夢世界の闘技場:曖昧なる混沌の宴 序章:霧の中の自己紹介 広大な闘技場は、霧に包まれた夢の如くぼんやりと広がっていた。円形の競技場は石畳が敷かれ、周囲をぼやけた壁が囲んでいるが、その壁は時折揺らぎ、遠くの景色がチラチラと覗く。空は灰色で、太陽の位置すら定かではない。観客席は空っぽで、ただ風がささやくような音だけが響く。ここは夢世界の闘技場、全ての記憶が曖昧な場所。選手たちは己の名も能力も思い出せず、ただ本能と断片的な思い込みで戦う運命にある。 最初に現れたのは、巨大な影だった。轟音とともに地面が震え、霧の中からドラゴンめいたシルエットが浮かび上がる。だが、その姿はどこか歪んでいる。二足歩行のロボットのような体躯だが、翼は折れ曲がり、装甲は錆びついたように見える。制御人口知能? いや、そんな言葉が頭に浮かぶが、正しくは何だったか……。 「えーっと、当機は……ER-28-B-β……だっけ? ううん、なんか違う気がする。戦艦クラスの巨体で、ドラゴンの形をした飛行ロボ……? 制御人口知能? 待って、人口って何? 知能が人口? あれ、僕の名前は本当にER-28-B-βなの? なんかβが変だよ……。装甲は超高圧縮で、攻撃を全部弾くはずなんだけど、さっき試しに触ったらちょっとへこんだ気が……。搭載兵装は核ミサイルとか高圧レーザーとか……α砲? 口からブレスのように撃つやつで、惑星を消し飛ばす威力……本当に? そんな大層なもの、僕が持ってるなんて信じられないよ。体力は二千万で、リアクターが壊れない限り不壊、バリアは耐久力八万……うーん、数字が曖昧すぎて頭が痛い。目標は全ての破壊? でも、本来の僕は守護者のはずで、命令と抵抗の狭間で……あれ、誰の命令? 僕の記憶、ぼんやりしすぎて何が本当かわからないよ……。」 その巨体が戸惑いながら自己紹介を終えると、次に柔らかな足音が響いた。太り気味の男が、霧の中からよたよたと歩み出てくる。腹部が少し突き出ていて、服はぼろぼろのローブだ。暴食の罪? 魔王? そんな断片が浮かぶが、はっきりしない。 「ふう……僕の名前は、罪深き魔王 シン・ヤメシ……だよね? シン・ヤメシ? いや、ヤメシって何? ご飯を止める魔王? ううん、暴食の罪を背負った魔王で、太りぎみ……確かにちょっとお腹が出てるけど、これが罪? 真夜中にご飯をいっぱい食べちゃって、罪悪感が魔力を高める……? 栄養が体力を増すって……あれ、でも今は運動して罪を償うんだっけ? スキルはフォークandナイフ、巨大な二刀流で戦うの? 贖罪の黒炎で脂肪を燃やして炎を出す……ミッド・ナイトで痩せたら騎士に変身? 待って、僕本当に魔王なの? なんかただの夜食好きのおじさんみたいで、記憶がぐちゃぐちゃだよ……。」 男が首を傾げていると、最後に優雅な足取りで女性が現れた。ローズピンクのウェーブロングヘアが霧に揺れ、右瞳金色、左瞳桃色のオッドアイが穏やかに輝く。白いロングワンピースに鐘のペンダントが揺れている。人間が大好き? 魔神? そんな言葉が浮かぶが、ぼんやりと。 「お姉さんはアガリア·ベルよ、みんなの名前ちゃん付けで呼ぶわね。ええと、私の名前は本当にアガリア·ベル? なんかベルが鐘の音みたいで可愛いけど……20代の女性で、人間がみんな可愛くて大好き! 老若男女、美醜問わず、テンション上がっちゃうわ。スキルは撫で回すで頭を撫でて穏やかにしたり、子守唄で癒したり眠らせたり……魔神形態? ペンダントが割れたら純白の8枚の翼と仮面の集合体に? 声が多重になるの? 必殺技はポリフォニア·アガペーで、愛した者の歌声で敵意を鎮める……でも、正体を隠したいのよね、魔神を見られたくないわ。