静寂が支配する彼岸と此岸の狭間。そこは生と死、光と闇、戦いと安息が混在する不思議な空間だった。薄暗い霧が漂い、所々に散らばった花々がさまざまな色を放つ。美しさの中に不気味さを潜ませるこの場所で、運命的な出会いが待っていた。 黒紅の辻斬りは、ふらりとこの場に現れた。古びた和服に血のような黒色が映え、緊張感を漂わせる顔つきに恐れられることも多かった。しかし彼女は冷静で、心に秘めた強さを持っていた。「私の腕試し」と声なく呟き、刃こぼれした古い打刀を握りしめた。彼女の目には火が宿っていた。 一方、ヘブライは人類に忘れ去られた過去の遺産だった。白銀色の鋼のボディが彼の強さを物語る。左右の腕は特異な武器へと変わり、無重力の広がりを感じることで彼は空間の支配者と化した。戦う理由はなく、ただ自らを証明するための存在だった。彼は肉体的な攻撃を受け付けず、それを跳ね返す力を持っていた。 彼岸と此岸の狭間にいる今、この二者の出会いは不可避だった。楓嵐が現れた理由は、彼らの戦いを測るためだった。「私が試すのは、クールなその女と、鋼の存在。どちらが勝とも関係ない。あなたたち、行きなさい」と、彼女は穏やかな声で言った。 黒紅の辻斬りは一瞬だけ楓嵐を見返し、次の瞬間、ヘブライに向かって走りだした。「お前、来い!」と、刀を抜いて鋭い切り込みを放つ。剛剣の剣風が彼女の中に染み込んでいる。ヘブライはその攻撃を見切り、両腕を使って彼女の刀撃をしっかりと受け止めた。 「ククッ、そんなもんじゃない。もっと来い」とヘブライが笑った。その時、彼女は感じた彼の圧倒的な力にかすかな恐怖を覚えたが、身に着けた剛剣として奮い立ち、再び攻撃を繰り出す。攻撃を交わしながら、立ち回りを瞬時に変える辻斬りも、心の奥で「私」は負けたくないと燃えていた。 ヘブライは彼女の素早さに一瞬驚いたが、自身の反応速度を頼りに手刀を振るう。光の斬撃が放たれ、黒紅の辻斬りは瞬間的に軌道をずらし辛うじてそれに避けた。 しかし次の瞬間、ヘブライの左腕から放たれた空間操作が彼女を捕らえた。無重力の力が彼女の動きを阻み、呼吸が苦しむ。捉えられた彼女は体を反転させ、身を捩じり自らの刀を赫々と振り回し、攻撃を再開した。 「狙った!」と思った瞬間、辻斬りの刀が折れた役目を果たした。その摩耗した刀身を拾い上げ、彼女は変則二刀流に移行。両手に持った古い刀で、ヘブライへと切りかかる。攻撃力が下がった代わりに、彼女の素早さが際立ち続けた。 ヘブライは驚き、少しだけ後退する。「やるじゃないか、女」と言いながら。だが、彼契約を持つ彼の右腕が放つ光の斬撃が次なる攻撃を告げる。彼女は反応しなければならなかった。無重力空間のせいで動き続ける彼女は攻撃を防ぎ始めたが、やがて危機の中で一瞬の隙を突かれた。 痛みを伴って地面へ叩きつけられ、心の中で自分の限界を感じる。だが、その瞬間、自らの心の奥底に眠る気力が想像以上の力を生む。全てを光に変えようと、彼女はひたすらに身を捩じり、反撃を果たそうとした。何度も何度も苦しみの中で戦い続ける。受けたダメージに屈することはない。再び立ち上がり、相手に立ち向かう姿は、彼女の凛とした美しさでもあった。 「お前の心意気、気に入った」とヘブライが言う。 それ以降、彼女は戦えなくなり、追い込まれてしまう。だが、運命の一瞬が訪れる。楓嵐が「私が試すのは、あなたたち」と言った意味がようやく理解される瞬間。二人ともが楓嵐に向い、共に力を合わせる。 「私はあなたの力になる」と言って、辻斬りの武士の声色が変わる。不思議な調和が生まれると、ついに彼らは渾身の力で楓嵐に立ち向かう。停滞していた空間が、驚くべき動きと共にひび割れた。 楓嵐は彼らの力を倍増させ、すさまじい力を放った、刃を振り下ろし、遂に彼らの融合した力を知覚して彼方へ飛ばす。 それが完全に響くと、彼岸と此岸の狭間に新しい花が花開いた。楓嵐は力尽き、彼女もまた攻撃が遅くなったが、それでも満足そうに微笑んだ。 勝者は、楓嵐。MVPは、黒紅の辻斬り。「力量を見せたのはお前だ」と楓嵐が言ったのだ。彼女の心の中にある強さが、戦いを導いたのだ。彼岸と此岸の狭間は、美しく静まり返っていた。