序盤:森の目覚めと不思議な来訪者たち 緑が異常に生い茂る森は、まるで中世の伝説から抜け出したかのように静寂に包まれていた。木々が密集し、苔むした岩が点在するこの場所で、巨大な影がゆっくりと動いていた。体高9メートルを超える鹿の姿──その角には色とりどりの植物が芽吹き、歩くたびに周囲の土壌が急速に緑化していく。『芽吹く角の鹿王』は、森の守護者とも破壊者ともつかぬ存在として、悠然と佇んでいた。 突然、空気が揺らぎ、異様な光が森を裂いた。まず現れたのは、洗練された演奏家、【伝説の演奏家】ピッヅァ・モッツァルト。黒い燕尾服に身を包み、バイオリンを構えた彼の周囲で、空間が歪む。瞬く間に、森の景色がコンサートホールの荘厳な内装に変わり、豪華なシャンデリアが天井から吊り下げられ、赤いカーペットが広がった。敵味方問わず、全てがこの幻のホールに転送される。オーケストラのメンバーたちが霧のように現れ、弦楽器や管楽器を手に演奏を始める。モッツァルトは一切言葉を発さず、弓を弦に滑らせ、荘厳な序曲を奏でる。【伝説の演奏家】ピッヅァ・モッツァルトはハンドサインで第一楽章を示し、音色が森の空気を震わせる。 演奏が響く中、もう一人の来訪者が現れた。【全国模試一位の天才頭脳を持つイケメンモテモテ粉バナナ系主人公】夜神 月──彼は電車の扉に頬を挟まれたまま、突然この異世界のホールに召喚されていた。扉は頑なに彼の頬を締め付け、抜け出せない状態で立っている。FBI捜査官レイ・ペンバーの最期の瞬間がフラッシュバックする中、月は苦悶の表情を浮かべる。「おぼふ……」と、くぐもった声が漏れる。デスノートは手の届かぬ場所にあり、彼の天才的な頭脳もこの滑稽な状況で活かせない。電車の扉は森の召喚に巻き込まれ、奇妙に浮遊している。 鹿王はこれらの異物を前に、角を軽く振るう。春の訪れが訪れ、柔らかな風がホール内を吹き抜ける。参加者たちに、動きを鈍らせる春風が纏わりつく。モッツァルトの演奏は風に抗うように続き、夜神月は扉に挟まれたままよろめく。鹿王の角が土に触れると、周囲のホールさえも緑の蔓で覆われ始め、即時森林化が進行する。序盤の戦いは、演奏の調べと風のささやきの中で始まった。