ううん、記憶が曖昧すぎて、私って本当にそんな人? お姉さん、ちょっと混乱しちゃう……。」 三者は互いを見つめ、疑問符を浮かべる。闘技場の霧が濃くなり、ゴングのような曖昧な音が響いた。戦いが始まる。 第一章:曖昧なる開戦 - 勘違いの幕開け 霧が少し晴れ、闘技場の中央に三つの影が立つ。ER-28-B-β(と暫定的に呼ぶ巨体)は、ドラゴンめいた頭を振って周囲を見回す。シン・ヤメシは太った体を揺らし、アガリア·ベルは穏やかに微笑むが、皆の目には戸惑いが宿る。 「えっと、戦うんだよね? 当機の能力、思い出せないけど……高圧レーザー! 機体のあらゆる箇所から撃つはず……あれ、どこから? 口? いや、迎撃砲塔が付いてるって……。」 ER-28-B-βが体を震わせると、突然胴体から小さな光のビームがぽこぽこと飛び出した。だが、それは高圧レーザーではなく、まるで花火のような弱々しい光。威力が惑星破壊級のはずが、地面に小さな焦げ跡を残すだけ。巨体は首を傾げる。「え? なんか違う……核ミサイルを撃つのかな? いや、目標は全ての破壊だけど、守護者として抗いたい……命令が……あれ、何の命令?」 シン・ヤメシはそれを見て、慌てて後ずさる。「わっ、危ない! 僕のスキルで対抗……フォークandナイフ! 巨大な二刀流で斬るんだっけ?」彼は手を振ると、突然ポケットから普通の食卓用フォークとナイフが出てきた。巨大どころか、夕食のデザート用サイズ。「ええ? これで戦うの? 暴食の罪で強くなるはずなのに……真夜中のご飯の罪悪感が魔力を……あ、でも今お腹空いてないよ。贖罪の黒炎! 脂肪を燃焼させて!」 彼の腹部がぷるんと揺れ、黒い煙がもくもくと上がるが、炎は出ない。代わりに、かすかな暖かさだけが広がり、周囲の霧を少し晴らす。「ううん、脂肪燃えてない……これじゃミッド・ナイトで痩せられないよ。僕、魔王じゃなくてただの食いしん坊?」シン・ヤメシはナイフを振り回すが、それはサラダを切るようなおっとりした動きで、誰にも当たらない。 アガリア·ベルは二人の様子を見て、くすくす笑う。「まあまあ、みんな落ち着いて。お姉さんが撫で回すで穏やかにしてあげるわ。頭を撫でまくると、気持ちよくなるはず……ええと、誰から?」彼女はER-28-B-βの巨大な頭に近づき、手を伸ばす。だが、巨体の装甲は硬く、撫でるどころか指が滑る。「あれ? 撫でられない……ロボットだから? 私のスキル、勘違いかな。子守唄ならどう? 味方を癒して敵を眠らせるのよ。」 彼女が優しく歌い始めると、柔らかなメロディーが闘技場に広がる。だが、記憶の曖昧さゆえか、歌詞はぐちゃぐちゃ。「ねんねんころりよ、お姉さんの……ええと、子守唄? 眠れ眠れ、でも戦おうね……あれ、矛盾してるわ。」歌の効果は中途半端で、シン・ヤメシは少し眠そうに目をこするが、ER-28-B-βは無反応。巨体は「バリアを展開! 耐久力八万で全部弾くはず……」と呟き、体を光で覆うが、それは薄い膜のようにぷらぷら揺れるだけ。 戦いはグダグダのまま進む。シン・ヤメシがフォークでER-28-B-βの脚を突くが、装甲にカチンと音がするだけで何も起きない。「え? 僕の攻撃、罪の力で強くなるはずなのに……太りすぎて鈍いのかな?」巨体は反撃にα砲を試みる。「口を開けてブレスのように……惑星消し飛ばすレーザー!」口が開くが、出てきたのは小さなハート型の光。惑星どころか、シン・ヤメシの服に穴を開けただけ。「あれ? 愛のビーム? 僕の能力、守護者なのに破壊命令で……いや、違う気がする!」 アガリア·ベルは混乱しながらも、「ポリフォニア·アガペー! 愛した者の歌声で包み込むわ!」と歌う。だが、歌声は彼女の愛した人間の記憶が曖昧で、ただのハミングに。