喫茶店Dallasでバトル 夜の喫茶店「Dallas」。窓の外では星がきらきら瞬き、店内では緑髪ツインテールのメイド、ライムちゃんがスマホでソーシャルゲームを遊んでいた。虹色のペンは、いつものようにエプロンのポケットから顔をのぞかせている。 その向かいには、ワインレッドの長い髪と銀色の瞳を持つバレガー・スクリアス。身長180センチの彼女は、元暗殺者とは思えないほど穏やかな笑みで、メニューを閉じた。 「アップルパイ、とてもおいしかったです。……ところで、ライムさん。お店の余興の試合、お願いできますか?」 「もちろんにゃー! 参加費は一人5000円だよ。勝っても負けても、店内のものは壊しすぎないでね!」 「その説明、最後が一番大事だな」 審判を務めるごついおっさんが腕を組んだ。筋肉質な体に黒革のジャケット、立派なあごひげ。若い頃は王宮に仕えた剣士だが、今は平和な常連客である。 「マスターD、参加費の確認を頼む」 「はいよ~。5000円いただき。ライムちゃんには規定どおり三割の1500円だにゃ~」 頭に魚を載せた三毛猫のマスターDは、丸眼鏡の奥でのほほんと目を細めた。ふかふかの毛並みからは想像できないが、店の経営は抜群にうまい。 「じゃあ、試合開始!」とおっさんが宣言した。 「よろしくお願いします」バレガーが礼をする。 「こちらこそ、にゃん! でも店内だから、テーブルとお客さんに当てないようにしよー!」 「配慮します。私、料理も交渉も格闘技もできますから」 「万能型だ! ギャグ漫画の主人公みたいな相手だね!」 バレガーは相手の動きに合わせて力を調整する。魔力と気配を探り、いつでも反撃できる構え。元暗殺者の経験は、店内でも隠しきれない。 ライムちゃんは一歩踏み出し――なぜか床の上で、きれいに滑った。 「わっ、床がピカピカ!」 そのままテーブルの下をくぐり、椅子の背を回って、なぜか元の位置へ戻ってくる。 「今のは攻撃ですか?」 「ううん、移動に失敗しただけだよ!」 「なのに、完全にこちらの照準がずれました……!」 ギャグ漫画のお約束である。予測不能な転倒は、時として高度な戦術を超える。 虹のペン ライムちゃんは虹色のペンを取り出し、メニューの余白にささっと絵を描いた。描かれたものが、ぽんっ、と実体化する。 描いた食材:巨大ぷるぷるプリン 効果: どこまでも弾む。上に乗ると跳ねるが、着地はなぜか安全。カラメル部分は床を滑りやすくする。 「食材を描いて戦うんですか?」 「喫茶店風ギャグ食材だよ! おいしくて安全!」 「安全の定義を確認したいところですが……」 ぷるん! 巨大プリンが弾み、バレガーの足元へころころ転がる。バレガーは素早く身をかわしたが、カラメルで靴底がつるりと滑った。 「おっと!」 倒れる――と思った瞬間、バレガーは見事な体幹で姿勢を立て直した。だが、その反動でプリンが跳ね上がり、天井すれすれまで飛んでいく。 「おお、見事な受け身!」とおっさん。 「ありがとうございます。……プリンが天井にいますね」 「落ちてくる前に、次を描くにゃー!」 ライムちゃんはペンを走らせる。 描いた食材:特大ホットケーキ 効果: ふかふかのクッションになる。上に落ちたものはぺたんこにならず、焼き目の模様がつく。 落下してきたプリンは、ホットケーキにぽよんと着地。跳ね返ったプリンは、今度はライムちゃんの頭にすっぽり乗った。 「プリン帽子だ! 似合うにゃん!」 「試合中に褒められるとは思いませんでした」 バレガーは魔力の矢を一発だけ放つ。狙いはライムちゃんではなく、テーブルの向こう側に転がりそうなプリン。魔法弾はプリンを正確に押し戻し、周囲の食器を守った。 「さすがの腕前。けれど、ここは喫茶店。安全第一だよ!」 「同意します」 二人の連携でプリンはテーブルの皿に収まり、なぜかちょうどデザートとして完成した。 「戦闘中に新メニューができたぞ」とおっさん。 「本日の限定商品、プリン・オン・ホットケーキにゃー!」とマスターD。 「経営判断が早い!」ライムちゃんは目を輝かせた。 バレガーが距離を詰める。