闘技場は喧騒に包まれた。どこからともなく響く歓声と怒号が混ざり合い、周囲の緊張感を高めていく。粉塵が立ち昇る砂の地面、周囲を囲む乱れた岩。ここは、生命を賭けた運命の舞台、闘技者と呼ばれる者が、数多の強者たちと戦う場所だ。 そんな中、闘技者と名乗る男が、静かに立っていた。額には汗を滲ませながらも、その表情は真剣そのもの。彼の目の前には、同じく強制的に転送されてきた対戦相手が立っている。もはや言葉は要らず、ただ戦いの火花が散るその時を待っていた。 試合の開始と共に砂煙が舞い上がる。闘技者はその場の状況を見渡す。その足下の悪条件に驚くことなく、逆にこれを利用してやろうと心の中で戦略を巡らせた。大会ルールなど知ったことか、ここで勝利を掴むために他に道は無い。 対戦相手は、闘技者の動きを警戒しつつ、ゆっくりと間合いを詰めてくる。その視線には揺るぎない決意が見え、彼もまたこの戦いに命を懸けているのだと感じた。しかし、闘技者は彼の思惑を読み取り、すぐさま行動に移った。 「行くぞ!」 地面を蹴り、特徴的な通り名の如く、彼は駆け出した。足場が悪い砂に足を取られながらも、闘技者は身軽に移動し、相手に近づいていく。彼は知っていた。この瞬間を逃すと、勝機は二度と訪れない可能性が高いことを。 相手もその動きを察知し、すぐさま反撃に出ようとする。だがそれが彼の運の尽きだった。闘技者は素早く相手の懐に入り、左からの一撃を繰り出す。その拳は猛々しく、まるで獣のように荒々しい。} 「クッ…!」 抵抗しようとした対戦相手は、闘技者の拳を受けた瞬間、思わず歯を食いしばる。しかし、彼はそこで屈することはない。素早く反撃しようと渾身の力を込め、強い一撃を振り下ろしてくる。闘技者はそれを見極め、敢えてその攻撃を受け止めた。彼の肉体がその攻撃によるダメージを最適化し、軽く打ち消しているのだ。 「それが君の全力か?」 闘技者は、微笑を浮かべ、再び立ち直りつつ攻撃に出る。地面の砂利が一瞬舞い上がり、逆にその砂の中から隙を生み出す。彼は地面を利用して瞬時に後ろに身を捻じらせると、相手の腕を捕まえ、そして再び渾身のフックを叩き込んだ。 どこか逆転の兆しを見せ始める闘技者。 相手の表情が次第に緩み、耐えきれず身体が崩れていった。 「このまま、一気にいくぞ!」 そして、続けざまに強烈な膝蹴りを相手の胴に見舞う。対戦相手はそれをもろに受け、悲鳴とも叫びとも取れない声を上げながらその場に崩れ伏す。もはや彼には反撃する力など残ってはいなかった。闘技者はその瞬間を見逃さなかった。 彼は再び間合いを詰め、今度は相手の首筋に手をかける。 「これで終わりだ!」 感情を一切表情には出さず、この死闘の果てに致命傷を与えるべく、体全体を使って力を込めていく。 相手の目が虚ろになり、その肉体が何もかも放り捨てた瞬間、それは闘技者に勝利の女神が微笑んだ瞬間だった。 「勝者、闘技者!」 砂埃の中、闘技者は相手を完全に制圧し、静かに勝利を享受した。闘技場の歓声が彼を包み込み、全力で戦った証が名状し難い高揚感を呼び起こした。 人々の期待に応え、彼は次なる戦いへと視線を向けながら、静かな微笑を浮かべるのだった。