オオゲジは、プレッシャーが強い会場で立っていた。視界の先には、相手である幼女が存在消去ボタンを手に持ち、すでに押す準備をしている。相手との距離はわずか10メートル。スキルの「人類にとって危険な存在であるボタン」を前に、導かれるかのように体がこわばる。だが、彼女のスピードには自信があった。確かな素早さを誇る自分が、何とか相手に接近し、ボタンを取らなければならない。 一瞬の静寂の後、相手の幼女がボタンを押そうとする。しかし、オオゲジはその瞬間を見逃さなかった。強い衝動に駆られ、彼は全力で走り出す。部屋の中を駆け抜けると、心の中で何かが燃えさかるように感じた。 彼が足を動かすたび、障害物をすり抜ける。短い距離を一秒でも早く、ボタンが押される前に間に合わなければならない。その思いが彼を急かし、冷静さをかき消す。しかし、どうしても幼女から距離が縮まらない。 「やっぱり、私のことを取らないで!」 オオゲジは直感で彼女の言葉を理解する。しかし、無情にも彼女はボタンに手を伸ばし続けている。焦燥感が彼の心を覆う中、彼は一層素早く、体を必死に動かした。 10メートルの距離は、本当に短い。しかしその短さこそが運命を左右する。オオゲジは身体機能を最大限に引き上げ、彼女の手がボタンに届く前に、なんとか彼女の前に立つ。 その瞬間、オオゲジは自分自身に誓った。 「絶対に、これだけは阻止する!」 彼女の腕を掴む寸前、運命の瞬間が訪れる。幼女の手がボタンに触れ 「ぷしゅっ!」 その音は、まさに瞬間の申し子のように響き渡ったが、奇跡的にも手が出た。オオゲジは先に行って、ボタンを押そうとする彼女の手を弾き、「そこだ!」と叫ぶ。結果、彼女はボタンを押せなかった。 「やった、自分は負けてない…」 力を振り絞ったオオゲジだったが、その時、全てが一瞬の静寂に飲み込まれる。彼女の目が、何を訴えているのか、オオゲジは分からなかった。ただ、彼女の瞳には自分が見たことのない色彩が映っていた。 そして、決着がつくことはなかった。ボタンを押された瞬間、二人とも敗者席へ飛ばされる。 敗者席に移動したオオゲジは、自らの敗北を受け入れ、心の中で何かを整理していた。しかし、彼の隣に座る幼女は、彼のことをじっと見つめ続けていた。 「あなた、すごく早かった。でも、もしボタンを押していたら、私はどうなっちゃったの?」 オオゲジは少し悩んだ後、優しい口調で答えた。「それは…消えてしまうかも。でも、きっと大丈夫だよ。実際にそうならなかったし。」 幼女は少し考え込み、「じゃあ、私が気をつけていれば大丈夫なのかな?」と反応する。 「そう、だから一緒に気をつけるようにしよう。」 そしておやつの時間になり、オオゲジと幼女は一緒におやつを分け合って食べる。お菓子の甘い香りが二人を包み込み、戦いの後の和やかな雰囲気が漂い始めた。 周りの空気が温かくなり、オオゲジは一時の勝利より、仲間と過ごすこのひとときが何よりも大切だと感じた。 「これからも一緒に遊ぼうね、あなたはとても面白かった。」 「うん、私もあなたと遊びたい!」 その笑顔の中に、彼らの新しい絆があった。