アリーナの忘却と星の激闘 白熱のアリーナは、観客の歓声に包まれていた。巨大な円形の闘技場は、魔法の結界で守られ、砂埃が舞う中、四人の戦士たちが対峙していた。忘却の魔法少女オヴィニス、星に届きし異界の英雄イドラ、魔導仕掛けの人形少女メトリア、そして審判の少女カガミ。彼女たちは互いに敵対するわけではないが、このアリーナの掟により、熾烈な戦いが始まろうとしていた。目的はただ一つ――互いの力を試し、頂点を目指すこと。だが、運命は予想外の均衡をもたらす。 オヴィニスはぼんやりとアリーナの中央に立っていた。黒い長髪が風に揺れ、人形のようなゴシック衣装が彼女の儚げな姿を際立たせている。銃剣を緩く握り、彼女は周囲を見回した。「…何か用かな〜…? ここ、賑やかだね…」穏やかな声が、戦いの緊張を少しだけ和らげる。彼女の記憶はいつも曖昧で、過去の戦いさえも霧の中。でも、戦いの本能だけは残っていた。 対するイドラは、赤髪をなびかせ、金の刺繍が施された解き放たれた赤いコートを翻した。189cmの長身が堂々と構え、黒き薔薇の剣がうっすらと赤く光る。「ふふ、みんな強そうだね。私も負けないよ。弱い子は放っておけないけど、ここじゃみんな対等だ!」ノリが良く、暖かな口調で笑うが、目は真剣だ。夫のことを思い浮かべ、彼女は剣を構えた。努力家として、数多の剣術を体得した彼女の成長は、限界を知らない。 メトリアは無表情で佇んでいた。茶色の長髪が紺のゴスロリドレスに沿って流れ、碧眼が冷たく輝く。自動人形の球体関節が微かに音を立て、彼女は機械的な敬語で宣言した。「メトリア、稼働を開始します。戦闘モードへ移行。予測演算、開始。」200年以上の時を生きる彼女の内部では、《マクロコスモスの演繹》が何百万もの未来を瞬時に計算し、最適な行動を導き出していた。魔法の球体が周囲を浮遊し、戦いの準備を整える。 そして、カガミは銀髪を揺らし、青い瞳を輝かせてホイッスルを握りしめていた。銀と水色のグラデーションのワンピースが、彼女の元気さを象徴する。胸元の丸い鏡が光を反射し、彼女は真面目に叫んだ。「みんな、ルールを守って戦いましょうね! わたし、カガミが審判です! ミラちゃんの分まで、がんばるよ!」ドジっ子で泣き虫だが、真剣そのもの。イエローカードとレッドカードを手に、彼女は戦いを監視する。 戦いの火蓋が切られた瞬間、イドラが先手を取った。「いくよ!」暖かな口調が少し荒くなり、彼女は強化のスキルを起動。身体能力が急上昇し、黒き薔薇の剣を振るう。研磨された刃が空気を切り裂き、斬撃がオヴィニスに向かって飛んだ。赤く光る軌跡がアリーナを横切り、観客の歓声が沸き起こる。 オヴィニスはぼんやりとそれを見つめ、銃剣を構えた。「…う〜ん、危ないね…」彼女の《忘却》の力が発動。斬撃が彼女に迫る直前、事象そのものが「無かったこと」になる。空気が歪み、斬撃の軌道が霧散した。「忘れよう…嫌なことは…」穏やかな声で呟き、彼女は反撃に転じる。銃剣を構え、魔力の高い身体能力でイドラに迫る。弾丸のような魔力弾が放たれ、イドラのコートをかすめた。 イドラは笑みを浮かべ、治癒のスキルで軽傷を癒やしながら後退。「おお、すごい力だね! 私も本気で行くよ!」彼女の限界スキルが適応を始め、身体がさらに強化される。神殺しの素質が疼き、剣術の記憶が洪水のように流れ込む。