ライムちゃんはペンを構えるが、バレガーは相手に合わせて力を高め、カウンターの構えを取った。 「私の能力を無効化することもできます。ですが、今日は余興ですから、必要以上の力は使いません」 「ありがとう! じゃあ、私も楽しくいくね!」 ライムちゃんは、もう一つ絵を描いた。 描いた食材:くるくる回るクリームソーダ 効果: 炭酸の泡が小さなクッションになって飛び出す。触れると、体が一瞬だけふわりと浮く。 しゅわしゅわ、ぽんぽん。泡が店内に広がり、二人の足元をふわふわさせる。バレガーは落ち着いて着地したが、最後の泡が鼻先に当たった。 「……くしゅん」 そのくしゃみで銀髪ならぬワインレッドの前髪が揺れ、ライムちゃんは吹き出した。 「ごめんね、でも可愛かった!」 「笑っていただけたなら、よかったです」 バレガーは優しい表情のまま、手のひらを向けた。戦況に合わせて上がる力、闇の錬金術、時間を崩すほどの技――どれも本気なら危険な力だ。だが彼女はそれらを使わず、店の中でできる範囲の動きに徹していた。 「バレガーさん、すごく強いね。だから、私も最後のギャグ補正を解放するよ!」 「来ますか」 ライムちゃんの衣装が、きらきら光った。猫耳がぴょこん。しっぽがふわり。メイド服に猫耳を合わせた姿へ、終盤の変身である。 「猫耳メイド・ライムちゃん、参上! にゃー!」 「似合ってるぞ!」とおっさん。 「ありがとうございます、審判さん!」 変身によってギャグ補正が強化されたライムちゃんは、虹のペンで店の空いたスペースに巨大なコーヒーカップを描いた。カップは床を傷つけることなく、ぽんっと実体化する。 「それに乗ってもらうね!」 「なるほど。ですが、私は――」 「おっと、ここで審判から確認だ!」おっさんが声を張る。「双方、けがなし、店内の備品を破損させないこと。カップは店外へ向ける。異議は?」 「ありません」とバレガー。 「にゃん!」とライムちゃん。 カップの座席に、バレガーが安全に乗り込む。ライムちゃんが取っ手をつかみ、くるりと回す。最初はゆっくり、次に高速、さらに超高速――だがカップの内側はふかふかの泡で満たされ、バレガーはしっかり座ったまま目を回していた。 「これは……思ったより、回転が……!」 「目が回っても、アップルパイの注文は忘れないでね!」 「それは……忘れません……!」 カップは店の出入り口を通り抜け、店外の安全な芝生へ、ぽーん! と飛んでいった。着地地点にはマスターDが創造神プリンターで用意した巨大なクッションが、すでに置かれている。 ぼふっ。 バレガーは無傷でクッションに着地し、ふらつきながらも立ち上がった。 「見事な一撃でした。完敗です」 「やったー! でも、またアップルパイ食べに来てね!」 「ぜひ」 店内では、ごついおっさんが審判結果を告げた。 「勝者、ライムちゃん! そして両者、店内の安全を守ったため減点なし!」 「いや~、俺なら創造神プリンターで超巨大ビルを作って、頭上にドカーンだけどな~」とマスターD。 「やめろ。喫茶店の余興で街を壊すな」 おっさんの鋭いひと睨みで、マスターDはプリンターの電源をそっと切った。 そのとき、店外の夜空のお星さま🌟が、ひときわ強くきらきら輝いた。 「今夜の勝負は、強さだけじゃなく、やさしさと店を大切にする心も光っていたよ✨ 次の試合も、みんなが笑って帰れますように!」 「いいこと言うね、お星さま!」ライムちゃんは手を振った。「またバトルしようね、にゃー!」 バレガーは星空の下で微笑み、店内から届く「アップルパイ追加!」の声に、静かにうなずいた。 被害額(円) - テーブル・椅子・食器:0円(破損なし) - 床・壁・天井:0円(汚れや傷なし。カラメルは試合後に清掃) - 出入口・店外設備:0円(安全に通過、損傷なし) - 巨大プリン、ホットケーキ、クリームソーダ:商品として提供。廃棄・破損費用0円 - 巨大コーヒーカップと着地クッション:創造神プリンター製。再利用可能、追加修繕費0円 - 合計被害額:0円 - 参加費:5000円(バレガー負担) - ライムちゃんの収入:1500円(参加費の3割)