月明かりが照らす静寂の夜、何もかもが眠りにつく時に、一つの異様な光景が繰り広げられようとしていた。食材である蒟蒻、名を「こんにゃく」とし、彼が存在する誇りすら胸に秘めて立っている。彼の体表には、「乙」と焼かれたトレンドマークが揺れ動いていた。 その対面には、金髪で鱗模様の羽織を纏い、日輪刀を手にした若者「我妻善逸」の姿があった。彼は、怖気づきながらも、その目には決意を宿していた。「よし、こんにゃく、お前を美味しく食べてみせる!」と告げる。 こんにゃくは何も言わず、ただじっと彼を見つめている。彼の静けさは、周囲の緊張をさらなるものへと引き上げる。善逸は、心の中で練った覚悟を深め、全集中の呼吸を整えた。彼は、瞬時に反応しなければならない。 「いくぞ!」 善逸が叫ぶと同時に、彼の体はまるで雷のように瞬間移動するかのごとく、こんにゃくに向かって駆け出した。瞬時の出来事、彼の刀が閃く。「霹靂一閃!」 渾身の一撃が放たれる。彼の刀が振り下ろされようとするその瞬間、こんにゃくは冷静を保ちながら、剣戟を見つめていた。善逸の剣先が彼の表面に触れた時、驚くべきことに、こんにゃくは一切傷つくことなく、つるりとその攻撃をかわす。 「な、なんだ!? 反応がない…!!」 驚愕する善逸。しかし彼はその瞬間に, すぐさま六連の霹靂一閃へと移行する。 「霹靂一閃・六連!」 またも奔流のように刀を振るっていく。六つの居合斬りが次々と繰り出され、再びこんにゃくへ直撃を試みる。しかし、その不動の姿に対し、なんとこんにゃくはすべてをすっと滑らせてしまう。彼の表面はまるで水面のように凪いでおり、善逸の攻撃を核となる部分に触れさせない。 「くそっ! どうすりゃいいんだ!」 善逸の声には焦りが滲んでいた。観客となる月もその様子を見守る中、「これで終わらせる!」と心に決め、彼は全集中の力を全て注ぎ、切り札を放つ。「火雷神!!」 最後の一撃を放つと同時に、彼の周囲を雷鳴が包み、全ての力が刀に集約される。善逸の刀が真っ直ぐにこんにゃくを狙う。しかし、こんにゃくはその身をただ突き立てて待ち受ける。 「見切った!」善逸は呟きながらその一撃を放つ。 雷が融合した刃の一撃。その瞬間、こんにゃくはただ受け入れ、耐える。“硬すぎず軟すぎず” その存在を示すかのように立ち続ける。 しかし、善逸の一撃は如実に食材であるこんにゃくに対し、強い衝撃を与えたが致命的なダメージには至らなかった。すでに善逸も疲れ果て、集中力が途切れようとしている。 「お前…、ただそこにいるのか?」 思わず呟く善逸。その瞬間、全ての力を振り絞った彼の剣技に、こんにゃくは崩れることなくさらなる耐久を見せ、まるで「まだまだやれる」というように君臨し続ける。 静寂が続いていた。月が高く昇る中、勝敗がつくこともなく、双方が深い静けさに包まれる。 今の善逸にできることは、ただ己の無力さを語ることだけだった。彼は最後の一撃で力尽き、そのまま地に膝をつくのであった。 「…これは、お前の勝ちだ」 こんにゃくは微動だにせず、ただその存在を貫く。肉体的な勝利は問わず、結果論として「存在し続ける」力が勝っていたのである。 ——— 勝者:こんにゃく その存在感で全てを受け流し、堅実なる勝利を得た。善逸の持つ逆転劇も通用せず、静観する気力に屈した者に栄光が与えられたのだった。