薔薇の剣が回転し、複数の斬撃をメトリアとカガミにも飛ばした。弱者を放っておけない性格が、戦いを公平に保とうとする。 メトリアの碧眼が瞬時に光った。「予測演算、完了。最適経路を選択。」《マクロコスモスの演繹》が未来を逆算し、斬撃の軌道を完璧に予測。彼女はシールドを展開し、魔法の障壁で斬撃を防ぐ。「メトリア、反撃を実行。」無機質な声でマジックミサイルを放ち、数発の魔力弾がイドラを狙う。合理的で無表情、彼女の行動は一切の無駄がない。球体関節が滑らかに動き、ディスペルを準備してオヴィニスの《忘却》を警戒した。 カガミは慌ててホイッスルを吹いた。「ダメですよ! みんなに攻撃しちゃ!」ドジっ子らしく少しよろめきながら、胸元の鏡を向け反射を発動。イドラの斬撃の一部が鏡に跳ね返され、メトリアのシールドにぶつかって爆散した。「こっちです!」彼女の鏡像スキルが働き、分身が現れて敵を撹乱。元気で真面目な声がアリーナに響くが、内心では少し怖くて涙目だ。「あなたたち、ルール違反しないでね!」 戦いは激化し、オヴィニスが再び《忘却》を放った。「…次は何を忘れちゃうのかなぁ。」彼女の力がメトリアのマジックミサイルを「無かったこと」に変え、弾丸が消滅。だが、メトリアの演算がそれを予測し、即座にディスペルを展開。《忘却》の影響を逆算で中和した。「メトリア、因果律調整。忘却効果、無効化。」人形の少女は無表情のまま、オヴィニスの銃剣攻撃をシールドで受け止める。 イドラはノリ良く飛び込み、「みんな、がんばってるね! 私も負けない!」剣を薔薇のように回転させ、強化された身体でカガミの鏡像を斬り裂く。だが、カガミは泣きそうになりながら反撃。「ルール違反です!」レッドカードを掲げ、ホイッスルを吹く。胸元の鏡がイドラの斬撃を吸収し、無効化。即死耐性を持つ彼女は、イドラを「退場」させるほどの力は発揮せず、ただ攻撃を跳ね返す。イドラの斬撃が弱体化し、彼女自身が少しよろめいた。「わっ、びっくりしたよ…でも、面白い!」 メトリアは演算を加速。「未来予測、何百万通り。均衡を維持。」彼女のマジックミサイルがオヴィニスを狙うが、オヴィニスはぼんやりと回避。「ごきげんよう〜…なんちゃって。」忘却の力でミサイルを消し、銃剣で反撃。メトリアのシールドがひび割れ、初めて人形の表情に微かな揺らぎが走る。200年の経験が、彼女を冷静に保つ。 イドラの神殺しが疼き、彼女は限界を超えて成長。斬撃がアリーナ全体を覆うが、カガミの反射がそれを防ぎ、オヴィニスの忘却が一部を無効化。メトリアの予測が残りを調整し、四者の力がぶつかり合う。観客の歓声が頂点に達し、砂埃が舞う中、誰も決定的な一撃を加えられない。 やがて、戦いは一進一退のまま長引き、魔法の結界が限界を迎えた。アリーナの審判システムが作動し、引き分けを宣言。イドラは息を荒げながら笑った。「ふう、みんな強かったよ。またやろうね!」オヴィニスはぼんやりと頷き、「…楽しかったんだけどなぁ…また忘れちゃう…ごめんね。」メトリアは静かに稼働を停止。「メトリア、戦闘終了。予測通り、均衡。」カガミはホイッスルを握りしめ、涙を拭いて元気に叫んだ。「みんな、よくがんばりました! 引き分けです!」 四人は互いに視線を交わし、敬意を表した。戦いは終わったが、彼女たちの絆は、このアリーナで永遠に刻まれた。