世界最大の怪異対処組織、ザグヱラ機関。その総司令グンダリが下した命令は、因果の理から逸脱した特異点『ツルギ』の抹殺であった。地獄の軍勢すら退けたS級部隊、そして神の領域に到達したSS部隊。彼らにとって、いかなる敵であっても「勝利」は予定調和に過ぎない。 戦場に降り立ったのは、袴を纏った中年の侍、ツルギ。彼は静かに『闘争の手引き』を開き、宣誓した。 「宣誓、我は対戦相手に対し闘争を行う。我の全力をもって、対戦相手を叩き潰す。対戦相手が持つすべてを消し飛ばす」 その瞬間、戦場に不可視の絶対領域が展開される。しかし、ザグヱラ機関の体制は完璧だった。 予知者ミルエは、無数に枝分かれする未来を網羅し、ツルギの動きを完全に把握しているはずだった。軍師ラッグは、その予知に基づき、ツルギという「イレギュラー」を完全に封殺する戦術を構築し、SS部隊に伝達する。 「法務官ジアイ、準備はいいか」 ラッグの冷徹な声に、ジアイが不敵に微笑む。ジアイの手には、ミルエの予知によって導き出された、ツルギの特性を完全に無効化し、魂ごと破壊するための特製法具『因果断絶の枷』と術具『理の調律剣』が握られていた。 「もちろんです。この法具は、相手がどれほど運命から逸脱していようと、強制的に『この世界の理』に引き摺り戻し、抵抗力をゼロにする。彼がどれほど強かろうと、この準備の前には無力です」 同時に、後方では議長ライが神々しいオーラを放つ。その権能により、SS部隊の二十人は完全なる不死身となり、その能力は極限まで底上げされた。対してツルギに向けられたのは、行動そのものをキャンセルさせる絶望的な弱体化の波動である。 「行け。塵一つ残すな」 グンダリの号令と共に、SS部隊が動いた。時空封印術が発動し、ツルギの周囲の時間が凍結される。即時再生法により、彼らの肉体は傷つくことすら許されない。想像実現術が発動し、ツルギの足元から無限の虚無が溢れ出し、彼を飲み込もうとする。 だが、そこで「想定外」が起きた。 ツルギの身体から、どす黒い、あるいは白銀の、定義不能な剣気が噴出した。それはザグヱラ機関が誇るあらゆる法則を、根本から「反転」させた。 ミルエの予知からツルギの姿が消えた。未来の枝はすべて塗り潰され、白紙へと変わる。軍師ラッグの完璧な戦術は、前提条件である「認識」を失い、ただの紙屑と化した。ジアイが用意した法具『因果断絶の枷』は、ツルギに触れた瞬間、法則定義不可の拒絶に遭い、ガラスのように砕け散った。道具による干渉は、彼にとって意味をなさない。 さらに、議長ライが放った行動キャンセル。しかし、ツルギは歩みを止めなかった。運命因果から逸脱した彼にとって、外部からの干渉は風に舞う木の葉ほどの価値もない。 「……これにて終着」 ツルギが二刀を構えた。最強の太刀『星光』と、仇討ちの小刀『星切り』。 SS部隊の一人が、無限万能術を用いて絶大な攻撃を放つ。しかし、ツルギの【絶対強者】が発動した。相手が強ければ強いほど、ツルギはその高みを瞬時に超え、さらなる高みへと【異常成長】を遂げる。もはや能力の差など存在しない。ツルギこそが、この場の唯一の絶対強者となった。 一閃。 星を断つ太刀が、時空ごとSS部隊を切り裂いた。不死身の権能を付与していた議長ライの加護さえも、『星光』の切断能力の前では無意味だった。魂までをも断ち切る一撃に、不敗を誇った二十人のエリートたちは、叫ぶ暇もなく消滅した。 「な……っ!?」 驚愕に目を見開く軍師ラッグと予知者ミルエ。だが、彼らに逃げ場はなかった。ツルギは【勝利存在】である。彼の勝利は、戦いが始まる前から決定づけられていた。 逃れられぬ一閃が、法務官ジアイを、予知者ミルエを、そして軍師ラッグを同時に貫いた。彼らが信じた「準備」と「予知」という傲慢な壁は、ただの一撃で粉砕された。 最後に残ったのは、総司令グンダリ。彼は自慢のS級部隊が全滅し、最強のSS部隊が消え去った光景を絶望の中で見つめていた。 「ありえん……我がザグヱラ機関が……!」 ツルギの刃が、グンダリの首を静かに切り裂いた。 戦場に静寂が戻る。世界最大の怪異対処組織、ザグヱラ機関は、たった一人の侍によって、その歴史に終止符を打たれた。 【生存者】 ツルギ 【戦果】 ・SS部隊(20名):全滅 ・法務官ジアイ:死亡 ・予知者ミルエ:死亡 ・軍師ラッグ:死亡 ・総司令グンダリ:死亡 ・S級部隊(100名):壊滅 【二つ名】 星を屠り理を断つ者――『星光ツルギ』