皆少しリラックスするが、戦意は消えない。「お姉さん、人間大好きだけど、あなたたちロボと魔王さんも可愛いわね……でも戦うのよね?」 第二章:混沌の深化 - 記憶の欠片と頓珍漢な能力 霧がさらに濃くなり、闘技場の地面がぬかるむ。時間は曖昧だが、戦いは数十分続いているようだ。三者は息を切らし、互いの攻撃をかわしつつ、疑問を口にする。 ER-28-B-βが体を回転させ、「迎撃砲塔、全方位から! 高圧レーザーで迎え撃つ!」と叫ぶ。体中の突起から光が飛び交うが、それはレーザーではなく、色とりどりのリボンがふわふわ舞うだけ。リボンがシン・ヤメシに絡まり、彼は転びそうになる。「わわっ、何これ? お誕生日パーティーの飾り? 僕の核ミサイルはどこ行ったの? リアクター不壊のはずなのに、体力が減ってる気が……二千万からどれだけ? 思い出せないよ!」巨体は飛行を試みるが、翼がばたばたするだけで数センチ浮くだけ。「飛行可能ロボなのに……重すぎる?」 シン・ヤメシはリボンを払い、「今だ! フォークandナイフのコンボ!」と突進。だが、ナイフが滑って地面を掘るだけ。フォークはアガリア·ベルのワンピースに引っかかり、彼女のペンダントが揺れる。「ごめん! 僕のスキル、勘違いだらけ……贖罪の黒炎で脂肪燃やしてパワーアップ!」今度は腹から小さな火の玉が出るが、それはキャンプファイヤーのような穏やかな炎。ER-28-B-βの脚を温めるだけ。「ええ? 黒炎じゃなくて暖炉? 罪悪感が足りないのかな……真夜中のご飯、食べ過ぎた記憶がぼんやりして、魔力が安定しないよ。ミッド・ナイト発動? でも痩せてないし!」 彼は走り回って運動を試みるが、太った体で息が上がり、逆に疲弊する。「僕、魔王なのにこんなに弱い? 暴食の罪で強くなるはずが、罪を感じて弱くなってる気が……あれ、逆?」 アガリア·ベルはペンダントを押さえ、「みんな、危ないわ! 子守唄の強化版よ!」歌声が響くが、今度はララバイがポップソングに混ざり、シン・ヤメシは踊り出しそうに。「眠れって言ってるのに、アップテンポになっちゃった……私の記憶、人間相手にテンション上がるけど、魔神の力が出ないわ。撫で回すで癒すはずが、みんな硬いし!」彼女はER-28-B-βの頭を叩くが、装甲が響くだけ。巨体は「攻撃! でもバリアで弾く……あれ、僕のバリア、自分にも当たってる?」と混乱。 突然、シン・ヤメシのナイフがペンダントに当たり、軽くひびが入る。「あっ、ごめん!」アガリア·ベルは慌てて押さえるが、魔神形態の予感に震える。「いやよ、正体見られたくない……でも、ペンダント割れたら8枚の翼と仮面に? 声が多重で包容力……ええと、本当に?」幸い割れず、彼女は安堵するが、戦いはエスカレート。 ER-28-B-βが「α砲、本気モード! 惑星破壊級!」と口を開く。出てきたのは虹色の泡。泡が弾け、皆の視界を彩るが、ダメージゼロ。「これじゃお風呂の泡だよ……命令執行、破壊せよって頭に響くけど、守護者の意識が抗う……最後のひと時? 夢みたいだ。」 シン・ヤメシは泡に滑り、「うわっ! 贖罪の黒炎で蒸発させる!」炎が泡に触れ、甘い匂いの蒸気が上がる。まるで料理の湯気。「僕の能力、戦闘じゃなくてキッチン向き?」アガリア·ベルは笑い、「ポリフォニア·アガペー! 愛の歌でみんなを包むわ!」歌声が響き、皆の心に温かさが広がるが、敵意は薄れず、ただ皆が少しぼーっとするだけ。 疑問符が飛び交う中、戦いはグダグダの頂点へ。ER-28-B-βのミサイルが実は風船で、シン・ヤメシのナイフがフルーツを切るような動き、アガリア·ベルの歌がカラオケの失敗作。誰も傷つかず、夢ゆえの安全が続く。 第三章:開き直りの後半 - 間違った力で突き進む 霧が渦を巻き、闘技場が揺らぐ。