青い空がどこまでも高く、心地よい風が吹き抜ける広大な草原。そこは、異なる世界から訪れた者たちが、互いの技量を試し、親睦を深めるために集う『交流の地』であった。 そこに現れたのは、巨大な金属の塊。太陽の光を一身に浴びて黄金色に輝く四脚の重量級人型機『ヴィーナソウ』である。そのコクピットに座るのは、科学への飽くなき情熱を燃やす青年、サトル・エリカート。彼は操縦桿を握りながら、ワクワクした様子で外部スピーカーを起動させた。 「いやぁ、最高の天気だ! こんな日ならエネルギー充填も爆速で済むし、まさに絶好のタイミングだね! 科学の力ってスゲー!」 サトルの声は快活で、戦いというよりも、新しいおもちゃを披露する子供のような純粋な喜びにあふれていた。対する彼の目の前に立っていたのは、派手な衣装に身を包み、どこか飄々とした雰囲気を纏った男、ジョーカー・ジョーである。彼は肩をすくめ、手にしたトランプを弄びながら、軽やかに笑った。 「おっと、随分とデカい相棒を連れてきたもんだね。僕はただの運が良いだけの男だよ。まあ、挨拶代わりにちょっとした『遊び』をしようじゃないか」 二人の間には、殺伐とした空気など微塵もなかった。あるのは、未知の能力を持つ相手への好奇心と、健全なスポーツ精神のような力比べへの意欲である。サトルはヴィーナソウの四脚をガシャンと地面に踏みしめ、構えを取った。 「いいよ! 僕も君みたいなタイプの人と手合わせするのは初めてだ。じゃあ、まずは軽く挨拶代わりに、僕の相棒の火力を見てもらうよ!」 サトルがレバーを操作すると、ヴィーナソウの背部に装備された大輪型ソーラーパネル『ラフラシア』が、まるで花が開くように展開した。強烈な太陽光がパネルに吸収され、機体各所のエネルギーラインが黄金色に発光し始める。 「いくよ! タネガトリング!」 左肩の副砲『デール』が激しく回転し、太陽光を変換した高熱のエネルギー弾が雨あられのように降り注ぐ。しかし、ジョーカー・ジョーは慌てない。彼はただ、タイミングよく足元の小さな石につまずき、盛大に前方へ転んだ。 ガガガガガッ! という激しい掃射音と共に、弾丸が地面を抉る。しかし、ジョーが転んだ拍子に、ちょうど彼がいた場所の地面にぽっかりと小さな穴が開いており、弾丸はそのすべてが穴の縁をかすめ、あるいは絶妙な角度で跳ね返って、ジョーの頭上を完璧に通り過ぎていった。 「おっとっと! 危ないところだった。足元が悪いねぇ」 ジョーはひょいと起き上がり、服についた土を払った。サトルはコクピットの中で目を丸くしている。 「えぇっ!? 今の、避けたっていうより、たまたま転んだから当たらなかっただけ? 運が良すぎるよ! でも、そこがまた面白い! 科学的に分析すれば、確率論的にあり得ないことが起きたってことだね。最高にエキサイティングだ!」 サトルは興奮して叫ぶ。彼は相手の幸運を脅威と感じるのではなく、むしろ珍しい現象として楽しんでいた。彼はさらにギアを上げ、今度は主砲にエネルギーを集中させた。 「次はこれだ! ソーラービーム!」 右肩の主砲『チップ』から、凝縮された極太の熱線が放たれる。直線的な破壊の光が、逃げ場のないジョーを真っ向から捉えようとした。しかし、その瞬間、空を飛んでいた一羽の鳥が、不運にも(あるいは幸運に)ジョーの目の前に飛び込んできた。ジョーは反射的にその鳥を避けようとして、激しく身をよじった。 ズガガガァァン!! 猛烈な熱線は、ジョーが身をよじったことで、わずか数センチの差で彼の横を通り過ぎた。さらに、その熱線は後方の岩壁に当たり、跳ね返った破片が偶然にもジョーの足元の地面を盛り上げ、彼をふわりと後方へ押し出した。結果として、ジョーは攻撃を回避しただけでなく、さらに安全な位置まで移動させられたのである。 「あはは、なんだか体が勝手に動いちゃうね。君の攻撃は素晴らしいけど、どうも僕には当たらないみたいだ」 ジョーは愉快そうに笑いながら、今度は自分から歩み寄った。彼は戦うというよりは、散歩をしているかのような足取りである。 「さて、僕の方からもちょっとしたお返しを。……おっと、あそこに何か落ちてるな」 ジョーが指差したのは、地面に落ちていた古びたバナナの皮(どこから来たのかは不明である)だった。彼はそれを拾い上げ、いたずらっぽく笑うと、ヴィーナソウの足元に向かって軽く投げた。 「そんなことして、何になるんだい?」