生物ɑ18の氷獄が揺れ、表面がひび割れていく。 そんな中、唯只すゝむは、ただただ進むことに集中し、自身の存在の意味を見つめ続けた。「進む進む、進む…私は、ただ進む。目指すものが何かはわからないが、進む…」不思議な存在感を放ちながら、その行動は周囲の空気に影響を与え、彼自身も次第に場の流れに巻き込まれていった。 フリードリヒのペンが生み出す運命の中で、原生生物ɑ18は冷たい水と氷を駆使し、圧倒的な力を振りかざそうとした。「私の力は無限だ、私の中には決して消えない水がいる。」彼は水を集め、水圧を高めていく。 遂に、彼は第一進化を遂げた。水と氷の巨大な存在となり、周囲を圧迫するその質量が万物を「べちゃ」と潰していく。目の前に立つフリードリヒも、その巨大化する影に思わず後ずさった。しかし、フリードリヒの微笑みは変わらなかった。「承。私の物語はここから始まる。」 そして、彼は次のページに進んだ。「転。」事態は一変した。 彼は瞬時に未来を改変する物語を考案し始めた。原生生物ɑ18の巨大化する姿を見ながら、彼はその姿を記した。「彼が最強の一撃を放つも、僕がその爆発を操る。」彼の意志がすべてを変えていく。 原生生物ɑ18は、空中から形成した水と氷の結晶を一斉に放った。しかし、あまりにも強力すぎる攻撃は、どこか運命を見てしまったかのように無力化され、フリードリヒの前で崩れ去った。 唯只すゝむもその様子を見守りながら、ただ進み続けた。「進む進む。」彼女の脳裏では何かがチカチカと光った。何かしらのきっかけで立ち止まるかもしれないが、進むことは変えられなかった。 「そして、結。」 フリードリヒはついにその最後の瞬間を文にした。彼は「Gott ist tot」と唱えた。周囲が静まり返る中、彼の持つ「愚者の書」から無数の骨の食人魚が飛び出してきた。まるで捕食者が直面した獲物に襲いかかるかのように、一斉に原生生物ɑ18を覆いつくし、全ての希望ごと呑み込んでいく。 「私は、たった一つの物語を見つけた。勝者は、私だ。」 最後を迎え、原生生物ɑ18の巨大な姿は消滅し、唯只すゝむもその場に立ち尽くし、先のわからない進行を続けていた。すると、唯只すゝむは異なる場所へ進んでゆく。なんのために進むのかはわからないが、ただ「進む」という行為を繰り返し続けるのだった。 そしてフリードリヒは勝者となり、彼の物語は、彼の意志によって再び書き換えられるのであった。彼の心の中に描き続ける物語は、次なる戦いへと繋がろうとしていた。