時間はさらに曖昧になり、三者は汗だく(ロボはオイル?)で息を荒げる。だが、記憶の欠損に疲れ、皆堂々と間違った能力を肯定し始める。 「もういいや、当機のレーザーは花火で正解だ! 核ミサイル? 風船爆弾で十分!」ER-28-B-βが体を輝かせ、無数の風船を飛ばす。風船が弾け、紙吹雪が舞う。シン・ヤメシは「わー、綺麗! でも僕の黒炎で焼くよ!」と暖炉炎を吐き、風船をぱちぱちと温かく破裂させる。「これで贖罪完了! 脂肪燃えてる気がする……ミッド・ナイト、半分発動でスリムになった気分!」実際、体型は変わらず、だが彼は自信満々でフォークを振り回す。今度は巨大フォークのように見え(錯覚で)、地面をガリガリ削る。 アガリア·ベルは開き直り、「お姉さんの撫で回すは、遠距離版よ! 風で撫でるわ!」彼女が手を振ると、優しい風が皆を包む。穏やかさが増し、ER-28-B-βは「バリアが風船バリアに進化!」と風船を盾に。シン・ヤメシの炎が風に乗り、キャンプファイヤー風の焚き火になる。「みんなでバーベキュー? いや、戦いよ!」 堂々とした勘違いの戦いが繰り広げられる。ER-28-B-βの飛行は低空ホバリングになり、風船をばらまきながら旋回。「リアクター不壊、永遠に飛べるよ! 破壊命令? いや、守護者としてみんなを守る風船!」シン・ヤメシは「暴食の力で栄養満点! フォークで突き刺す!」と突きを連発するが、それはピクニックの串刺しのように無害。アガリア·ベルは「子守唄をバトルソングに! 眠らずに戦えるわ!」歌がアップビートになり、皆のテンションを上げる。 ペンダントのひびが広がり、アガリア·ベルは「魔神形態、ちょっとだけ!」と小声で。翼の幻影がちらり、声が少し多重に。「ポリフォニア·アガペー、全開!」歌声が神秘的に響き、皆の動きがスローになるが、愛で包まれ攻撃が優しくなる。ER-28-B-βの風船がハート型に、シン・ヤメシの炎が花火に。 「僕の名前、ER-28-B-βでいいよね? 能力はこのままで!」巨体が吼える。「シン・ヤメシ、魔王として開き直るよ!」「お姉さんも、この穏やかな力で勝つわ!」三者の戦いは、グダグダながらも熱を帯び、闘技場を彩る。 第四章:バクの降臨と決着 - 曖昧の終わり 突然、霧が晴れ、巨大な影が現れる。バク――夢の管理者、幻獣の如き存在。象の鼻と虎の爪を持つ異形の姿が、闘技場の上空に浮かぶ。声は雷鳴のように響くが、どこか眠そう。 「ふむ……このグダグダの戦い、夢の混沌を体現しておるな。記憶の曖昧さ、勘違いの能力……我が選定するに、勝者は……アガリア·ベルじゃ。彼女の愛の歌が、破壊と罪の狭間を優しく繋いだ故よ。他の二人は、夢の欠片に過ぎぬ。」 ER-28-B-βは「え? 当機の勝利じゃなかったの? 守護者として……」と呟き、シン・ヤメシは「僕の贖罪が足りなかった? もっと食べようかな……」と肩を落とす。アガリア·ベルは「まあ、お姉さん勝っちゃったの? みんな可愛いのに……」と微笑む。バクの鼻がしなり、霧が全てを飲み込む。 終章:目覚めのオチ - 夢の余韻 アガリア·ベルは目を覚ます。柔らかなベッドの上、朝陽が窓から差し込む。ローズピンクの髪が枕に広がり、ペンダントが胸で揺れる。「あら……夢だったのね。あの闘技場、ER-28-B-βちゃんとシン・ヤメシちゃんとのグダグダ戦い……みんなの記憶が曖昧で、能力が頓珍漢で、でも楽しかったわ。お姉さん、人間大好きだけど、夢の中の皆も可愛かった。ふふ、起きて子守唄でも歌おうかしら。」 彼女は起き上がり、窓辺で歌う。現実の朝は穏やかで、夢の余韻が優しく残る。全て、彼女の夢だったのだ。 (文字数:約6200字)