廃ビルは、かつて繁華街の中心にそびえ立っていたが、今はその存在を忘れられたように静まり返っている。全体は8階建てで、設計は古典的なオフィスビルの面影を残している。各フロアには広めのオープンスペースがあり、窓は粉々になっているところも多く、無機物の破片が散乱している。階段は中央にあり、エレベーターは最上階へと続くもので、完全に動かなくなっている。 1階から2階は、かつて会議室や取引先との応接室として使用されていた場所で、今は古い家具や書類の山になっている。 3階には、ひときわ大きな窓のあるフロアがある。外の景色はほぼ見えないが、ここには簡易なカフェスペースが残っている。 4階から6階は、オフィス空間だったため、デスクや椅子が散らばっている。これらの物からは、何か武器を作り出すことも可能だろう。 7階は倉庫のように使われていたため、商業用の箱や未使用の備品が詰め込まれている。 最上階の8階は、かつての社長室だった。大きなガラス窓の向こうには廃墟と化した街が見える。だだっ広い室内は無機質で、物はほとんどないが、広いデスクと椅子が置かれている。 このビル内で、二人の戦いが繰り広げられる。 クリエは、4階の中央のオフィススペースで目を覚ました。周囲には古びたデスクや椅子が散乱しており、そのままでも攻撃に使えそうだ。彼女は、目をさましながら周囲の物質を手に取り、スキル《3Dプリンター》を発動させる。 「さて、どんな武器を作ろうか…」 彼女の手から発生する金属片と古い木材を取り込みながら、思い描くのは長い刀の形。瞬時に形を変え、元となる物質から新たな武器を生成する。 一方、Emptyは、7階の倉庫のような薄暗い空間で目覚めた。周囲にはダンボールや古い器具が山積みにされている。彼は特に焦りを感じず、冷静に状況を把握する。 「どこにいるのか…」 彼はこのビルの中で他者の存在を感じつつ、何が待ち受けているのかを考える。彼のスキルは非常に独特で、他者とは異なる立ち位置にいることを理解していた。「それ」が拒否する可能性もあれば、許可されることだってある。 クリエは、4階の風通しのよい窓のそばで刀を作り終え、周囲の物質を再度吸収して準備を整える。 「しっかり戦えそうだね。生存ゲームの始まりってわけだ。」 その時、彼女は階段を通る音を聞いた。「誰かがいる…!」 Emptyは、ゆっくりと階段を降りる音を聞きつけた。誰かが近づいてくる。彼は壁に隠れ、呼吸を整える。「見つかるなよ、自分…」 クリエは、音が止まったのを感じ、身を低くしながら周囲を観察する。フロアの端から人物が現れた。短髪の少年…彼がEmptyだ。 「いるな…!」 クリエは、刀を手に取り攻撃態勢を整える。彼女が最初の一歩を踏み出した瞬間、Emptyは影から飛び出し、瞬時に隠れた。 「ちょっとは緊張感を持たないと。」 クリエの目の前にはEmptyだった。彼はその冷静さを保ちながら 「君を許可する気はない。」と呟くが、不敵な笑顔を浮かべていた。「さあ、楽しもうか。」 戦いが始まる。クリエは急いで生成した刀を振りかざし、Emptyの影を狙う。彼女は、その動きのすばやさと巧妙さを駆使して、目の前の障害物を利用して隠れながら突進する。 「3Dプリンターの力で、この戦場を変えていく…!」 彼女の周囲の物質がどんどん集まり、彼女の背後で次々と防具や障害物が形成されていく。しかしEmptyは彼女の動きを冷静に見極めており、彼女が近づく度に後ろへと跳び、瞬時に避ける。 「それなりの努力をしないと、わけわかんないじゃん。」 Emptyの口元がゆがむ。「さあ、自分を試すがいい。」 敵の像を構築しつつ、クリエは周囲を利用して瞬時に背後を突こうとする。彼女の動きは速く、器用だったが、Emptyは彼女の行動を計算し、攻撃を完璧に無効化する。 「やればできるじゃん!」 Emptyがクリエの目の前に立つと、同時に影が動き、彼女の足元から物体が浮き上がる。 その瞬間、クリエは物体を自分の周囲に組み込んだ。 「計算外だよ!」 彼女は、目の前で生成された武器で一撃を繰り出すが、Emptyはそれを簡単に避けた。 戦闘は数時間続いた。クリエは物質を取り込みながら、次第に戦場を自分に有利な状況に持っていく方法を考え出していた。フロアはすでに彼女の生成した物で満たされている。 「どうやら、あんたもなかなかやるね。」 だが、Emptyは未だ冷静。彼のスキルは「許可・拒否」だけでない。彼はその場から瞬時に別の空間に移動する力も持っていた。 一瞬の隙を狙ってクリエに襲いかかるが、彼女は傍にある木製の障害物を盾にし、反撃する。「負けるわけにはいかない!」そう叫んで彼女は影とともに立ち向かう。 クリエは、ゆっくりとその場を取り囲んでいる物質の中から、より強力な武器を生成し始める。彼女の目標は、Emptyの手に過去に存在した物だと考え、その中から想像を超えた何かを生み出すことだ。 そして、クリエはタクトのような大型の武器を形成させた。細い金属の棒に感電する素材が根付いているものだった。 「これで…どうだ!」 大きな円錐形のタクトを地面にしっかりと浸けると、周囲一帯が電気を帯びた。 Emptyは明らかに警戒し、彼は横に跳ぶ。すかさずクリエが追従し、緊張した面持ちでタクトを向ける。 「これを待っていたの!」 タクトが空を切るその瞬間、Emptyは一瞬の隙を見せる。クリエが迫ってくる影に合わせ、彼の前に立って阻止する。 「どけ!」 その声が響くと同時に、彼女のタクトが光を放って周囲に広がり、彼女は力強く一振りした。 しかし、Emptyは笑顔でそれをかわし、彼はそのまま壁に沿ってスライドし続けている。 「無駄だ、あばよ。」 Emptyは目の前で反撃のタイミングを見逃さず、彼女の隙を突く。 一気に近づき、彼女の横を通り過ぎ、そして彼女の存在を消し去ろうとする。 が、その瞬間が彼女にとってのチャンスだ。 「それは許可されたくない。」彼女は冷静に動きながら構え直し、彼の背後を取った。 しかし、Emptyはそれを察知し、身をひねることでその場から消えた。しかしクリエは、直感でその行動を見越していた。 再び向かう彼女の瞬撃が、画面を突き破るように空気を切り裂く! 周囲の空気が一瞬静まりかえり、次の瞬間、クリエが生み出したタクトがEmptyの身体を貫いた。彼女は初めて感じた勝利の感覚をしっかりと自分のものとして実感する。 「やった…勝ったんだ…!」彼女は呟く。 Emptyは一瞬動きが止まり、そしてその影が崩れ落ちるように消失した。「やっぱ、すごい」と思いながらクリエは高鳴る鼓動を聞いていた。ビルの窓から日差しが入ると、彼女は全身に力が漲っていくのを感じる。 彼女は、失ったがまた新たな経験を得たことで、得たものの重みを実感した。 戦闘を終えた彼女は、ビルのエレベーターへと向かう。エレベーターはまだ動かなくなっていたが、出口に向かう選択肢は残されていた。 「こっちから出てやる!」 クリエは、階段を駆け上る。外の世界は完全に明るくなっており、青空が広がっている。 やがて、自分が勝者であることを誇示するかのように、彼女はビルの出口を押し開け、光の洪水の中に飛び込んでいった。