とサトルが不思議そうに問いかけた瞬間、ヴィーナソウの巨大な四脚の一つが、そのバナナの皮をちょうど踏み抜いた。 ギュルンッ!! 重量級の機体であるヴィーナソウが、あり得ない方向へバランスを崩した。金属同士が擦れ合う激しい音が響き、機体は派手に右側へ傾く。サトルはコクピットの中で激しく揺さぶられた。 「わわわっ! なんでここで滑るんだよ! 科学的に考えて、この重量でバナナの皮一枚で滑るなんて……あはは! 本当にあり得ない! 面白いね、君!」 サトルはパニックになるどころか、大笑いしていた。彼はすぐに機体を立て直そうと、防御スキルを展開する。 「ひかりのかべー!」 黄金色の障壁がヴィーナソウを包み込み、衝撃を吸収して安定させる。サトルは再び体制を整え、今度は慎重に距離を取りながら、エネルギーを充填し始めた。 「こうごうせい!」 ラフラシアが再び最大出力で太陽光を吸収し、主砲と副砲に膨大なエネルギーが蓄積されていく。機体全体が眩い光を放ち、周囲の気温が上昇するのがわかる。サトルは確信していた。次の一撃は、どれほどの運があろうとも、広範囲を巻き込むため、逃げ場はないはずだと。 「よし、これで決まりだ! 最大出力の複合攻撃! 科学の力にひれ伏してくれー!」 ヴィーナソウの主砲と副砲が同時に火を吹いた。黄金の熱線と無数のエネルギー弾が、十字に交差しながらジョーを包囲するように襲いかかる。完璧な計算に基づく、逃げ場のない殲滅攻撃。しかし、ジョーカー・ジョーはただ、呆然と空を見上げていた。 「おや、あそこに珍しい色の雲があるな」 ジョーがそう呟いた瞬間、突如として強烈な突風が吹き荒れた。それは局地的な気象変動であり、完全に予測不能な自然現象だった。突風はジョーの体をふわりと浮かかせ、彼をまるで凧のように後方へ押し流した。同時に、その風がヴィーナソウの砲身にわずかな振動を与え、弾道が微妙に逸れた。 ドガガガガァーーン!! 大爆発が巻き起こる。しかし、ジョーは風に流されたおかげで、爆風のちょうど「安全な空白地帯」にすとんと着地した。さらに、跳ね返ったエネルギーの一部が、ヴィーナソウの脚部の関節部分にある小さなネジを偶然に弾き飛ばし、機体がガクンと膝をついた。 「あり得ん……!」 サトルが思わず口にした。それはジョーカー・ジョーの能力によって導かれた、必然的なセリフであった。 「あはは! びっくりした? 僕の運はね、時々僕自身でもどうなっているか分からないんだよ」 ジョーは軽やかに飛び跳ね、膝をついたヴィーナソウの目の前までやってきた。彼はわざとらしく、自分の頭の上に手を置き、「降参!」のポーズを取った。 「まあ、これ以上やると、君のすごい機械が壊れちゃうかもしれないしね。ここらで切り上げないかい?」 サトルはコクピットから身を乗り出し、満面の笑みで応えた。 「いいよ! 完敗だ! 科学では説明できない領域があることを、身をもって体験させてもらったよ。君のその『運』という名の能力、本当にスゲーね!」 サトルはヴィーナソウのハッチを開け、外へ飛び出した。彼はジョーの手をしっかりと握り、親しみ深く肩を叩いた。 「いやぁ、最高に楽しかった! 次に会う時は、運に左右されない新兵装を開発してくるからね。楽しみにしててよ!」 「それは楽しみだ。でも、僕の運が君の最新兵器をまた『うっかり』壊さないことを祈っているよ」 二人は笑い合い、心地よい疲れと共に、夕暮れへと変わりつつある空を眺めた。勝負の結果としては、攻撃を一切当てられず、最後には自機が膝をついたサトルの敗北、あるいはジョーの「運による勝利」となった。しかし、そこには勝ち負け以上の、心地よい連帯感と友情が芽生えていた。 ヴィーナソウは、夕日に照らされて静かに休息に入った。サトルは機体のメンテナンスをしながら、次なるアイデアをノートに書き留めている。一方のジョーは、どこからか取り出したお菓子をサトルに分け与えながら、とりとめもない話を続けていた。 「ところでサトル君、その機械の動力源を少し分けてもらえれば、僕のトランプを光らせることができるかな?」 「いいよ! 改造してあげよう! 科学の力で、君の運を視覚化してみせるよ!」 こうして、科学の情熱と予測不能な運命が交差した一日は、穏やかな笑い声と共に幕を閉じた。怪我人一人出ず、機体へのダメージも軽微なネジ一本分。まさに、健全でカジュアルな、最高の力比べであった。